グスコーブドリの伝記4

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問題文
(ぶどりがふっとめをひらいたとき、いきなりあたまのうえで、いやにひらべったいこえが)
ブドリがふっと目をひらいたとき、いきなり頭の上で、いやにひらべったい声が
(しました。 「やっとめがさめたな。まだおまえはききんのつもりかい。)
しました。 「やっと目がさめたな。まだお前はききんのつもりかい。
(てつだわないか。」みるとそれはちゃいろなきのこしゃっぽをかぶってがいとうにすぐ)
手伝わないか。」見るとそれは茶色なきのこしゃっぽをかぶってがいとうにすぐ
(しゃつをきたおとこで、なにかはりがねでこさえたものをぶらぶらもっているのでした。)
シャツを着た男で、何か針金でこさえたものをぶらぶら持っているのでした。
(「もうききんはすぎたの?てつだえってなにをてつだうの?」ぶどりがききました。)
「もうききんはすぎたの?手伝えって何を手伝うの?」ブドリがききました。
(「あみかけさ。」 「ここへあみをかけるの?」)
「網かけさ。」 「ここへ網をかけるの?」
(「かけるのさ」 「あみをかけてなににするの?」)
「かけるのさ」 「網をかけて何にするの?」
(「てぐすをかうのさ。」 みるとすぐぶどりのまえのくりのきに、ふたりのおとこが)
「てぐすを飼うのさ。」 見るとすぐブドリの前の栗の木に、二人の男が
(はしごをかけてのぼっていて、いっしょうけんめいなにかあみをなげたり、それを)
はしごをかけてのぼっていて、いっしょうけんめい何か網を投げたり、それを
(あやつったりしているようでしたが、あみもいともいっこうみえませんでした。)
あやつったりしているようでしたが、網も糸もいっこう見えませんでした。
(「あれでてぐすがかえるの?」 「かえるのさ。うるさいこどもだな。おい。)
「あれでてぐすが飼えるの?」 「飼えるのさ。うるさい子どもだな。おい。
(えんぎでもないぞ。てぐすもかえないところにどうしてこうじょうなんかたてるんだ。)
えんぎでもないぞ。てぐすも飼えないところにどうして工場なんか建てるんだ。
(かえるともさ。げんにおれはじめたくさんのものが、それでくらしをたてて)
飼えるともさ。げんにおれはじめたくさんのものが、それでくらしをたてて
(いるんだ。」 ぶどりはかすれたこえで、やっと、)
いるんだ。」 ブドリはかすれた声で、やっと、
(「そうですか。」といいました。 「それにこのもりは、すっかりおれがかって)
「そうですか。」と言いました。 「それにこの森は、すっかりおれが買って
(あるんだから、ここでてつだうならいいが、そうでなければどこかへ)
あるんだから、ここで手伝うならいいが、そうでなければどこかへ
(いってもらいたいね。もっともおまえはどこへいったってくうものもなかろうぜ。)
行ってもらいたいね。もっともお前はどこへ行ったって食うものもなかろうぜ。
(ぶどりはなきだしそうになりましたが、やっとこらえていいました。 )
ブドリは泣き出しそうになりましたが、やっとこらえて言いました。
(「それならてつだうよ。けれどもどうしてあみをかけるの?」 「それはもちろん)
「それなら手伝うよ。けれどもどうして網をかけるの?」 「それはもちろん
(おしえてやる。こいつをね。」おとこはてにもったはりがねのかごのようなものをりょうてで)
教えてやる。こいつをね。」男は手に持った針金のかごのようなものを両手で
(ひきのばしました。 「いいか。こういうぐあいにやるとはしごになるんだ。」)
引きのばしました。 「いいか。こういうぐあいにやるとはしごになるんだ。」
(おとこはおおまたにみぎてのにしのきにあるいていって、したのえだにひっかけました。 )
男は大またに右手の西の木に歩いて行って、下の枝に引っかけました。
(「さあ、こんどはおまえが、このあみをもってうえへのぼっていくんだ。)
「さあ、こんどはおまえが、この網をもって上へのぼっていくんだ。
(さあ、のぼってごらん。」 おとこはへんなまりのようなものをぶどりにわたしました)
さあ、のぼってごらん。」 男はへんなまりのようなものをブドリに渡しました
(ぶどりはしかたなくそれをもって、はしごにとりついてのぼっていきましたが、)
ブドリはしかたなくそれを持って、はしごにとりついてのぼって行きましたが、
(はしごのだんだんがまるでほそくててやあしにくいこんでちぎれてしまいそうでした)
はしごのだんだんがまるで細くて手や足にくいこんでちぎれてしまいそうでした