グスコーブドリの伝記9
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問題文
(するとしゅじんがにわかにげんきになってむっくりおきあがりました。 「よし。)
すると主人がにわかに元気になってむっくり起き上がりました。 「よし。
(いーはとーぶののはらで、ゆびおりかぞえられるおおひゃくしょうのおれが、こんなことで)
イーハトーブの野原で、指おりかぞえられる大百姓のおれが、こんなことで
(まいるか。よし。らいねんこそやるぞ。ぶどり、おまえおれのうちにきてから、)
まいるか。よし。来年こそやるぞ。ブドリ、おまえおれのうちに来てから、
(まだひとばんもねたいくらいねたことがないな。さあ、いつかでもとおかでもいいから、)
まだ一晩も寝たいくらい寝たことがないな。さあ、五日でも十日でもいいから、
(ぐうというくらいねてしまえ。おれはそのあとで、あすこのぬまばたけで)
ぐうというくらい寝てしまえ。おれはそのあとで、あすこの沼ばたけで
(おもしろいてじなをやってみせるからな。そのかわりことしのふゆは、いえじゅう)
おもしろい手品をやってみせるからな。そのかわりことしの冬は、家じゅう
(そばばかりくうんだぞ。おまえそばはすきだろうが。」それからしゅじんは)
そばばかり食うんだぞ。おまえそばはすきだろうが。」それから主人は
(ぼうしをかぶってそとへでていってしまいました。ぶどりはしゅじんにいわれたとおり)
帽子をかぶって外へ出て行ってしまいました。ブドリは主人にいわれたとおり
(なやへはいってねむろうとおもいましたが、なんだかやっぱりぬまばたけが)
納屋へはいってねむろうと思いましたが、なんだかやっぱり沼ばたけが
(くになってしかたがないので、またのろのろそっちへいってみました。すると)
苦になってしかたがないので、またのろのろそっちへ行ってみました。すると
(いつきていたのか、しゅじんがたったひとりうでぐみをしてどてにたっておりました。)
いつ来ていたのか、主人がたった一人腕組みをして土手に立っておりました。
(みるとぬまばたけにはみずがいっぱいで、おりざのかぶははをやっとだしているだけ、)
見ると沼ばたけには水がいっぱいで、オリザの株は葉をやっとだしているだけ、
(うえにはぎらぎらせきゆがうかんでいるのでした。しゅじんがいいました。)
上にはぎらぎら石油が浮かんでいるのでした。主人が言いました。
(「いまおれこのびょうきをむしころしてみるところだ。」 「せきゆでびょうきのたねが)
「いまおれこの病気をむし殺してみるところだ。」 「石油で病気の種が
(しぬんですか。」とぶどりがききますと、しゅじんは、 「あたまからせきゆつけられたら)
死ぬんですか。」とブドリがききますと、主人は、 「頭から石油つけられたら
(ひとだってしぬだ。」といいながら、ほうといきをすってくびをちぢめました。)
人だって死ぬだ。」と言いながら、ほうと息をすって首をちぢめました。
(そのとき、みずしものぬまばたけのもちぬしが、かたをいからしていきをきってかけてきて、)
そのとき、水下の沼ばたけの持ち主が、肩をいからして息を切ってかけて来て、
(おおきなこえでどなりました。 「なんだってあぶらなどみずへいれるんだ。みんなながれて)
大きな声でどなりました。 「なんだって油など水へ入れるんだ。みんな流れて
(きて、おれのほうへはいってるぞ。」 しゅじんは、やけくそにおちついて)
きて、おれのほうへはいってるぞ。」 主人は、やけくそにおちついて
(こたえました。 「なんだってあぶらなどみずへいれるたって、おりざへびょうきが)
答えました。 「なんだって油など水へ入れるたって、オリザへ病気が
(ついたから、あぶらなどみずへいれるのだ。」 「なんだってそんならおれのほうへ)
ついたから、油など水へいれるのだ。」 「なんだってそんならおれのほうへ
(ながすんだ。」 「なんだってそんならおまえのほうへながすたって、みずは)
流すんだ。」 「なんだってそんならおまえのほうへ流すたって、水は
(ながれるからあぶらもついてながれるのだ。」 「そんならなんだっておれのほうへ)
流れるから油もついて流れるのだ。」 「そんならなんだっておれのほうへ
(みずこないようにみなくちとめないんだ。」 「なんだっておまえのほうへ)
水こないように水口とめないんだ。」 「なんだっておまえのほうへ
(みずいかないようにみなくちとめないかったって、あすこはおれのみなくちでないから)
水行かないように水口とめないかったって、あすこはおれの水口でないから
(みずとめないのだ。」 となりのおとこは、かんかんおこってしまってもうものもいえず、)
水とめないのだ。」 となりの男は、かんかん怒ってしまってもう物も言えず、
(いきなりがぶがぶみずへはいって、じぶんのみなくちにどろをつみあげはじめました。)
いきなりがぶがぶ水へはいって、自分の水口にどろを積みあげはじめました。
(しゅじんはにやりとわらいました。 「あのおとこむずかしいおとこでな。)
主人はにやりとわらいました。 「あの男むずかしい男でな。
(こっちでみずとめると、とめたといっておこるからわざとむこうにとめさせたのだ)
こっちで水とめると、とめたといって怒るからわざと向こうにとめさせたのだ
(あすこさえとめれば、こんやじゅうにみずはすっかりくさのあたままでかかるからな。)
あすこさえとめれば、こんやじゅうに水はすっかり草の頭までかかるからな。
(さあかえろう。」 しゅじんはさきにたってすたすたいえへあるきはじめました。)
さあ帰ろう。」 主人はさきに立ってすたすた家へ歩きはじめました。