鏡地獄 江戸川乱歩 3

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江戸川乱歩ミステリー
順位 名前 スコア 称号 打鍵/秒 正誤率 時間(秒) 打鍵数 ミス 問題 日付
1 ヌオー 5863 A+ 6.1 95.3% 1202.0 7412 364 99 2024/12/02
2 BE 4099 C 4.6 89.9% 1626.9 7504 835 99 2024/11/14

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問題文

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(つまりへやいっぱいのひとのかお、それがいきてうごめいているのです。えいがなぞで)

つまり部屋一杯の人の顔、それが生きてうごめいているのです。映画なぞで

(ないことは、そのうごきのしずかなのと、せいぶつそのままのいろつやとでめいりょうです。)

ないことは、その動きの静かなのと、生物そのままの色艶とで明瞭です。

(ぶきみさよりも、おそろしさよりも、わたしはじぶんがきでもちがったのではあるまいかと)

無気味さよりも、恐ろしさよりも、私は自分が気でも違ったのではあるまいかと

(おもわずおどろきのさけびごえをあげたほどです。すると、)

思わず驚きの叫び声を上げたほどです。すると、

(「おどろいたかい、ぼくだよ、ぼくだよ」とべつのほうがくからこえがして、はっとわたしを)

「驚いたかい、僕だよ、僕だよ」と別の方角から声がして、ハッと私を

(とびあがらせたことには、そのこえのとおりに、かべのかいぶつのくちびるとしたがうごいて、)

飛び上がらせたことには、その声の通りに、壁の怪物の唇と舌が動いて、

(たらいのようなめが、にやりとわらったのです。「ははは、どうだいこのしゅこうは」)

盥のような眼が、ニヤリと笑ったのです。「ハハハ、どうだいこの趣向は」

(とつぜんへやがあかるくなって、いっぽうのあんしつからかれのすがたがあらわれました。それとどうじに)

突然部屋が明るくなって、一方の暗室から彼の姿が現れました。それと同時に

(かべのかいぶつがきえさったのはもうすまでもありません。みなさんはおおかたそうぞうなすった)

壁の怪物が消え去ったのは申すまでもありません。皆さんは大方想像なすった

(でしょうが、これはつまりじつぶつげんとう、、、かがみとれんずときょうれつなひかりのさようによって)

でしょうが、これはつまり実物幻灯、、、鏡とレンズと強烈な光の作用によって

(じつぶつそのままをげんとうにうつす、こどものおもちゃにもありますね、あれをかれどくとくの)

実物そのままを幻灯に写す、子供のおもちゃにもありますね、あれを彼独得の

(くふうによって、いじょうにおおきくするそうちをつくったのです。そして、そこへかれじしんの)

工夫によって、異常に大きくする装置を作ったのです。そして、そこへ彼自身の

(かおをうつしたのです。きいてみればなんでもないことですが、かなりおどろかせる)

顔を映したのです。聞いてみればなんでもないことですが、可也驚かせる

(ものですよ。まあ、こういったことがかれのしゅみなんですね。にたようなので、)

ものですよ。まあ、こういったことが彼の趣味なんですね。似たようなので、

(いっそうふしぎにおもわれたのは、こんどはべつだんへやがうすぐらいわけでもなく、かれのかおも)

いっそう不思議に思われたのは、今度は別段部屋が薄暗い訳でもなく、彼の顔も

(みえていて、そこへへんてこなごちゃごちゃとしたかがみをたてならべたきかいを)

見えていて、そこへ変てこなゴチャゴチャとした鏡を立て並べた器械を

(おきますと、かれのめならめだけが、これもまたたらいほどのおおきさで、ぽっかりと)

置きますと、彼の眼なら眼だけが、これもまた盥ほどの大きさで、ポッカリと

(わたしのめのまえのくうかんにうきだすしかけなのです。とつぜんそいつをやられたときには)

私の目の前の空間に浮き出す仕掛けなのです。突然そいつをやられた時には

(あくむでもみているようで、みがすくんでほとんどいきたそらもありませんでした。)

悪夢でも見ているようで、身がすくんで殆ど生きた空もありませんでした。

(ですが、たねをわってみれば、これがやっぱりさきおはなししたまほうのしへいとおなじ)

ですが、種を割ってみれば、これがやっぱり先お話しした魔法の紙幣と同じ

など

(ことで、ただたくさんのおうめんきょうをつかってぞうをかくだいしたものにすぎないのでした。)

ことで、ただたくさんの凹面鏡を使って像を拡大したものにすぎないのでした。

(でも、りくつのうえではできるものとわかっていても、ずいぶんひようとじかんのかかる)

でも、理窟の上ではできるものとわかっていても、ずいぶん費用と時間のかかる

(ことでもあり、そんなにばかばかしいまねをやってみたひともありませんので、)

ことでもあり、そんなにばかばかしいまねをやってみた人もありませんので、

(いわばかれのはつめいといってもよく、つづけざまにそのようなものをみせられると、)

いわば彼の発明といってもよく、つづけざまにそのようなものを見せられると、

(なにかこう、かれがなにかおそろしいまもののようにさえおもわれてくるのでありました。)

なにかこう、彼が何か恐ろしい魔物のようにさえ思われてくるのでありました。

(そんなことがあってから、2、3かげつもたったじふんでしたが、かれはこんどはなにを)

そんなことがあってから、2、3ヶ月もたった時分でしたが、彼は今度は何を

(おもったのか、じっけんしつをちいさくくぎって、じょうげさゆうをかがみのいちまいいたではりつめた、)

思ったのか、実験室を小さく区切って、上下左右を鏡の一枚板で張りつめた、

(ぞくにいうかがみのへやをつくりました。どあもなにもすっかりかがみなのです。かれはそのなかへ)

俗にいう鏡の部屋を作りました。ドアも何もすっかり鏡なのです。彼はその中へ

(いっぽんのろうそくをもって、たったひとりでながいあいだはいっているというのです。)

一本のロウソクを持って、たった一人で長い間はいっているというのです。

(いったいなんのためにそんなまねをするのかだれにもわかりません。が、そのなかでかれが)

一体何のためにそんなまねをするのか誰にもわかりません。が、その中で彼が

(みるであろうこうけいはだいたいそうぞうすることができます。ろっぽうをかがみではりつめたへやの)

見るであろう光景は大体想像することができます。六方を鏡で張りつめた部屋の

(まんなかにたてば、そこにはかれのからだのあらゆるぶぶんが、かがみとかがみがはんしゃしあうために)

真ん中に立てば、そこには彼の体のあらゆる部分が、鏡と鏡が反射し合うために

(むげんのぞうとなってうつるものにちがいありません。かれのじょうげさゆうに、かれとおなじかずかぎり)

無限の像となって映るものに違いありません。彼の上下左右に、彼と同じ数限り

(もないにんげんが、うじゃうじゃとさっとうするかんじにちがいありません。かんがえただけでも)

もない人間が、ウジャウジャと殺到する感じに違いありません。考えただけでも

(ぞっとします。わたしはこどものじふんにやわたのやぶしらずのみせもので、かたばかりのしろもの)

ゾッとします。私は子供の時分に八幡の薮知らずの見世物で、型ばかりの代物

(ではありましたが、かがみのへやをけいけんしたことがあるのです。そのふかんぜんきわまる)

ではありましたが、鏡の部屋を経験したことがあるのです。その不完全極まる

(ものでさえ、わたしにはどのようにおそろしくかんじられたことでしょう。それをしって)

ものでさえ、私にはどのように恐ろしく感じられたことでしょう。それを知って

(いるものですから、いちどかれからかがみのへやへはいれとすすめられたときにも、わたしはかたく)

いるものですから、一度彼から鏡の部屋へはいれと勧められた時にも、私は固く

(こばんで、はいろうとはしませんでした。そのうちに、かがみのへやへはいるのは、)

拒んで、入ろうとはしませんでした。そのうちに、鏡の部屋へはいるのは、

(かれひとりだけではないことがわかってきました。そのかれのほかのにんげんというのは、)

彼一人だけではないことがわかってきました。その彼のほかの人間というのは、

(かれのおきにいりのこまづかいでもあり、どうじにかれのこいびとでもあったところの、)

彼のお気に入りの小間使いでもあり、同時に彼の恋人でもあったところの、

(とうじの18さいのうつくしいむすめでした。かれはくちぐせのように「あのこのたったひとつの)

当時の18歳の美しい娘でした。彼は口癖のように「あの子の立った一つの

(とりえはからだじゅうにかずかぎりもなく、ひじょうにふかいこまやかないんえいがあることだ。いろつやも)

取り柄は体中に数限りもなく、非常に深い濃やかな陰影があることだ。色艶も

(わるくはないし、はだもこまやかだし、にくづきもかいじゅうのようにだんりょくにとんではいるが、)

悪くはないし、肌も濃やかだし、肉付きも海獣のように弾力に富んではいるが、

(そのどれにもまして、あのおんなのうつくしさはいんえいのふかさにある。」といっていた。)

そのどれにもまして、あの女の美しさは陰影の深さにある。」と言っていた。

(そのむすめといっしょにかのかがみのくににあそぶのです。しめきったじっけんしつのなかの、それをまた)

その娘と一緒に彼の鏡の国に遊ぶのです。しめきった実験室の中の、それをまた

(くぎったかがみのへやのなかですから、がいぶからうかがうべくもありませんが、)

区切った鏡の部屋の中ですから、外部からうかがうべくもありませんが、

(ときとしてはいちじかんいじょうもかれらはそこにとじこもっているといううわさをききました。)

時としては一時間以上も彼らはそこに閉じこもっているという噂を聞きました。

(むろんかれがひとりきりのばあいもたびたびあるのですが、あるときなどは、かがみのへやへ)

むろん彼が一人きりの場合もたびたびあるのですが、ある時などは、鏡の部屋へ

(はいったまま、あまりにもながいあいだものおとひとつしないので、めしつかいがしんぱいのあまり)

はいったまま、あまりにも長い間物音一つしないので、召使いが心配のあまり

(どあをたたいたといいます。すると、いきなりどあがひらいて、すっぱだかのかれひとりが)

ドアを叩いたといいます。すると、いきなりドアがひらいて、素っ裸の彼一人が

(でてきて、ひとこともものをいわないで、そのままぷいとおもやのほうへいって)

出てきて、ひとことも物をいわないで、そのままプイと母屋の方へ行って

(しまったというようなみょうなはなしもあるのでした。そのころから、もともとあまり)

しまったというような妙な話もあるのでした。その頃から、もともとあまり

(よくなかったかれのけんこうが、ひいちにちとそこなわれていくようにみえました。が、)

よくなかった彼の健康が、日一日とそこなわれていくように見えました。が、

(にくたいがおとろえるのとはんぴれいに、かれのいようなびょうへきはますますつのるばかりでした。)

肉体が衰えるのと反比例に、彼の異様な病癖はますます募るばかりでした。

(かれはばくだいなひようをとうじて、さまざまのかたちをしたかがみをあつめはじめました。へいめん、)

彼は莫大な費用を投じて、さまざまの形をした鏡を集めはじめました。平面、

(とつめん、おうめん、なみがた、つつがたと、よくもあんなにかわったかたちのものがあつまったものです。)

凸面、凹面、波形、筒型と、よくもあんなに変わった形の物が集ったものです。

(ひろいじっけんしつのなかは、まいにちかつぎこまれれるへんけいきょうでうまってしまうほどでした。)

広い実験室の中は、毎日かつぎ込まれれる変形鏡で埋まってしまうほどでした。

(ところが、そればかりではありません。おどろいたことには、かれはひろいにわのちゅうおうに)

ところが、そればかりではありません。驚いたことには、彼は広い庭の中央に

(がらすこうじょうをたてはじめたのです。それは、かれどくとくのせっけいのもので、とくしゅの)

ガラス工場を建てはじめたのです。それは、彼独特の設計のもので、特殊の

(せいひんについては、にほんではるいのないほどりっぱなものでありました。ぎしやしょっこう)

製品については、日本では類のない程立派なものでありました。技師や職工

(なども、えらびにえらんで、そのためには、かれはのこりのざいさんをぜんぶなげだしても)

なども、選びに選んで、そのためには、彼は残りの財産を全部投げ出しても

(おしくないいきごみでした。ふこうにも、かれにはいけんをくわえてくれるようなしんせきが)

惜しくない意気込みでした。不幸にも、彼には意見を加えてくれるような親戚が

(いっけんもなかったのです。めしつかいたちのなかには、みるにみかねていけんめいたことを)

一軒もなかったのです。召使いたちの中には、見るに見かねて意見めいたことを

(いうものもありましたが、そんなことがあれば、すぐさまおはらいばこで、のこっている)

言う者もありましたが、そんなことがあれば、すぐさまお払い箱で、残っている

(ものどもは、ただもうほうがいにたかいきゅうきんめあての、さもしいれんちゅうばかりでした。)

者共は、ただもう法外に高い給金目当ての、さもしい連中ばかりでした。

(このばあい、かれにとってはてんにもちにも、たったひとりのゆうじんであるわたしとしては、)

この場合、彼に取っては天にも地にも、たった一人の友人である私としては、

(なんとかかれをなだめて、このぼうきょをとめなければならなかったのですが、むろん)

なんとか彼をなだめて、この暴挙を止めなければならなかったのですが、むろん

(いくどとなくそれはこころみたのですが、いっかなきょうきのかれのみみにははいらず、それに)

幾度となくそれは試みたのですが、いっかな狂気の彼の耳には入らず、それに

(ことがらがべつだんあくじというのではなく、かれじしんのざいさんを、かれがかってにつかうのであって)

事柄が別段悪事というのではなく、彼自身の財産を、彼が勝手に使うのであって

(みれば、ほかにどうぶんべつのつけようもないのでした。わたしはただもうはらはら)

みれば、ほかにどう分別のつけようもないのでした。私はただもうハラハラ

(しながら、ひにひにきえいくかれのざいさんと、かれのいのちとを、ながめているほかは)

しながら、日に日に消え行く彼の財産と、彼の命とを、眺めているほかは

(ないのでした。そんなわけで、わたしはそのころから、かなりあししげくかれのいえにでいり)

ないのでした。そんなわけで、私はその頃から、かなり足繁く彼の家に出入り

(するようになりました。せめてはかれのこうどうを、かんしなりともしていようという)

するようになりました。せめては彼の行動を、監視なりともしていようという

(こころもちだったのです。したがって、かれのじっけんしつのなかで、めまぐるしくへんかするかれの)

心持だったのです。従って、彼の実験室の中で、目まぐるしく変化する彼の

(まじゅつを、みまいとしてもみないわけにはいきませんでした。それはじつにおどろくべき)

魔術を、見まいとしても見ないわけにはいきませんでした。それは実に驚くべき

(かいきとげんそうのせかいでありました。かれのびょうへきがちょうじょうにたっするとともに、かれのふしぎな)

怪奇と幻想の世界でありました。彼の病癖が頂上に達すると共に、彼の不思議な

(てんさいもまた、のこるところなくはっきされたのでありましょう。そうまとうのように)

天才もまた、残るところなく発揮されたのでありましょう。走馬灯のように

(うつりかわる、それがことごとくこのよのものではないところの、あやしくもうつくしい)

移り変わる、それがことごとくこの世のものではないところの、怪しくも美しい

(こうけい、わたしはそのとうじのけんぶんを、どのようなことばでけいようすればよいのでしょう。)

光景、私はその当時の見聞を、どのような言葉で形容すればよいのでしょう。

(がいぶからかいいれたかがみと、それでたらぬところやほかではしいれることのできない)

外部から買入れた鏡と、それで足らぬところやほかでは仕入れることのできない

(かたちのものは、かれじしんのこうじょうでせいぞうしたかがみによっておぎない、かれのむそうはつぎからつぎへと)

形のものは、彼自身の工場で製造した鏡によって補い、彼の夢想は次から次へと

(じつげんされていくのでした。あるときはかれのくびばかりが、どうばかりが、あるいは)

実現されて行くのでした。ある時は彼の首ばかりが、胴ばかりが、或いは

(あしばかりが、じっけんしつのくうちゅうをただよっているこうけいです。それはいうまでもなく、)

足ばかりが、実験室の空中を漂っている光景です。それは言うまでもなく、

(きょだいなへいめんきょうをむろいっぱいにななめにはりつめて、そのいちぶにあなをあけ、そこから)

巨大な平面鏡を室一杯に斜めに張りつめて、その一部に穴をあけ、そこから

(くびやてあしをだしている、あのてじなしのじょうとうしゅだんにすぎないのですけれどそれを)

首や手足を出している、あの手品師の常套手段にすぎないのですけれどそれを

(おこなうほんにんがてじなしではなくて、びょうてきなきまじめなわたしのともだちなのですから、)

行う本人が手品師ではなくて、病的な生真面目な私の友だちなのですから、

(いじょうのかんにうたれないでいられません。あるときはへやぜんたいが、おうめんきょう、とつめんきょう、)

異常の感に打たれないでいられません。ある時は部屋全体が、凹面鏡、凸面鏡、

(なみがたきょう、つつがたきょう、こうずいです。)

波形鏡、筒型鏡、洪水です。

(そのちゅうおうでおどりくるうかれのすがたはあるいはきょだいに、あるいは)

その中央で踊り狂う彼の姿は或いは巨大に、或いは

(びしょうに、あるいはほそながく、あるいはひらべったく、あるいはまがりくねり、あるいは)

微小に、或いは細長く、或いは平べったく、或いは曲がりくねり、或いは

(どうばかりが、あるいはくびのしたにくびがつながり、あるいはひとつのかおにめがよっつでき、)

胴ばかりが、或いは首の下に首がつながり、或いは一つの顔に眼が四つでき、

(あるいはくちびるがじょうげにむげんにのび、あるいはちぢみ、そのかげがまたたがいにはんぷくし、こうさくして)

或いは唇が上下に無限に延び、或いは縮み、その影がまた互に反復し、交錯して

(ふんぜんざつねん、まるできょうじんのげんそうです。あるときはへやぜんたいがきょだいなるまんげきょうです。)

紛然雑念、まるで狂人の幻想です。ある時は部屋全体が巨大なる万華鏡です。

(からくりしかけで、かたりかたりとまわる、すうじゅっしゃくのかがみのさんかくづつのなかにはなやのみせを)

からくり仕掛けで、カタリカタリと廻る、数十尺の鏡の三角筒の中に花屋の店を

(からにしてあつめてきた、せんしばんこうが、あへんのゆめのように、はなびらいちまいのおおきさが)

からにして集めてきた、千紫万紅が、阿片の夢のように、花弁一枚の大きさが

(たたみいちじょうにもうつってそれがなんぜんなんまんとなく、ごしょくのにじとなり、きょくちのおーろらと)

畳一畳にも映ってそれが何千何万となく、五色の虹となり、極地のオーロラと

(なって、みるもののせかいをおおいつくす。そのなかでおおにゅうどうのかれのらたいがつきのひょうめんの)

なって、見る者の世界を覆い尽くす。その中で大入道の彼の裸体が月の表面の

(ような、きょだいなけあなをみせておどりくるうのです。)

ような、巨大な毛穴を見せて踊り狂うのです。

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