銀河鉄道の夜(宮沢賢治)より 午后の授業の一節
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問題文
(ではみなさんは、そういうふうにかわだといわれたり、)
ではみなさんは、そういうふうに川だと言われたり、
(ちちのながれたあとだといわれたりしていたこのぼんやりとしろいものが)
乳の流れたあとだと言われたりしていたこのぼんやりと白いものが
(ほんとうはなにかごしょうちですか。)
ほんとうは何かご承知ですか。
(このぼんやりとしろいぎんがをおおきないいぼうえんきょうでみますと、)
このぼんやりと白い銀河を大きないい望遠鏡で見ますと、
(もうたくさんのちいさなほしにみえるのです。)
もうたくさんの小さな星に見えるのです。
(ですからもしもこのあまのがわがほんとうにかわだとかんがえるなら、)
ですからもしもこの天の川がほんとうに川だと考えるなら、
(そのひとつひとつのちいさなほしはみんな)
その一つ一つの小さな星はみんな
(そのかわのそこのすなやじゃりのつぶにもあたるわけです。)
その川のそこの砂や砂利の粒にもあたるわけです。
(またこれをおおきなちちのながれとかんがえるならもっとあまのがわとよくにています。)
またこれを大きな乳の流れと考えるならもっと天の川とよく似ています。
(つまりそのほしはみな、ちちのなかにまるでこまかにうかんでいる)
つまりその星はみな、乳のなかにまるで細かにうかんでいる
(しゆのたまにもあたるのです。)
脂油の球にもあたるのです。
(そんならなにがそのかわのみずにあたるかといいますと、)
そんなら何がその川の水にあたるかと言いますと、
(それはしんくうというひかりをあるはやさでつたえるもので、)
それは真空という光をある速さで伝えるもので、
(たいようやちきゅうもやっぱりそのなかにうかんでいるのです。)
太陽や地球もやっぱりそのなかに浮かんでいるのです。
(つまりはわたくしどももあまのがわのみずのなかにすんでいるわけです。)
つまりは私どもも天の川の水のなかに棲んでいるわけです。
(そしてそのあまのがわのみずのなかからしほうをみると、)
そしてその天の川の水のなかから四方を見ると、
(ちょうどみずがふかいほどあおくみえるように、)
ちょうど水が深いほど青く見えるように、
(あまのがわのそこのふかくとおいところほどほしがたくさんあつまってみえ)
天の川の底の深く遠いところほど星がたくさん集まって見え
(したがってしろくぼんやりみえるのです。)
したがって白くぼんやり見えるのです。