ばくてりやの世界(旧仮名)萩原朔太郎
萩原朔太郎の「月に吠える」より「ばくてりやの世界」。
「やうに」「ひろがつてゐる」「たへがたく」など、ところどころ旧仮名遣いなのでご注意ください。
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問題文
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(ばくてりやのあし、)
ばくてりやの足、
(ばくてりやのくち、)
ばくてりやの口、
(ばくてりやのみみ、)
ばくてりやの耳、
(ばくてりやのはな、)
ばくてりやの鼻、
(ばくてりやがおよいでいる。)
ばくてりやがおよいでゐる。
(あるものはじんぶつのたいないに、)
あるものは人物の胎内に、
(あるものはかいるいのないぞうに、)
あるものは貝るゐの内臓に、
(あるものはたまねぎのきゅうしんに、)
あるものは玉葱の球心に、
(あるものはふうけいのちゅうしんに。)
あるものは風景の中心に。
(ばくてりやがおよいでいる。)
ばくてりやがおよいでゐる。
(ばくてりやのてはさゆうじゅうもんじにはえ、)
ばくてりやの手は左右十文字に生え、
(てのつまさきがねのやうにわかれ、)
手のつまさきが根のやうにわかれ、
(そこからするどいつめがはえ、)
そこからするどい爪が生え、
(もうさいけっかんのたぐいはべたいちめんにひろがつている。)
毛細血管の類はべたいちめんにひろがつてゐる。
(ばくてりやがおよいでいる。)
ばくてりやがおよいでゐる。
(ばくてりやがせいかつするところには、)
ばくてりやが生活するところには、
(びょうにんのひふをすかすやうに、)
病人の皮膚をすかすやうに、
(べにいろのこうせんがうすくさしこんで、)
べにいろの光線がうすくさしこんで、
(そのぶぶんだけほんのりとしてみえ、)
その部分だけほんのりとしてみえ、
(じつに、じつに、かなしみたへがたくみえる。)
じつに、じつに、かなしみたへがたく見える。
など
(ばくてりやがおよいでいる。)
ばくてりやがおよいでゐる。