星の王子さま 8 (9/32)

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美しい花
サン=テグジュペリ作 内藤濯訳 
順位 名前 スコア 称号 打鍵/秒 正誤率 時間(秒) 打鍵数 ミス 問題 日付
1 すもさん 5761 A+ 6.0 96.1% 699.8 4201 169 86 2024/11/21

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問題文

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(ぼくは、いくらもたたないうちに、そのはなが、どんなはななのか、)

ぼくは、いくらもたたないうちに、その花が、どんな花なのか、

(もっとよくしるようになりました。)

もっとよく知るようになりました。

(もともとおうじさまのほしには、はなびらがひとえで、ばしょをふさがないし、)

もともと王子さまの星には、花びらが一重で、場所をふさがないし、

(だれのじゃまもしない、たいへんすっきりしたはなが、いくつもさいていました。)

だれのじゃまもしない、たいへんすっきりした花が、いくつも咲いていました。

(あさ、くさのなかにさきだしているかとおもうと、)

あさ、草の中に咲きだしているかと思うと、

(ゆうがたには、もうきえてなくなるはなでした。)

夕方には、もうきえてなくなる花でした。

(だけれど、おうじさまのそのはなは、あるひ、どこからかとんできたたねが、)

だけれど、王子さまのその花は、ある日、どこからか飛んできた種が、

(めをふいたはなでした。)

芽をふいた花でした。

(そしてそのめは、そこらのめとは、にてもにつかないめなので、)

そしてその芽は、そこらの芽とは、似ても似つかない芽なので、

(おうじさまは、そのめを、しじゅう、つきっきりでみまもっていました。)

王子さまは、その芽を、しじゅう、つきっきりで見守っていました。

(それは、あたらしいしゅるいのばおばぶであるかもしれなかったのです。)

それは、新しい種類のバオバブであるかもしれなかったのです。

(しかし、めがのびて、ちいさなきになると、もう、それきり)

しかし、芽がのびて、小さな木になると、もう、それきり

(のびなくなって、はなをつけはじめました。)

のびなくなって、花をつけはじめました。

(おおきなつぼみが、こしをおちつけているのを、はたでみているおうじさまは、)

大きなつぼみが、腰をおちつけているのを、はたで見ている王子さまは、

(いまに、あっというほどうつくしいものが、みえてくるように)

いまに、あっというほど美しいものが、見えてくるように

(おもわれてなりませんでした。 でも、はなは、みどりのへやにじっとしていて、)

思われてなりませんでした。 でも、花は、緑のへやにじっとしていて、

(なかなか、けしょうをやめません。)

なかなか、けしょうをやめません。

(どんないろになろうかと、ねんにはねんをいれているのです。)

どんな色になろうかと、念には念をいれているのです。

(ゆっくりときものをきているのです。)

ゆっくりと着物をきているのです。

(はなびらをひとつひとつ、ととのえているのです。)

花びらを一つ一つ、ととのえているのです。

など

(ひなげしのように、もみくちゃなかおになって、でてきたくないのです。)

ヒナゲシのように、もみくちゃな顔になって、出てきたくないのです。

(てりひかるほどうつくしいすがたにならなくては、かおをみせたくないのです。)

照り光るほど美しい姿にならなくては、顔を見せたくないのです。

(ええ、ええ、そうですとも、なかなかのおしゃれだったのです。)

ええ、ええ、そうですとも、なかなかのおしゃれだったのです。

(そんなわけで、ふしぎなけしょうは、いくにちもいくにちもつづきました。)

そんなわけで、不思議な化粧は、いく日もいく日もつづきました。

(ところが、あるひのあさ、ちょうどおひさまがのぼるころ、)

ところが、ある日の朝、ちょうどお日さまがのぼるころ、

(はなは、とうとうかおをみせました。)

花は、とうとう顔を見せました。

(なにひとつておちなくけしょうをこらしたはなは、あくびしながらいいました。)

なにひとつ手おちなく化粧を凝らした花は、あくびしながらいいました。

(「ああ、まだねむいわ・・・。あら、ごめんなさい。)

「ああ、まだねむいわ・・・。あら、ごめんなさい。

(あたくし、まだかみをといていませんから・・・」)

あたくし、まだ髪をといていませんから・・・」

(おうじさまは、そういわれて<ああ、うつくしいはなだ>と )

王子さまは、そういわれて<ああ、美しい花だ>と

(おもわずにはいられませんでした。)

思わずにはいられませんでした。

(「きれいだなあ!」)

「きれいだなあ!」

(「そうでしょうか」とはなはしずかにこたえました。)

「そうでしょうか」と花はしずかに答えました。

(「あたくし、おひさまといっしょに、うまれたんですわ」)

「あたくし、お日さまといっしょに、生まれたんですわ」

(おうじさまは、このはな、あんまりけんそんではないな、と、)

王子さまは、この花、あんまりけんそんではないな、と、

(たしかにおもいはしましたが、でも、ほろりとするほどうつくしいはなでした。)

たしかに思いはしましたが、でも、ホロリとするほど美しい花でした。

(「いま、あさのおしょくじのじこくですわね。あたくしにも、なにか、)

「いま、朝のお食事の時刻ですわね。あたくしにも、なにか、

(いただかせてくださいませんの・・・」)

いただかせてくださいませんの・・・」

(おうじさまは、どぎまぎしましたが、くみたてのみずのはいった)

王子さまは、どぎまぎしましたが、汲み立ての水のはいった

(じょろをとりにいって、はなに、あさのしょくじをさせてやりました。)

ジョロをとりにいって、花に、朝の食事をさせてやりました。

(はなは、さいたかとおもうとすぐ、じぶんのうつくしさをはなにかけて、)

花は、咲いたかと思うとすぐ、じぶんの美しさをはなにかけて、

(おうじさまをくるしめはじめました。)

王子さまを苦しめはじめました。

(それで、おうじさまはたいへんこまりました。)

それで、王子さまはたいへん困りました。

(たとえばあるひのこと、はなは、そのもっているよっつのとげのはなしをしながら、)

たとえばある日のこと、花は、そのもっている四つのトゲの話をしながら、

(おうじさまにむかって、こういいました。)

王子さまにむかって、こういいました。

(「つめをひっかけにくるかもしれませんわね、とらたちが!」)

「爪をひっかけに来るかもしれませんわね、トラたちが!」

(「ぼくのほしに、とらなんかいないよ。)

「ぼくの星に、トラなんかいないよ。

(それに、とらは、くさなんかたべないからね」と)

それに、トラは、草なんか食べないからね」と

(おうじさまは、あいてをさえぎっていいました。)

王子さまは、あいてをさえぎっていいました。

(「あたくし、くさじゃありませんのよ」と、はなは、あまったるいこえでこたえました。)

「あたくし、草じゃありませんのよ」と、花は、甘ったるい声で答えました。

(「あ、ごめんね・・・」)

「あ、ごめんね・・・」

(「あたくし、とらなんか、ちっともこわくないんですけど、)

「あたくし、トラなんか、ちっともこわくないんですけど、

(かぜのふいてくるのが、こわいわ。ついたてを、なんとかしてくださらない?」)

風のふいてくるのが、こわいわ。ついたてを、なんとかしてくださらない?」

(<かぜのふいてくるのがこわいなんて・・・しょくぶつだのに、どうしたんだろう。)

<風のふいてくるのがこわいなんて・・・植物だのに、どうしたんだろう。

(このはなったら、ずいぶんきむずかしいなあ・・・>とおうじさまは、かんがえました。)

この花ったら、ずいぶん気むずかしいなあ・・・>と王子さまは、考えました。

(「ゆうがたになったら、おおいがらすをかけてくださいね。ここ、とてもさむいわ。)

「夕方になったら、覆いガラスをかけてくださいね。ここ、とても寒いわ。

(ほしのありばがわるいんですわね。だけど、あたくしのもといたくにでは・・・>)

星のあり場がわるいんですわね。だけど、あたくしのもといた国では・・・>

(はなは、こういいかけてくちをつぐみました。もといたといっても、)

花は、こういいかけて口をつぐみました。もといたといっても、

(はなが、いたのではなくて、たねが、いたのでした。)

花が、いたのではなくて、種が、いたのでした。

(ですから、ほかのせかいのことなんか、しっているわけがありません。)

ですから、ほかの世界のことなんか、知っているわけがありません。

(おもわず、こんな、すぐばれそうなうそをいいかけたのがはずかしくなって、)

思わず、こんな、すぐばれそうなウソをいいかけたのが恥ずかしくなって、

(はなは、おうじさまをごまかそうと、にさんどせきをしました。)

花は、王子さまをごまかそうと、二三度せきをしました。

(「ついたては、どうなすったの?・・・」)

「ついたては、どうなすったの?・・・」

(「とりにいきかけたら、きみが、なんとかいったものだから」)

「とりにいきかけたら、きみが、なんとかいったものだから」

(するとはなは、むりにせきをして、おうじさまを、すまないきもちにさせました。)

すると花は、むりにせきをして、王子さまを、すまない気持ちにさせました。

(そんなしうちをされて、おうじさまは、ほんきではなをあいしてはいたのですが、)

そんなしうちをされて、王子さまは、ほんきで花を愛してはいたのですが、

(すぐにはなのこころをうたがうようになりました。)

すぐに花の心を疑うようになりました。

(はながなんでもなくいったことを、まじめにうけて、おうじさまは、)

花がなんでもなくいったことを、まじめにうけて、王子さまは、

(なさけなくなりました。)

なさけなくなりました。

(あるひ、おうじさまは、ぼくにこころを、うちあけていいました。)

ある日、王子さまは、ぼくに心を、打ち明けていいました。

(「あのはなのいうことなんか、きいてはいけなかったんだよ。)

「あの花のいうことなんか、きいてはいけなかったんだよ。

(にんげんは、はなのいうことなんていいかげんにきいていればいいんだから。)

人間は、花のいうことなんていいかげんに聞いていればいいんだから。

(はなはながめるものだよ。においをかぐものだよ。)

花はながめるものだよ。においをかぐものだよ。

(ぼくのはなは、ぼくのほしをいいにおいにしてたけど、)

ぼくの花は、ぼくの星をいいにおいにしてたけど、

(ぼくは、すこしもたのしくなかった。あのつめのはなしだって、ぼく、きいていて、)

ぼくは、少しも楽しくなかった。あの爪の話だって、ぼく、きいていて、

(じっとしていられなかったんだろ。だから、かわいそうにおもうのが、)

じっとしていられなかったんだろ。だから、かわいそうに思うのが、

(あたりまえだったんだけどね・・・」)

当たり前だったんだけどね・・・」

(それからまた、こうも、うちあけていいました。)

それからまた、こうも、うちあけていいました。

(「ぼくは、あのとき、なんにもわからなかったんだよ。)

「ぼくは、あの時、なんにもわからなかったんだよ。

(あのはなのいうことなんか、とりあげずに、することでしなさだめしなけりゃあ、)

あの花のいうことなんか、とりあげずに、することで品定めしなけりゃあ、

(いけなかったんだ、ぼくは、あのはなのおかげで、いいにおいにつつまれていた。)

いけなかったんだ、ぼくは、あの花のおかげで、いいにおいにつつまれていた。

(ずるそうなふるまいはしているけど、ねは、やさしいんだということを)

ずるそうなふるまいはしているけど、根は、やさしいんだということを

(くみとらなけりゃいけなかったんだ。)

くみとらなけりゃいけなかったんだ。

(はなのすることったら、ほんとにとんちんかんなんだから。)

花のすることったら、ほんとにとんちんかんなんだから。

(ぼくは、あんまりちいさかったから、あのはなをあいするってことが)

ぼくは、あんまり小さかったから、あの花を愛するってことが

(わからなかったんだ」)

分らなかったんだ」

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