星の王子さま 12 (14/32)

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呑み助の星
サン=テグジュペリ作 内藤濯訳 

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(つぎのほしには、のみすけがすんでいました。)

つぎの星には、呑み助が住んでいました。

(おうじさまは、そののみすけを、ほんのちょっとたずねたきりでしたが、)

王子さまは、その呑み助を、ほんのちょっとたずねたきりでしたが、

(ひどくきがしずんでしまいました。)

ひどく気がしずんでしまいました。

(のみすけは、からのびんと、さけのいっぱいはいったびんを、)

呑み助は、空のビンと、酒のいっぱいはいったビンを、

(ずらりとまえにならべて、だまりこくっています。)

ずらりと前にならべて、だまりこくっています。

(おうじさまは、それをみて、いいました。)

王子さまは、それを見て、いいました。

(「きみ、そこで、なにしてるの?」 「さけのんでるよ」と、)

「きみ、そこで、なにしてるの?」 「酒のんでるよ」と、

(のみすけは、いまにもなきだしそうなかおをしてこたえました。)

呑み助は、いまにも泣き出しそうな顔をして答えました。

(「なぜ、さけなんかのむの?」 と、おうじさまはたずねました。)

「なぜ、酒なんか飲むの?」 と、王子さまはたずねました。

(「わすれたいからさ」 と、のみすけはこたえました。)

「忘れたいからさ」 と、呑み助は答えました。

(「わすれるって、なにをさ?」と、)

「忘れるって、何をさ?」と、

(おうじさまは、きのどくになりだして、ききました。)

王子さまは、気の毒になりだして、ききました。

(「はずかしいのをわすれるんだよ」と。)

「はずかしいのを忘れるんだよ」と。

(のみすけはふしめになってうちあけました。)

呑み助は伏し目になって打ち明けました。

(「はずかしいって、なにが?」)

「はずかしいって、なにが?」

(と、おうじさまは、あいてのきをひきたてるつもりになって、ききました。)

と、王子さまは、あいての気をひきたてるつもりになって、聞きました。

(「さけをのむのが、はずかしいんだよ」)

「酒をのむのが、はずかしいんだよ」

(というなり、のみすけは、だまりこくってしまいました。)

というなり、呑み助は、だまりこくってしまいました。

(そこで、おうじさまは、とうわくして、そこをたちさりました。)

そこで、王子さまは、当惑して、そこを立ち去りました。

(おとなって、とっても、とってもおかしいんだなあ、と、)

おとなって、とっても、とってもおかしいんだなあ、と、

など

(おうじさまは、たびをつづけながらかんがえていました。)

王子さまは、 旅をつづけながら考えていました。

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