星の王子さま 26② (30/32)
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問題文
(「こんやでいちねんになる。)
「今夜で一年になる。
(ぼくのほしは、きょねん、ぼくがおりてきたとこの、ちょうどまうえにくるよ・・・」)
ぼくの星は、去年、ぼくが降りてきたとこの、ちょうど真上にくるよ・・・」
(「ぼっちゃん、そりゃ、ありもしないこといってるんじゃないのかい、)
「ぼっちゃん、そりゃ、ありもしないこと言ってるんじゃないのかい、
(へびだの、まちあわせるばしょだの、ほしだのっていう、そのはなし・・・?)
ヘビだの、まちあわせる場所だの、星だのっていう、その話・・・?
(ね、そうだろ・・・」)
ね、そうだろ・・・」
(けれど、おうじさまは、ぼくがきいたことにはこたえないで、こういいました。)
けれど、王子さまは、ぼくがきいたことには答えないで、こういいました。
(「たいせつなことはね、めにみえないんだよ・・・」)
「たいせつなことはね、目に見えないんだよ・・・」
(「うん、そうだね・・・」)
「うん、そうだね・・・」
(「はなだっておんなじだよ。 もし、きみが、どこかのほしにあるはながすきだったら、)
「花だっておんなじだよ。 もし、君が、どこかの星にある花が好きだったら、
(よる、そらをみあげるたのしさったらないよ。)
夜、空を見上げるたのしさったらないよ。
(どのほしも、みんな、はなでいっぱいだからねえ」)
どの星も、みんな、花でいっぱいだからねえ」
(「うん、そうだね・・・」)
「うん、そうだね・・・」
(「みずだっておんなじさ。 きみがぼくにのませてくれたあのみずったら、)
「水だっておんなじさ。 きみがぼくに飲ませてくれたあの水ったら、
(くるまとつなで、くみあげたんで、おんがくをきくようだったね・・・。)
車と綱で、汲み上げたんで、音楽をきくようだったね・・・。
(ほら・・・うまいみずだったじゃないか」)
ほら・・・うまい水だったじゃないか」
(「うん、そうだね・・・」)
「うん、そうだね・・・」
(「よるになったら、ほしをながめておくれよ。)
「夜になったら、星をながめておくれよ。
(ぼくんちは、とてもちっぽけだから、どこにぼくのほしがあるのか、)
ぼくんちは、とてもちっぽけだから、どこにぼくの星があるのか、
(きみにみせるわけにはいかないんだ。)
きみに見せるわけにはいかないんだ。
(だけど、そのほうがいいよ。)
だけど、そのほうがいいよ。
(きみは、ぼくのほしを、ほしのうちの、どれかひとつだとおもってながめるからね。)
きみは、ぼくの星を、星のうちの、どれか一つだと思ってながめるからね。
(すると、きみは、どのほしも、ながめるのがすきになるよ。)
すると、きみは、どの星も、ながめるのが好きになるよ。
(ほしがみんな、きみのともだちになるわけさ。)
星がみんな、きみの友だちになるわけさ。
(それから、ぼく、きみにおくりものをひとつあげる・・・」)
それから、ぼく、きみにおくりものを一つあげる・・・」
(おうじさまは、またわらいました。)
王子さまは、また笑いました。
(「ぼっちゃん、ぼっちゃん、ぼく、そのわらいごえをきくのがすきだ」)
「ぼっちゃん、ぼっちゃん、ぼく、その笑い声をきくのが好きだ」
(「これが、ぼくの、いまいったおくりものさ。)
「これが、ぼくの、いまいったおくりものさ。
(ぼくたちがみずをのんだときと、おんなじだろう」)
ぼくたちが水を飲んだときと、おんなじだろう」
(「それ、どういうこと?」)
「それ、どういうこと?」
(「にんげんはみんな、ちがっためでほしをみてるんだ。)
「人間はみんな、ちがった目で星を見てるんだ。
(りょこうするひとのめからみると、ほしはあんないしゃなんだ。)
旅行する人の目から見ると、星は案内者なんだ。
(ちっぽけなひかりくらいにしかおもっていないひともいる。)
ちっぽけな光くらいにしか思っていない人もいる。
(がくしゃのひとたちのうちには、ほしをむずかしいもんだいにしているひともいる。)
学者の人たちのうちには、星をむずかしい問題にしている人もいる。
(ぼくのあったじつぎょうやなんかは、きんかだとおもってた。)
ぼくのあった実業屋なんかは、金貨だと思ってた。
(だけど、あいてのほしは、みんな、なんにもいわずにだまっている。)
だけど、あいての星は、みんな、なんにもいわずにだまっている。
(でも、きみには、ほしが、ほかのひととはちがったものになるんだ・・・」)
でも、きみには、星が、ほかの人とはちがったものになるんだ・・・」
(「それ、どういうこと?」)
「それ、どういうこと?」
(「ぼくは、あのほしのなかのひとつにすむんだ。)
「ぼくは、あの星の中の一つに住むんだ。
(そのひとつのほしのなかでわらうんだ。)
その一つの星のなかで笑うんだ。
(だから、きみがよる、ほしをながめたら、ほしがみんなわらってるようにみえるだろう。)
だから、きみが夜、星をながめたら、星がみんな笑ってるようにみえるだろう。
(すると、きみだけが、わらいじょうごのほしをみるわけさ」)
すると、きみだけが、笑い上戸の星をみるわけさ」
(そして、おうじさまは、またわらいました。)
そして、王子さまは、また笑いました。
(「それに、きみは、いまにかなしくなくなったらーーー)
「それに、きみは、いまに悲しくなくなったらーーー
(かなしいことなんか、いつまでもつづきゃしないけどねーーー)
悲しいことなんか、いつまでも続きゃしないけどねーーー
(ぼくとしりあいになってよかったとおもうよ。)
ぼくと知り合いになってよかったと思うよ。
(きみは、どんなときにも、ぼくのともだちなんだから、)
きみは、どんな時にも、ぼくの友だちなんだから、
(ぼくといっしょになってわらいたくなるよ。)
ぼくといっしょになって笑いたくなるよ。
(そして、たまには、そう、こんなふうに、へやのまどをあけて、)
そして、たまには、そう、こんなふうに、へやの窓をあけて、
(ああ、うれしい、とおもうこともあるよ・・・。)
ああ、うれしい、と思うこともあるよ・・・。
(そしたら、きみのともだちたちは、きみがそらをみあげながらわらってるのをみて、)
そしたら、きみの友だちたちは、きみが空を見上げながら笑ってるのを見て、
(びっくりするだろうね。 そのときは、)
びっくりするだろうね。 そのときは、
(<そうだよ、ぼくはほしをみると、いつもわらいたくなる> っていうのさ。)
<そうだよ、ぼくは星を見ると、いつも笑いたくなる> っていうのさ。
(そしたら、ともだちたちは、きみがきちがいになったんじゃないかっておもうだろう。)
そしたら、友だちたちは、君がきちがいになったんじゃないかって思うだろう。
(するとぼくは、きみにとんだいたずらしたことになるんだね・・・」)
するとぼくは、きみにとんだいたずらしたことになるんだね・・・」
(おうじさまは、またわらいました。)
王子さまは、また笑いました。
(「そうすると、ぼくはほしのかわりに、わらいじょうごのちっちゃいすずをたくさん、)
「そうすると、ぼくは星のかわりに、笑い上戸のちっちゃい鈴をたくさん、
(きみにあげたようなものだろうね・・・」)
きみにあげたようなものだろうね・・・」
(おうじさまは、またわらいました。)
王子さまは、また笑いました。
(が、やがてまた、まじめなかおになっていいました。)
が、やがてまた、まじめな顔になっていいました。
(「こんやはね、やってきちゃいけないよ」)
「今夜はね、やってきちゃいけないよ」
(「ぼく、きみのそばをはなれないよ」)
「ぼく、きみのそばをはなれないよ」
(「ぼく、びょうきになってるようなかおしそうだよ・・・)
「ぼく、病気になってるような顔しそうだよ・・・
(なんだか、いきてないようなかおをしそうだよ。)
なんだか、生きてないような顔をしそうだよ。
(うん、そうなんだ。 だから、そんなようす、)
うん、そうなんだ。 だから、そんなようす、
(みにきたって、しょうがないじゃないか・・・」)
見に来たって、しょうがないじゃないか・・・」
(「ぼく、きみのそば、はなれないよ」)
「ぼく、きみのそば、はなれないよ」
(そういってもおうじさまは、しんぱいそうなかおをしています。)
そういっても王子さまは、心配そうな顔をしています。