耳なし芳一 3 /9

関連タイピング
-
小説作ってみたのでやってみてね! 練習!長文タイピング!
プレイ回数1.4万長文1069打 -
プレイ回数202長文2531打
-
このタイピングはゆっくりと更新していくである2
プレイ回数617長文かな2088打 -
プレイ回数23169打
-
小説作ってみた
プレイ回数55長文かな364打 -
伊緒は和地家に嫁いで間もないが、夫・伝四郎が戦に行くことになる。
プレイ回数1122長文3493打 -
(上)先生と私
プレイ回数1854長文1994打 -
太宰治の短編小説、駆け込み訴えです。
プレイ回数1780長文2826打
問題文
(「わたしはめしいでございます。どなたさまがおよびか、)
「私は盲でございます。どなた様がお呼びか、
(わかりかねるのでございますが」)
わかりかねるのでございますが」
(「なにもこわがることはない」)
「なにも怖がることはない」
(と、そのみしらぬものはいくぶんこえをやわらげて、)
と、その見知らぬ者はいくぶん声を和らげて、
(「わしはこのてらのちかくにやどをとっておるものだが、)
「わしはこの寺の近くに宿をとっておる者だが、
(ごしゅくんからのつかいでこうしてまいったのじゃ。)
ご主君からの使いでこうして参ったのじゃ。
(わがきみはたいそうやんごとないおかたで、)
わが君はたいそうやんごとないお方で、
(このたびおおぜいのきぞくをともにしたがえて、)
このたびおおぜいの貴族を伴に従えて、
(このあかまがせきにたいざいしておられる。)
この赤間ヶ関に滞在しておられる。
(だんのうらのかっせんのあとをごらんになりたいとのおおせで、)
壇ノ浦の合戦の跡をご覧になりたいとの仰せで、
(ほんじつそのちをおとずれになられた。)
本日その地を訪れになられた。
(ついては、そなたがかっせんのもようをかたるのがじょうずだとおききおよびになり、)
ついては、そなたが合戦の模様を語るのが上手だとお聞き及びになり、
(ぜひともそのびわをききたいとのごしょもうなのだ。)
ぜひともその琵琶を聞きたいとのご所望なのだ。
(さあ、さっそくびわをもって、わしについてまいれ。)
さあ、さっそく琵琶を持って、わしについて参れ。
(おやかたではこうきなかたがたがおまちかねであるぞ」)
お館では高貴な方々がお待ちかねであるぞ」
(とうじはさむらいのめいれいとあれば、)
当時は侍の命令とあれば、
(かるがるしくそむくわけにはまいりません。)
軽々しく背くわけには参りません。
(ほういちはぞうりをはき、びわをたずさえて、みしらぬおとこのあとにしたがいました。)
芳一は草履をはき、琵琶をたずさえて、見知らぬ男の後に従いました。
(さむらいはきようにさきをみちびいてくれたものの、)
侍は器用に先を導いてくれたものの、
(ほういちはたいへんなはやさであるかねばなりませんでした。)
芳一は大変な速さで歩かねばなりませんでした。
(ほういちをひいていく、そのてはてつのようでありました。)
芳一を引いていく、その手は鉄のようでありました。
(それに、さむらいがおおまたにふみだすごとに、がちゃりとおもいおとがするのは、)
それに、侍が大股に踏み出すごとに、がちゃりと重い音がするのは、
(どうやらよろいかぶとをみにつけているためです。)
どうやら鎧兜を身に着けているためです。
(おそらく、ごてんけいごにあたるぶしなのでありましょう。)
おそらく、御殿警護にあたる武士なのでありましょう。
(さいしょのきょうふしんがおさまってみると、)
最初の恐怖心が収まってみると、
(ほういちはわがみのうんがめぐってきたのかとおもいました。)
芳一はわが身の運がめぐってきたのかと思いました。
(ーーこのごけにんが、「たいそうやんごとないおかた」というからには、)
ーーこの御家人が、「たいそうやんごとないお方」というからには、
(びわをききたいとおっしゃるとのさまは、)
琵琶を聞きたいとおっしゃる殿さまは、
(まずいちりゅうのだいみょうにちがいあるまい。)
まず一流の大名に違いあるまい。
(やがて、さむらいはたちどまりました。)
やがて、侍は立ちどまりました。
(きがついてみると、いつしかおおきなもんのまえについております。)
気がついてみると、いつしか大きな門の前に着いております。
(はては、とほういちはいぶかしくおもいました。)
はては、と芳一はいぶかしく思いました。
(それにしても、あみだじのせいもんのほかに、)
それにしても、阿弥陀寺の正門のほかに、
(こんなおおきなもんがこのまちのあたりにあっただろうか。)
こんな大きな門がこの町のあたりにあっただろうか。