酒呑童子(大江山) 6
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問題文
(もんにちかくなるとらいこうたちは、)
門に近くなると頼光たちは、
(わざとくたびれきったようにあしをひきずってあるきながら、)
わざとくたびれきったように足をひきずってあるきながら、
(こちらからおににこえをかけて、)
こちらから鬼に声をかけて、
(「もしもし、たびのものでございますが、)
「もしもし、旅の者でございますが、
(やまみちにまよって、もうつかれてひとあしもあるかれません。)
山道に迷って、もう疲れて一足も歩かれません。
(どうぞおなさけに、しばらくわたくしどもを)
どうぞお情けに、しばらくわたくしどもを
(やすませていただきとうございます。」)
休ませていただきとうございます。」
(と、さもこころぼそそうにいいました。)
と、さも心細そうにいいました。
(おにどもは、)
鬼どもは、
(「これはめずらしいものがやってきたぞ。)
「これは珍しい者がやって来たぞ。
(なにしろだいおうさまにもうしあげよう。」)
なにしろ大王様に申し上げよう。」
(といって、しゅてんどうじのところへいってしらせますと、)
といって、酒呑童子の所へ行ってしらせますと、
(「それはおもしろい。すぐおくへとおせ。」)
「それはおもしろい。すぐ奥へとおせ。」
(といいました。)
といいました。
(ろくにんのぶしがえんがわにあがってまっていますと、)
六人の武士が縁側に上がって待っていますと、
(やがてかみなりやいなびかりがしきりにおこって、)
やがて雷や稲光がしきりに起こって、
(おおかぜのうなるようなおとがしはじめました。)
大風のうなるような音がしはじめました。
(するとまもなくそこへ、いちじょうにもあまろうという)
すると間もなくそこへ、一丈にもあまろうという
(おおきなあかおにが、かみのけをさかだて、)
大きな赤鬼が、髪の毛を逆立て、
(おさらのようなめをぎょろぎょろさせながらでてきました。)
お皿のような目をぎょろぎょろさせながら出て来ました。
(そのすがたをひとめみただけで、)
その姿を一目見ただけで、
(だれだっておどろいてきをうしなわずにはいられません。)
だれだっておどろいて気を失わずにはいられません。
(けれどもらいこうはじめろくにんのぶしはびくともしないで、)
けれども頼光はじめ六人の武士はびくともしないで、
(しゅてんどうじのかおをじっとみかえして、)
酒呑童子の顔をじっと見返して、
(ていねいにあいさつをしました。)
ていねいにあいさつをしました。
(どうじはそのときおうへいなちょうしで、)
童子はその時おうへいな調子で、
(「きさまたちはいったいどこからきた。)
「きさまたちはいったいどこから来た。
(よくこんなやまおくまであがってきたものだな。」)
よくこんな山奥まで上がって来たものだな。」
(といいました。)
といいました。
(するとらいこうが、)
すると頼光が、
(「それはわたくしどもやまぶしのならいで、)
「それはわたくしども山伏のならいで、
(みちのないやまおくまでもふみわけてしゅぎょうをいたします。)
道のない山奥までも踏み分けて修行をいたします。
(わたくしどもはいったいでわのはぐろさんからでました)
わたくしどもはいったい出羽の羽黒山から出ました
(やまぶしでございますが、このあいだはやまとのおおみねにおこもりをしまして、)
山伏でございますが、この間は大和の大峰におこもりをしまして、
(それからみやこへでようとするとちゅうみちにまよって、)
それから都へ出ようとする途中道に迷って、
(このとおりこちらのごやっかいになることになりました。」)
このとおりこちらの御厄介になることになりました。」
(といいました。)
といいました。