銀河鉄道の夜 5
二、 活版所 (2/2)
宮沢賢治 作
宮沢賢治 作
「よう、虫めがね君、お早う。」といいますと、
近くの四、五人の人たちが声もたてずこっちも向かずに
冷たくわらいました。
近くの四、五人の人たちが声もたてずこっちも向かずに
冷たくわらいました。
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問題文
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(じょばんにはそのひとのてーぶるのあしもとから)
ジョバンニはその人のテーブルの足もとから
(ひとつのちいさなひらたいはこをとりだして)
一つの小さな平たい箱をとりだして
(むこうのでんとうのたくさんついた、)
向こうの電燈のたくさんついた、
(たてかけてあるかべのすみのところへしゃがみこむと、)
たてかけてある壁のすみのところへしゃがみこむと、
(ちいさなぴんせっとで、まるであわつぶぐらいのかつじを)
小さなピンセットで、まるで粟粒ぐらいの活字を
(つぎからつぎとひろいはじめました。)
つぎからつぎとひろいはじめました。
(あおいむねあてをしたひとがじょばんにのうしろをとおりながら、)
青い胸あてをした人がジョバンニのうしろを通りながら、
(「よう、むしめがねくん、おはよう。」といいますと、)
「よう、虫めがね君、お早う。」といいますと、
(ちかくのし、ごにんのひとたちがこえもたてず、こっちもむかずに)
近くの四、五人の人たちが声もたてず、こっちも向かずに
(つめたくわらいました。)
冷たく笑いました。
(じょばんにはなんべんもめをぬぐいながら)
ジョバンニはなんべんも目を拭いながら
(かつじをだんだんひろいました。)
活字をだんだんひろいました。
(ろくじがうってしばらくたったころ、)
六時がうってしばらくたったころ、
(かみきれとひきあわせてから、さっきのてーぶるのひとへもってきました。)
紙きれと引き合わせてから、さっきのテーブルの人へ持ってきました。
(そのひとはだまってそれをうけとってかすかにうなずきました。)
その人は黙ってそれを受け取ってかすかにうなずきました。
(じょばんにはおじぎをするととびらをあけて)
ジョバンニはおじぎをすると扉をあけて
(さっきのけいさんだいのところにきました。)
さっきの計算台のところにきました。
(するとさっきのしろふくをきたひとが)
するとさっきの白服を着た人が
(やっぱりだまってちいさなぎんかをひとつじょばんににわたしました。)
やっぱりだまって小さな銀貨を一つジョバンニに渡しました。
(じょばんにはにわかにかおいろがよくなって、いせいよくおじぎをすると、)
ジョバンニはにわかに顔色がよくなって、威勢よくおじぎをすると、
など
(だいのしたにおいたかばんをもって、おもてへとびだしました。)
台の下に置いた鞄をもって、おもてへ飛びだしました。
(それからげんきよくくちぶえをふきながら)
それから元気よく口笛をふきながら
(ぱんやへよってぱんのかたまりをひとつとかくざとうをひとふくろかいますと)
パン屋へ寄ってパンの塊を一つと角砂糖を一袋買いますと
(いちもくさんにはしりだしました。)
一目散に走りだしました。