銀河鉄道の夜 6
三、家 (1/2)
宮沢賢治 作
宮沢賢治 作
「お母さん。いま帰ったよ。ぐあい悪くなかったの。」
ジョバンニは靴をぬぎながらいいました。
ジョバンニは靴をぬぎながらいいました。
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問題文
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(さん、いえ)
三、家
(じょばんにがいきおいよくかえってきたのは、あるうらまちのちいさないえでした。)
ジョバンニが勢いよく帰ってきたのは、ある裏町の小さな家でした。
(そのみっつならんだいりぐちのいちばんひだりがわには、)
その三つならんだ入口の一番左側には、
(あきばこにむらさきいろのけーるやあすぱらがすがうえてあって、)
空箱に紫いろのケールやアスパラガスが植えてあって、
(ちいさなふたつのまどにはひおいがおりたままになっていました。)
小さな二つの窓には日覆いが下りたままになっていました。
(「おかあさん。いまかえったよ。ぐあいわるくなかったの。」)
「お母さん。いま帰ったよ。ぐあい悪くなかったの。」
(じょばんにはくつをぬぎながらいいました。)
ジョバンニは靴をぬぎながらいいました。
(「ああ、じょばんに、おしごとがひどかったろう。)
「ああ、ジョバンニ、お仕事がひどかったろう。
(きょうはすずしくてね。わたしはずうっとぐあいがいいよ。」)
今日は涼しくてね。わたしはずうっとぐあいがいいよ。」
(じょばんにはげんかんをあがっていきますと、)
ジョバンニは玄関を上がって行きますと、
(じょばんにのおかあさんがすぐいりぐちのへやに)
ジョバンニのお母さんがすぐ入口の室(へや)に
(しろいきれをかぶってやすんでいたのでした。)
白いきれを被って寝んでいたのでした。
(じょばんにはまどをあけました。)
ジョバンニは窓をあけました。
(「おかあさん。きょうはかくざとうをかってきたよ。ぎゅうにゅうにいれてあげようとおもって。」)
「お母さん。今日は角砂糖を買ってきたよ。牛乳に入れてあげようと思って。」
(「ああ、おまえさきにおあがり。あたしはまだほしくないんだから。」)
「ああ、おまえさきにおあがり。あたしはまだほしくないんだから。」
(「おかあさん。ねえさんはいつかえったの。」)
「おかあさん。姉さんはいつかえったの。」
(「ああさんじころかえったよ。みんなそこらをしてくれてね。」)
「ああ三時ころ帰ったよ。みんなそこらをしてくれてね。」
(「おかあさんのぎゅうにゅうはきていないんだろうか。」)
「お母さんの牛乳はきていないんだろうか。」
(「こなかったろうかねえ。」)
「こなかったろうかねえ。」
(「ぼくいってとってこよう。」)
「ぼく行ってとってこよう。」
など
(「ああ、あたしはゆっくりでいいんだから、おまえさきにおあがり、)
「ああ、あたしはゆっくりでいいんだから、おまえさきにおあがり、
(ねえさんがね、とまとでなにかこしらえてそこへおいていったよ。」)
姉さんがね、トマトで何かこしらえてそこへ置いていったよ。」
(「ではぼくたべよう。」)
「ではぼくたべよう。」
(じょばんにはまどのところからとまとのさらをとって)
ジョバンニは窓のところからトマトの皿をとって
(ぱんといっしょにしばらくむしゃむしゃたべました。)
パンといっしょにしばらくむしゃむしゃたべました。
(「ねえおかあさん。ぼくおとうさんはきっとまもなくかえってくるとおもうよ。」)
「ねえお母さん。ぼくお父さんはきっと間もなく帰ってくると思うよ。」
(「あああたしもそうおもう。けれどもおまえはどうしてそうおもうの。」)
「あああたしもそう思う。けれどもおまえはどうしてそう思うの。」
(「だってけさのしんぶんにことしはきたのほうのりょうは)
「だって今朝の新聞に今年は北の方の漁は
(たいへんよかったとかいてあったよ。」)
たいへんよかったと書いてあったよ。」
(「ああだけどねえ、おとうさんはりょうへはでていないかもしれない。」)
「ああだけどねえ、お父さんは漁へは出ていないかもしれない。」
(「きっとでているよ。おとうさんがかんごくへはいるような)
「きっと出ているよ。お父さんが監獄へ入るような
(そんなわるいことをしたはずがないんだ。)
そんな悪いことをしたはずがないんだ。
(このまえおとうさんがもってきてがっこうへきぞうした)
この前お父さんが持ってきて学校へ寄贈した
(おおきなかにのこうらだの、となかいのつのだの)
大きなカニの甲らだの、トナカイの角だの
(いまだってみんなひょうほんしつにあるんだ。)
今だってみんな標本室にあるんだ。
(ろくねんせいなんかじゅぎょうのとき、せんせいがかわるがわるきょうしつへもっていくよ。)
六年生なんか授業のとき、先生が代るがわる教室へ持って行くよ。
(おととししゅうがくりょこうで・・・」)
一昨年修学旅行で・・・」