銀河鉄道の夜 18
宮沢賢治 作
前からもうしろからも声が起こりました。ふりかえって見ると、車室の中の旅人たちは、みなまっすぐに着物のひだをたれ、黒いバイブルを胸にあてたり、水晶の数珠をかけたり、どの人もつつましく指を組み合わせて、そっちに祈っているのでした。
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問題文
(「はれるや、はれるや。」)
「ハレルヤ、ハレルヤ。」
(まえからもうしろからもこえがおこりました。)
前からもうしろからも声が起こりました。
(ふりかえってみると、しゃしつのなかのたびびとたちは、)
ふりかえって見ると、車室の中の旅人たちは、
(みなまっすぐにきもののひだをたれ、)
みなまっすぐにきもののひだをたれ、
(くろいばいぶるをむねにあてたり、すいしょうのじゅずをかけたり、)
黒いバイブルを胸にあてたり、水晶の数珠をかけたり、
(どのひともつつましくゆびをくみあわせて、)
どの人もつつましく指を組み合わせて、
(そっちにいのっているのでした。)
そっちに祈っているのでした。
(おもわずふたりもまっすぐにたちあがりました。)
思わずふたりもまっすぐに立ちあがりました。
(かむぱねるらのほおは、まるでじゅくしたりんごのあかしのように)
カムパネルラの頬は、まるで熟したりんごのあかしのように
(うつくしくかがやいてみえました。)
うつくしくかがやいて見えました。
(そしてしまとじゅうじかとは、だんだんうしろのほうへうつっていきました。)
そして島と十字架とは、だんだんうしろの方へうつって行きました。
(むこうぎしも、あおじろくぽうっとひかってけむり、)
向こう岸も、青じろくぽうっと光ってけむり、
(ときどき、やっぱりすすきがかぜにひるがえるらしく、)
ときどき、やっぱりすすきが風にひるがえるらしく、
(さっとそのぎんいろがけむって、いきでもかけたようにみえ、)
さっとその銀いろがけむって、息でもかけたように見え、
(また、たくさんのりんどうのはなが、)
また、たくさんのりんどうの花が、
(くさをかくれたりでたりするのは、)
草をかくれたり出たりするのは、
(やさしいきつねびのようにおもわれました。)
やさしい狐火のように思われました。
(それもほんのちょっとのあいだ、)
それもほんのちょっとの間、
(かわときしゃとのあいだは、すすきのれつでさえぎられ、)
川と汽車との間は、すすきの列でさえぎられ、
(はくちょうのしまは、にどばかり、うしろのほうにみえましたが、)
白鳥の島は、二度ばかり、うしろの方に見えましたが、
(じきもうすっととおくちいさく、えのようになってしまい、)
じきもうすっと遠く小さく、絵のようになってしまい、
(またすすきがざわざわなって、)
またすすきがざわざわ鳴って、
(とうとうすっかりみえなくなってしまいました。)
とうとうすっかり見えなくなってしまいました。
(じょばんにのうしろには、いつからのっていたのか、)
ジョバンニのうしろには、いつから乗っていたのか、
(せいのたかい、くろいかつぎをしたかとりっくふうのあまさんが、)
せいの高い、黒いかつぎをしたカトリックふうの尼さんが、
(まんまるなみどりのひとみを、じっとまっすぐにおとして、)
まんまるな緑の瞳を、じっとまっすぐに落として、
(まだなにかことばかこえかが、そっちからつたわってくるのを、)
まだ何かことばか声かが、そっちから伝わってくるのを、
(つつしんできいているというようにみえました。)
つつしんで聞いているというように見えました。
(たびびとたちはしずかにせきにもどり、)
旅人たちはしずかに席に戻り、
(ふたりもむねいっぱいのかなしみににたあたらしいきもちを、)
ふたりも胸いっぱいのかなしみに似た新しい気持ちを、
(なにげなくちがったことばで、そっとはなしあったのです。)
何気なくちがった語(ことば)で、そっと話し合ったのです。