銀河鉄道の夜 26
八、鳥をとる人 (4/6)
宮沢賢治 作
宮沢賢治 作
「いや、商売ものをもらっちゃすみませんな。」
「いいえ、どういたしまして。どうです、今年の渡り鳥の景気は。」
「いいえ、どういたしまして。どうです、今年の渡り鳥の景気は。」
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問題文
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(じょばんには、もっとたべたかったのですけれども、)
ジョバンニは、もっとたべたかったのですけれども、
(「ええ、ありがとう。」)
「ええ、ありがとう。」
(といってえんりょしましたら、)
といって遠慮しましたら、
(こんどはむこうのせきの、かぎをもったひとにだしました。)
こんどは向こうの席の、鍵をもった人に出しました。
(「いや、しょうばいものをもらっちゃすみませんな。」)
「いや、商売ものをもらっちゃすみませんな。」
(そのひとは、ぼうしをとりました。)
その人は、帽子をとりました。
(「いいえ、どういたしまして。どうです、ことしのわたりどりのけいきは。」)
「いいえ、どういたしまして。どうです、今年の渡り鳥の景気は。」
(「いや、すてきなもんですよ。)
「いや、すてきなもんですよ。
(あっちからもこっちからも、でんわでこしょうがきましたが、)
あっちからもこっちからも、電話で故障がきましたが、
(なあに、こっちがやるんじゃなくて、)
なあに、こっちがやるんじゃなくて、
(わたりどりどもが、まっくろにかたまって、)
渡り鳥どもが、まっ黒にかたまって、
(あかしのまえをとおるのですからしかたありませんや。)
あかしの前を通るのですからしかたありませんや。
(わたしぁ、べらぼうめ、そんなくじょうは、)
わたしぁ、べらぼうめ、そんな苦情は、
(おれのところへもってきたってしかたがねえや、)
おれのところへ持ってきたってしかたがねえや、
(ばさばさのまんとをきてあしとくちとのとほうもなくほそいたいしょうへやれって、)
ばさばさのマントを着て脚と口との途方もなく細い大将へやれって、
(こういってやりましたがね、はっは。」)
こういってやりましたがね、はっは。」
(すすきがなくなったために、むこうののはらから、)
すすきがなくなったために、向こうの野原から、
(ぱっとあかりがさしてきました。)
ぱっとあかりが射してきました。
(「さぎのほうはなぜてかずなんですか。」)
「さぎの方はなぜ手数なんですか。」
(かむぱねるらは、さっきから、きこうとおもっていたのです。)
カムパネルラは、さっきから、きこうと思っていたのです。
など
(「それはね、さぎをたべるには、」)
「それはね、さぎを食べるには、」
(とりとりは、こっちにむきなおりました。)
鳥とりは、こっちに向き直りました。
(「あまのがわのみずあかりに、とおかもつるしておくかね、)
「天の川の水あかりに、十日もつるしておくかね、
(そうでなきゃ、すなにさん、よっかうずめなきゃいけないんだ。)
そうでなきゃ、砂に三、四日うずめなきゃいけないんだ。
(そうすると、すいぎんがみんなじょうはつして、たべられるようになるよ。」)
そうすると、水銀がみんな蒸発して、食べられるようになるよ。」
(「こいつはとりじゃない。ただのおかしでしょう。」)
「こいつは鳥じゃない。ただのお菓子でしょう。」
(やっぱりおなじことをかんがえていたとみえて、)
やっぱりおなじことを考えていたとみえて、
(かむぱねるらが、おもいきったというように、たずねました。)
カムパネルラが、思い切ったというように、たずねました。
(とりとりは、なにかたいへんあわてたふうで、)
鳥とりは、何かたいへんあわてたふうで、
(「そうそう、ここでおりなきゃ。」)
「そうそう、ここで降りなきゃ。」
(といいながら、たってにもつをとったとおもうと、もうみえなくなっていました。)
といいながら、立って荷物をとったと思うと、もう見えなくなっていました。