カラマーゾフの兄弟2

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1 りく 5854 A+ 6.0 97.6% 400.9 2406 59 39 2024/10/27

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問題文

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(いまからそれがみえすいているからである。さくしゃにとっては、たしかにちゅうもく)

今からそれが見え透いているからである。作者にとっては、確かに注目

(すべきじんぶつなのであるが、はたしてこれをどくしゃにりっしょうすることができる)

すべき人物なのであるが、はたしてこれを読者に立証することができる

(だろうか、)

だろうか、

(それがはなはだおぼつかない。)

それがはなはだおぼつかない。

(もんだいは、かれもおそらくかつどうかなのであろうが、)

問題は、彼もおそらく活動家なのであろうが、

(それもきわめてあいまいあいまいで、つかみどころのないかつどうかだというと)

それもきわめて曖昧あいまいで、つかみどころのない活動家だというと

(ころにある。もっとも、いまのようなじせいに、にんげんにめいりょうさをようきゅうすると)

ころにある。もっとも、今のような時世に、人間に明瞭さを要求すると

(したら、それこそようきゅうするほうがおかしいのかもしれぬ。ただひとつ、ど)

したら、それこそ要求するほうがおかしいのかもしれぬ。ただ一つ、ど

(うやらかくじつらしいのは、このおとこがいっぷうかわった、むしろきじんにちかいじんぶつ)

うやら確実らしいのは、この男が一風変わった、むしろ奇人に近い人物

(だということである。しかし、へんくつとかきへきとかいうものは、ここのとく)

だということである。しかし、偏屈とか奇癖とかいうものは、個々の特

(しゅせいをとういつして、ぜんぱんてきならんざつさのうちに、あるふへんてきないぎをはっけんす)

殊性を統一して、全般的な乱雑さのうちに、ある普遍的な意義を発見す

(るのうりょくを、あたえるというよりは、むしろきずつけるばあいがおおい。きじんとい)

る能力を、与えるというよりは、むしろ傷つける場合が多い。奇人とい

(うものは、たいていのばあいに、とくしゅでかくべつなものである。そうではない)

うものは、たいていの場合に、特殊で格別なものである。そうではない

(だろうか?)

だろうか?

(そこで、もしもどくしゃがこのさいごのしゅちょうにさんせいなさらずに、「そうでは)

そこで、もしも読者がこの最後の主張に賛成なさらずに、『そうでは

(ない」とか、「かならずしもそうではない」とこたえられるとすれば、じぶんは)

ない』とか、『必ずしもそうではない』と答えられるとすれば、自分は

(むしろわがしゅじんこうあれくせいふょーどろヴぃっちのかちについてだいい)

むしろわが主人公アレクセイ・フョードロヴィッチの価値について大い

(にいをつようするしだいである。というのは、きじんは「かならずしも」とくしゅなも)

に意を強うする次第である。というのは、奇人は『必ずしも』特殊なも

(のでも、かくべつなものでもないばかりか、かえって、どうかするとかれがかん)

のでも、格別なものでもないばかりか、かえって、どうかすると彼が完

(ぜんむけつのしんずいをうちにもっているかもしれず、そのほかのどうじだいのひとたちは)

全無欠の心髄を内にもっているかもしれず、その他の同時代の人たちは

など

(ことごとく、なにかのかぜのふきまわしで、いちじてきにこのきじんからひき)

ことごとく、何かの風の吹きまわしで、一時的にこの奇人から引き

(はなされたのだ、といったようなばあいがよくあるからである・・・・・・。)

離されたのだ、といったような場合がよくあるからである。

(それにしても、じぶんは、こんな、じつにあじけない、くもをつかむようなせつ)

それにしても、自分は、こんな、実に味気ない、雲をつかむような説

(めいにうきみをやつすことなく、まえこうじょうなどはいっさいぬきにして、あっ)

明にうき身をやつすことなく、前口上などはいっさい抜きにして、あっ

(さりとほんぶんにとりかかってもよかったであろう。おきにさえめせば、つう)

さりと本文に取りかかってもよかったであろう。お気にさえ召せば、通

(よみしていただけるはずである。ところが、こまったことには、でんきはひとつ)

読していただけるはずである。ところが、困ったことには、伝記は一つ

(なのに、しょうせつはふたつになっている。しかも、じゅうようなしょうせつはだいにぶになっ)

なのに、小説は二つになっている。しかも、重要な小説は第二部になっ

(ている--これはわがしゅじんこうのすでにげんだいにおけるかつどうである。すなわ)

ているこれはわが主人公のすでに現代における活動である。すなわ

(ち、げんにうつりつつあるげんざいのいまのかつどうなのである。だいいちのしょうせつはいまをさ)

ち、現に移りつつある現在の今の活動なのである。第一の小説は今を去

(るじゅうさんねんのまえにあったことで、これはほとんどしょうせつろまんなどというも)

る十三年の前にあったことで、これはほとんど小説ロマンなどというも

(のではなくて、たんにわがしゅじんこうのせいねんじだいのしょきのいっせつないっせつなの)

のではなくて、単にわが主人公の青年時代の初期の一刹那いっせつなの

(ことにすぎない。そうかといって、このはじめのしょうせつをぬきにすることは)

ことにすぎない。そうかといって、この初めの小説を抜きにすることは

(できない。そんなことをすれば、だいにのしょうせつのなかでいろんなことがわか)

できない。そんなことをすれば、第二の小説の中でいろんなことがわか

(らなくなってしまうからである。しかも、そうすればじぶんのさいしょのこんわく)

らなくなってしまうからである。しかも、そうすれば自分の最初の困惑

(はいっそうふんきゅうしてくる。すでにこのでんきしゃたるじぶんじしんからして、こ)

はいっそう紛糾してくる。すでにこの伝記者たる自分自身からして、こ

(んなにひかえめで、つかみどころのないしゅじんこうには、ひとつのしょうせつでもよけ)

んなに控え目で、つかみどころのない主人公には、一つの小説でもよけ

(いなくらいだろうとかんがえているのに、わざわざふたつにしたら、いったい)

いなくらいだろうと考えているのに、わざわざ二つにしたら、いったい

(どんなことになるであろう。それにまた、じぶんのこのふそんふそんなやり)

どんなことになるであろう。それにまた、自分のこの不遜ふそんなやり

(くちを、どうしてせつめいしたらよいであろう)

口を、どうして説明したらよいであろう?

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