カラマーゾフの兄弟6

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1 りく 5608 A 5.7 96.8% 901.5 5225 169 82 2024/11/06

関連タイピング

問題文

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(2 ちょうなんをおいたてる)

二 長男を追い立てる

(いうまでもなく、かようなにんげんがちちおやとして、またよういくしゃとして、ど)

いうまでもなく、かような人間が父親として、また養育者として、ど

(んなふうであったかは、よういにそうぞうがつくであろう。ちちおやとしてのかれは、)

んな風であったかは、容易に想像がつくであろう。父親としての彼は、

(とうぜんやりそうなことをしたまでであった。つまり、あでらいーだいわ)

当然やりそうなことをしたまでであった。つまり、アデライーダ・イワ

(ーのヴなとのあいだにうまれたじぶんのこどもを、まるきりみすててしまっ)

ーノヴナとのあいだに生まれた自分の子供を、まるきり見すててしまっ

(たのである。しかし、それはこどもにたいするあくいによるものでもなければ)

たのである。しかし、それは子供に対する悪意によるものでもなければ

(、はずかしめられたおっととしてのかんじょうによるのでもなかった。ただたんに)

、はずかしめられた良人としての感情によるのでもなかった。ただ単に

(こどものことをまったくわすれはてていたからであった。かれがあうひとごとになみだを)

子供のことを全く忘れ果てていたからであった。彼が会う人ごとに涙を

(ながし、なきごとをならべてうるさいおもいをさせたり、じぶんのいえをらんぎょうのそうくつ)

流し、泣き言を並べてうるさい思いをさせたり、自分の家を乱行の巣窟

(そうくつにしたりしているうちに、みっつになるみーちゃのせわをひきうけ)

そうくつにしたりしているうちに、三つになるミーチャの世話を引き受

(けたのは、このいえのちゅうぼくぐりごりいであった。もしもそのころ、このおとこ)

けたのは、この家の忠僕グリゴリイであった。もしもそのころ、この男

(がめんどうをみてやらなかったなら、こどもにしゃつひとつかえてやるものも)

がめんどうを見てやらなかったなら、子供にシャツ一つ替えてやる者も

(なかったであろう。それに、こどものははかたのえんじゃも、はじめのうちこのこの)

なかったであろう。それに、子供の母方の縁者も、初めのうちこの子の

(ことはわすれていたらしかった。そふにあたるみうーそふし、つまりあで)

ことは忘れていたらしかった。祖父にあたるミウーソフ氏、つまりアデ

(らいーだいわーのヴなのげんざいのちちは、もうそのころはあのよのひととな)

ライーダ・イワーノヴナの現在の父は、もうそのころはあの世の人とな

(って、そのみぼうじん、すなわち、みーちゃのそぼも、もすくわへうつって、)

って、その未亡人、すなわち、ミーチャの祖母も、モスクワへ移って、

(そこでおもいびょうきにかかっており、しまいきょうだいというしまいはみんなよ)

そこで重い病気にかかっており、姉妹きょうだいという姉妹はみんなよ

(そへよめとついでしまっていたので、みーちゃはまる1ねんというもの、ぐ)

そへ嫁とついでしまっていたので、ミーチャはまる一年というもの、グ

(りごりいのもとで、げなんこやにくらさなければならなかった。)

リゴリイのもとで、下男小屋に暮らさなければならなかった。

(それにしても、たといちちおやがみーちゃのことをおもいだしたとしても()

それにしても、たとい父親がミーチャのことを思い出したとしても(

など

(じじつ、かれとても、このこのそんざいをしらずにいるわけにはいかなかった))

事実、彼とても、この子の存在を知らずにいるわけにはいかなかった)

(、じぶんで、またもとのこやへおいやってしまったことであろう。なにし)

、自分で、またもとの小屋へ追いやってしまったことであろう。なにし

(ろ、こどもはやはりほうとうほうとうのじゃまになるからである。ところが、たまたま)

ろ、子供はやはり放蕩ほうとうの邪魔になるからである。ところが、偶

(しかにも、あでらいーだいわーのヴなのいとこいとこで、ぴょーとるあ)

然にも、アデライーダ・イワーノヴナの従兄いとこで、ピョートル・ア

(れくさんどろヴぃっちみうーそふというひとがぱりからかえってきた。こ)

レクサンドロヴィッチ・ミウーソフという人がパリから帰って来た。こ

(のひとは、そののちながねん、ずっとがいこくにくらしたほどで、そのころはまだ)

の人は、そののち長年、ずっと外国に暮らしたほどで、そのころはまだ

(かなりにわかかったが、みうーそふけのひとたちのなかでもいしょくがあり、とかい)

かなりに若かったが、ミウーソフ家の人たちの中でも異色があり、都会

(てきで、がいこくてきなきょうようがあり、のちにはいっしょうがい、よーろっぱじんになりすま)

的で、外国的な教養があり、のちには一生涯、ヨーロッパ人になりすま

(したばかりか、ばんねんには4、50ねんだいによくあったじゆうしゅぎしゃのひとりと)

したばかりか、晩年には四、五十年代によくあった自由主義者の一人と

(なったほどであった。そのはなやかなりしころをつうじて、かれはどうじだいにお)

なったほどであった。その華やかなりしころを通じて、彼は同時代にお

(けるないがいのもっともしんぽてきな、おおくのじゆうしゅぎしゃたちとこうしょうがあり、ぷるー)

ける内外の最も進歩的な、多くの自由主義者たちと交渉があり、プルー

(どんやばくーにんをもこじんてきにしっており、ゆうれきじだいのおわりごろには)

ドンやバクーニンをも個人的に知っており、遊歴時代の終わりごろには

(、48ねんのぱりきさらぎかくめいの3にちかんのことをおもいだして、じぶんもしがいそ)

、四十八年のパリ二月革命の三日間のことを思い出して、自分も市街阻

(たゆるばりけーどせんにさんかしたひとりであるといわぬばかりにほのめかしなが)

絶バリケード戦に参加した一人であると言わぬばかりにほのめかしなが

(らものがたるのがだいすきであった。これこそかれのせいねんじだいにおけるもっともたのし)

ら物語るのが大好きであった。これこそ彼の青年時代における最も楽し

(いおもいでのひとつであった。)

い思い出の一つであった。

(かれはむかしのひょうじゅんでいうと、せんにんほどののうどにそうとうするどくりつしたざいさんをも)

彼は昔の標準でいうと、千人ほどの農奴に相当する独立した財産をも

(っていた。かれのりっぱなりょうちはこのまちをではずれたところにあって、ここ)

っていた。彼の立派な領地はこの町を出はずれたところにあって、ここ

(のゆうめいなしゅうどういんのじしょとさかいをせっしていた。ぴょーとるあれくさんどろ)

の有名な修道院の地所と境を接していた。ピョートル・アレクサンドロ

(ヴぃっちはまだほんのわかいじぶんにいさんをそうぞくするやいなや、よくはわか)

ヴィッチはまだほんの若い時分に遺産を相続するやいなや、よくはわか

(らないが、なにかかわのぎょぎょうけんとか、もりのばっさいけんとかのことで、このしゅうどういん)

らないが、何か川の漁業権とか、森の伐採権とかのことで、この修道院

(をあいてにはてしのないそしょうをおこしたものであった。かれは「そうりょ」たち)

を相手にはてしのない訴訟を起こしたものであった。彼は『僧侶』たち

(をあいてどってそしょうをおこすのを、こうみんとしてまたきょうようじんとしてのぎむだ)

を相手どって訴訟を起こすのを、公民としてまた教養人としての義務だ

(とこころえていた。ところで、かれはあでらいーだいわーのヴなのことは、)

と心得ていた。ところで、彼はアデライーダ・イワーノヴナのことは、

(もちろんいまもなおきおくにとどめ、かつてはこころをひかれたこともあったが)

もちろん今もなお記憶にとどめ、かつては心を引かれたこともあったが

(、このおんなのみのうえをすっかりきかされ、またみーちゃというこどもののこ)

、この女の身の上をすっかり聞かされ、またミーチャという子供ののこ

(っていることをしるとふょーどるぱーヴろヴぃっちにたいするせいねんらし)

っていることを知るとフョードル・パーヴロヴィッチに対する青年らし

(いぎふんとぶべつぶべつをかんじながらも、このじけんにかかわりあうこととな)

い義憤と侮蔑ぶべつを感じながらも、この事件にかかわりあうこととな

(ったのである。そこで、はじめてふょーどるぱーヴろヴぃっちなるもの)

ったのである。そこで、はじめてフョードル・パーヴロヴィッチなる者

(をしった。かれはいきなり、こどものよういくをひきうけたいともうしいでた。かれ)

を知った。彼はいきなり、子供の養育を引き受けたいと申しいでた。彼

(がそのあと、ふょーどるぱーヴろヴぃっちのとくちょうをしめすこうしりょうだといっ)

がその後、フョードル・パーヴロヴィッチの特徴を示す好資料だといっ

(て、ながいあいだかたりぐさとしたところによれば、かれがみーちゃのことを)

て、長いあいだ語りぐさとしたところによれば、彼がミーチャのことを

(はなしだしたとき、あいてはしばらくのあいだ、いったいどんなこどものこと)

話しだしたとき、相手はしばらくのあいだ、いったいどんな子供のこと

(がわだいにのぼっているのか、さっぱりがてんがいかぬといったかぜで、じぶん)

が話題にのぼっているのか、さっぱり合点がいかぬといった風で、自分

(のいえのどこかにそんなちいさなむすこがいたのかと、びっくりしたようなかお)

の家のどこかにそんな小さな息子がいたのかと、びっくりしたような顔

(つきをしてみせたとのことであった。たとい、ぴょーとるあれくさん)

つきをしてみせたとのことであった。たとい、ピョートル・アレクサン

(どろヴぃっちのはなしにこちょうがあるにしても、しかもなおしんじつらしいなにもの)

ドロヴィッチの話に誇張があるにしても、しかもなお真実らしい何もの

(かがあったにそういない。しかし、じじつにおいて、ふょーどるぱーヴろ)

かがあったに相違ない。しかし、事実において、フョードル・パーヴロ

(ヴぃっちはいっしょうがい、なにかだしぬけにひとをおどろかせるようなしばいをうってみ)

ヴィッチは一生涯、何かだしぬけに人を驚かせるような芝居を打ってみ

(せるのがだいすきで、それも、ときとしては、べつになんのひつようもないどころ)

せるのが大好きで、それも、時としては、別になんの必要もないどころ

(か、たとえば、いまのばあいのように、みすみすじぶんのそんになることさえい)

か、たとえば、今の場合のように、みすみす自分の損になることさえい

(とわないのであった。もっとも、こうしたけいこうは、ひとりふょーどる)

とわないのであった。もっとも、こうした傾向は、ひとりフョードル・

(ぱーヴろヴぃっちばかりにかぎらず、おおくのひと、ときにはかなりにそうめいな)

パーヴロヴィッチばかりに限らず、多くの人、ときにはかなりに聡明な

(じんにさえも、ありがちなものである。ぴょーとるあれくさんどろヴぃ)

人にさえも、ありがちなものである。ピョートル・アレクサンドロヴィ

(っちはねっしんにことをはこんで、ふょーどるぱーヴろヴぃっちとともにこどもの)

ッチは熱心に事を運んで、フョードル・パーヴロヴィッチと共に子供の

(こうけんにんにまでなってやった。というのは、やはりははおやがなくなってもしょう)

後見人にまでなってやった。というのは、やはり母親が亡くなっても小

(さなもちむらや、かさくやじしょなどがのこっていたからである。こうしてみー)

さな持ち村や、家作や地所などが残っていたからである。こうしてミー

(ちゃはこのまたおじおじのところにひきとられたが、このひとはじぶんのかぞく)

チャはこの又叔父おじのところに引き取られたが、この人は自分の家族

(というものがなく、りょうちからあがるきんのうけとりかたをこうこのうれいのない)

というものがなく、領地からあがる金の受け取り方を後顧の憂いのない

(ようにしょりすると、すぐにまた、えいとうりゅうのためにおおいそぎでぱりへたった)

ように処理すると、すぐにまた、永逗留のために大急ぎでパリへ立った

(ので、こどもは、このひとのまたおばおばのひとりで、もすくわにすんでいるあ)

ので、子供は、この人の又叔母おばの一人で、モスクワに住んでいるあ

(るふじんのところにあずけられた。ところが、ぱりにすみなれて、みうーそ)

る夫人のところに預けられた。ところが、パリに住み馴れて、ミウーソ

(ふはこのこどものことをわすれてしまい、わけても、かれにおもいもよらなかっ)

フはこの子供のことを忘れてしまい、わけても、彼に思いもよらなかっ

(たほどのつよいかんめいをあたえて、もはやいっしょうがいわすれることができなかった、)

たほどの強い感銘を与えて、もはや一生涯忘れることができなかった、

(あの2がつかくめいのおこったときにはすっかりわすれはててしまった。もすくわ)

あの二月革命の起こった時にはすっかり忘れ果ててしまった。モスクワ

(のふじんも、そのうちにあのよのひととなって、みーちゃはよそへかたづい)

の夫人も、そのうちにあの世の人となって、ミーチャはよそへかたづい

(ているふじんのむすめのところへうつった。やがてのちに、かれはもういちど、4ど)

ている夫人の娘のところへ移った。やがてのちに、彼はもう一度、四度

(めにじぶんのすをかえたらしかった。が、いまはそんなことにまではふれな)

目に自分の巣を変えたらしかった。が、今はそんなことにまでは触れな

(いでおくこととしよう。いずれ、このふょーどるぱーヴろヴぃっちの)

いでおくこととしよう。いずれ、このフョードル・パーヴロヴィッチの

(ちょうなんのことは、まだいろいろとものがたらなくてはならないから、いまはただ)

長男のことは、まだいろいろと物語らなくてはならないから、今はただ

(このしょうせつをはじめるのにかくことのできないきわめてきんようなしょうそくだけにと)

この小説を始めるのに欠くことのできないきわめて緊要な消息だけにと

(どめておこう。)

どめておこう。

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