緋のエチュード 4
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問題文
(かれがへいきんしてせっせいをたもち、みのまわりをせいけつにしていなかったら、)
彼が平均して節制を保ち、身の回りを清潔にしていなかったら、
(やくぶつちゅうどくをうたがったかもしれない。)
薬物中毒を疑ったかもしれない。
(すうしゅうかんがすぎると、かれのせいかくやじんせいもくひょうにたいするこうきしんが、)
数週間が過ぎると、彼の性格や人生目標に対する好奇心が、
(だんだんおおきくなってきた。かれのたいかくとがいかんは、)
だんだん大きくなってきた。彼の体格と外観は、
(どれほどたにんにきょうみのないにんげんでもいんしょうにのこるだろう。)
どれほど他人に興味のない人間でも印象に残るだろう。
(しんちょうは183せんちめーとるきょうだが、きょくたんにやせているので、)
身長は183センチメートル強だが、極端にやせているので、
(ずっとたかくみえた。さっきかいたむきりょくなきかんいがい、)
ずっと高く見えた。さっき書いた無気力な期間以外、
(めつきはするどくいぬくようだった。)
目つきは鋭く射抜くようだった。
(そしてほそいたかのようなはながあるために、)
そして細いタカのような鼻があるために、
(ひょうじょうぜんたいにはきびんさとけつだんりょくのふんいきがある。)
表情全体には機敏さと決断力の雰囲気がある。
(あごはつきでてかくばっていたが、これもけつだんりょくがあるおとこのあかしだ。)
アゴは突き出て角張っていたが、これも決断力がある男のあかしだ。
(てはいつもいんくのしみやかがくやくひんでよごれていたが、)
手はいつもインクの染みや化学薬品で汚れていたが、
(ゆびさきはひじょうにせんさいだった。)
指先は非常に繊細だった。
(かれが、こわれやすいかがくきぐをあつかうばめんをじっとみているとき、)
彼が、こわれやすい化学器具を扱う場面をじっと見ているとき、
(よくそのきようさをめにするきかいがあった。)
よくその器用さを目にする機会があった。
(わたしがこのじんぶつにどれほどこうきしんをしげきされたか、そして、)
私がこの人物にどれほど好奇心を刺激されたか、そして、
(じぶんのことをなにもかたろうとしないかれのくちを、)
自分のことを何も語ろうとしない彼の口を、
(どれほどしつこくこじあけようとしたか、それをこくはくすれば、)
どれほどしつこくこじ開けようとしたか、それを告白すれば、
(どくしゃはわたしをてのつけられないおせっかいやきとみなすかもしれない。)
読者は私を手のつけられないお節介焼きと見なすかもしれない。
(しかしひょうけつをいいわたすまえに、わたしのせいかつがいかにむもくてきだったか、)
しかし評決を言い渡す前に、私の生活がいかに無目的だったか、
(そしてねっちゅうするものがどれほどすくなかったかをおもいだしてほしい。)
そして熱中するものがどれほど少なかったかを思い出してほしい。
(わたしのけんこうじょうたいでは、てんこうがとくにおだやかなばあいいがい、)
私の健康状態では、天候がとくにおだやかな場合以外、
(むりながいしゅつはできなかった。そのうえ、たずねてくるゆうじんもなく、)
無理な外出はできなかった。その上、尋ねてくる友人もなく、
(にちじょうせいかつはたんちょうそのものだった。こんなじょうきょうにおかれていたので、)
日常生活は単調そのものだった。こんな状況に置かれていたので、
(このどうきょにんがかもしだすおもしろそうななぞをこころからかんげいし、)
この同居人がかもしだす面白そうな謎を心から歓迎し、
(それをかいどくしようとひじょうにながいじかんをかけた。)
それを解読しようと非常に長い時間をかけた。
(かれはいがくけんきゅうしゃではなかった。めんとむかってきいてみたら、)
彼は医学研究者ではなかった。面と向かってきいてみたら、
(あっさりとすたんふぉーどのいったとおりだとみとめた。)
あっさりとスタンフォードの言ったとおりだと認めた。
(かれはがくいをとろうとしておらず、)
彼は学位をとろうとしておらず、
(それいがいのがっかいにかにゅうするためのけんきゅうもしていないようだった。)
それ以外の学会に加入するための研究もしていないようだった。
(しかしとくていのけんきゅうにかけるねついは、ひとなみはずれたものがあった。)
しかし特定の研究にかける熱意は、人並み外れたものがあった。
(どくとくのぶんやにおいては、ぼうだいなりょうのせいかくなちしきをもっていて、)
独特の分野においては、膨大な量の正確な知識を持っていて、
(そのかんさつがんはほんとうにおどろくべきものだった。いうまでもなく、)
その観察眼は本当に驚くべきものだった。言うまでもなく、
(そこまでしんけんにけんきゅうしたり、せいかくなじょうほうをみにつけたりするのは、)
そこまで真剣に研究したり、正確な情報を身につけたりするのは、
(なにかぐたいてきなもくひょうをもっているはずだ。)
何か具体的な目標を持っているはずだ。
(なんとなくほんをよんでいるだけのにんげんが、)
なんとなく本を読んでいるだけの人間が、
(めをみはるほどせいちながくしゅうせいかをあげるなど、まずありえない。)
目を見張るほど精緻な学習成果を上げるなど、まずありえない。
(どんなにんげんでも、さいぶにまできをくばるということは、)
どんな人間でも、細部にまで気を配るということは、
(とくべつなりゆうでそうしたいからにきまっている。)
特別な理由でそうしたいからに決まっている。
(かれはそのちしきとどうよう、むちにおいてもそこなしだった。)
彼はその知識と同様、無知においても底なしだった。
(げんだいぶんがく、てつがく、せいじにかんしては、ほとんどしらないようだった。)
現代文学、哲学、政治に関しては、ほとんど知らないようだった。
(とーますかーらいるについてげんきゅうしたとき、)
トーマス・カーライルについて言及したとき、
(かれはひじょうにそぼくにそれはだれでなにをしたおとこかときいてきた。)
彼は非常に素朴にそれは誰で何をした男かときいてきた。
(しかしなによりおどろいたのは、たまたま、)
しかし何より驚いたのは、たまたま、
(かれがこぺるにくすのちどうせつをしらず、)
彼がコペルニクスの地動説を知らず、
(たいようけいのこうせいもしらないとしったときだ。)
太陽系の構成も知らないと知ったときだ。
(このじゅうきゅうせいきのぶんめいじんのなかに、)
この十九世紀の文明人の中に、
(ちきゅうがたいようのまわりをまわっていることを)
地球が太陽のまわりを回っていることを
(しらないにんげんがいるなどというのは、あまりにもとほうもないはなしで、)
知らない人間がいるなどというのは、あまりにも途方もない話で、
(とてもしんじられなかった。)
とても信じられなかった。
(「おどろいているようだが」かれはわたしのあぜんとしたかおにわらいかけていった。)
「驚いているようだが」彼は私のあぜんとした顔に笑いかけて言った。
(「いま、ぼくはそれをしったが、ぜんりょくでわすれようとするつもりだ」)
「いま、僕はそれを知ったが、全力で忘れようとするつもりだ」
(「わすれる!」)
「忘れる!」
(「いいか」かれはせつめいしはじめた。)
「いいか」彼は説明しはじめた。
(「ぼくはにんげんのずのうは、げんりてきに)
「僕は人間の頭脳は、原理的に
(ちいさなからのやねうらべやのようなものだとみている。)
小さな空の屋根裏部屋のようなものだと見ている。
(そこにかぐをえらんでせっちしていかなければならないが、)
そこに家具を選んで設置していかなければならないが、
(てあたりしだいに、いろんながらくたをつめこむのは、おろかものだ。)
手当たり次第に、いろんながらくたを詰めこむのは、おろか者だ。
(さいしゅうてきに、じぶんにやくだつかもしれないちしきがおしだされる。)
最終的に、自分に役立つかもしれない知識が押し出される。
(よくても、ほかのじじつとごちゃまぜになり、)
よくても、ほかの事実とごちゃ混ぜになり、
(けっきょくちしきをとりだすのがたいへんになる。うでのいいしょくにんは、)
けっきょく知識を取り出すのが大変になる。腕のいい職人は、
(のうのやねうらべやにもちこむべきものをしんちょうにえらぶ。)
脳の屋根裏部屋に持ちこむべきものを慎重に選ぶ。
(しごとにやくだつどうぐだけをもちこむが、そのしゅるいはひじょうにほうふで、)
仕事に役立つ道具だけを持ち込むが、その種類は非常に豊富で、
(ほとんどかんぺきなじゅんじょにならべる。)
ほとんど完璧な順序に並べる。
(のうのへやがだんりょくせいのあるかべでできていて、)
脳の部屋が弾力性のある壁でできていて、
(ほんのわずかでもかくちょうできるとかんがえるのはまちがっている。)
ほんのわずかでも拡張できると考えるのは間違っている。
(ちしきをつめこむたびに、)
知識を詰めこむたびに、
(しっていたなにかをわすれるときがかならずやってくる。)
知っていた何かを忘れるときが必ずやってくる。
(ようするに、つかいみちのないじじつで、)
要するに、使い道のない事実で、
(ゆうようなじじつがおしだされないようにするのが、さいじゅうようかだいになるのだ」)
有用な事実が押し出されないようにするのが、最重要課題になるのだ」
(「しかし、たいようけいだぞ!」わたしははんろんした。)
「しかし、太陽系だぞ!」私は反論した。
(「それがぼくにとってなにになる?」かれはいらだってはなしをさえぎった。)
「それが僕にとって何になる?」彼はいらだって話をさえぎった。
(「きみはちきゅうがたいようのまわりをまわるといった。)
「君は地球が太陽のまわりを回ると言った。
(もしちきゅうがつきのまわりをまわっても、)
もし地球が月のまわりを回っても、
(それはぼくにもぼくのしごとにもなんのかわりもないことさ」)
それは僕にも僕の仕事にも何の変わりもないことさ」
(かれのしごととはなになのか、たずねようとしたが、かれのたいどには、)
彼の仕事とは何なのか、たずねようとしたが、彼の態度には、
(どことなく、それをきかれたくないかんじがした。)
どことなく、それをきかれたくない感じがした。
(しかし、このみじかいかいわをなんどもおもいだし、)
しかし、この短い会話を何度も思い出し、
(そこからかんがえてみようとどりょくした。)
そこから考えてみようと努力した。
(かれは、じぶんのもくてきにかんけいないちしきはいらないといった。)
彼は、自分の目的に関係ない知識はいらないと言った。
(ということは、かれがもっているちしきは、)
ということは、彼が持っている知識は、
(どれもかれにとってゆうようなものだろう。)
どれも彼にとって有用なものだろう。
(かれがとくにぬきんでたちしきをもっていることが、)
彼がとくに抜きんでた知識を持っていることが、
(あきらかになったぶんやを、わたしはこころのなかでれっきょしてみた。)
あきらかになった分野を、私は心の中で列挙してみた。
(ついには、えんぴつでそれをかいたこともある。)
ついには、鉛筆でそれを書いたこともある。
(いちらんをかきあげてよんでみたとき、ついにがわらいをしたものだ。)
一覧を書き上げて読んでみたとき、つい苦笑いをしたものだ。
(りすとはこのようなものだった。)
リストはこのようなものだった。
(しゃーろっくほーむず かれのちしきはんい)
シャーロックホームズ 彼の知識範囲
(1.ぶんがくのちしき かいむ。)
1.文学の知識 皆無。
(2.てつがくのちしき かいむ。)
2.哲学の知識 皆無。
(3.てんもんがくのちしき かいむ。)
3.天文学の知識 皆無。
(4.せいじがくのちしき ひんじゃく。)
4.政治学の知識 貧弱。
(5.しょくぶつがくのちしき さまざま。べらどんな、あへん、)
5.植物学の知識 さまざま。ベラドンナ、阿片、
(どくそうぜんぱんにはくわしい。じつようてきえんげいにかんしてはちしきがない。)
毒草全般には詳しい。実用的園芸に関しては知識がない。
(6.ちりのちしき じつようてきだがはんいがせまい。)
6.地理の知識 実用的だが範囲が狭い。
(どじょうをひとめみただけでちがいをいいあてられる。)
土壌を一目見ただけで違いを言いあてられる。
(さんぽのあと、ずぼんについたどろはねをわたしにみせて、)
散歩のあと、ズボンについた泥はねを私に見せて、
(いろとかたさでろんどんのどのばしょのどろかわたしにせつめいした。)
色と堅さでロンドンのどの場所の泥か私に説明した。
(7.かがくのちしき ふかい。)
7.化学の知識 深い。
(8.かいぼうがくのちしき せいかくだがたいけいてきでない。)
8.解剖学の知識 正確だが体系的でない。