オ16 須左之男命

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(あまてらすおおみかみのおとうとで、)

天照大御神の弟で、

(やまたのおろちをたいじしたことで)

八俣遠呂智を退治したことで

(よくしられるえいゆうしん。)

よく知られる英雄神。

(ちからづよいいんしょうがあるが)

力強い印象があるが

(いつわをよくみるとそうでもなく、)

逸話をよく見るとそうでもなく、

(もられたいめーじがひとりあるきしている)

盛られたイメージがひとり歩きしている

(かんはある。)

感はある。

(すさのおのみことがたんじょうしたとき、)

須左之男命が誕生したとき、

(いざなぎのみことからうなばらのとうちをしじされた。)

伊邪那岐命から海原の統治を指示された。

(ところが、すさのおのみことはいざなみのみことがいる)

ところが、須左之男命は伊邪那美命がいる

(ねのくにへいきたいとなきわめき、)

根の国へ行きたいと泣きわめき、

(そのはげしさにやまのみどりはかれ、)

その激しさに山の緑は枯れ、

(かわやうみはひあがり、)

川や海は干上がり、

(あくじんたちがかっきづいたため、)

悪神たちが活気づいたため、

(おこったいざなぎのみことにくにをおいだされた)

怒った伊邪那岐命に国を追い出された

(はずかしいはなしがある。)

恥ずかしい話がある。

(そのご、すさのおのみことはあねにあいさつをして)

その後、須左之男命は姉に挨拶をして

(たびだとうとたかまがはらをおとずれたが、)

旅立とうと高天原を訪れたが、

(わるさのしすぎでいわとがくれをまねく。)

悪さのし過ぎで岩戸隠れを招く。

(このけっか、かみがみにたかまがはらからついほうされ、)

この結果、神々に高天原から追放され、

など

(おりたったいずもでやまたのおろちを)

降り立った出雲で八俣遠呂智を

(たいじすることになるのだ。)

退治することになるのだ。

(このこうせきですさのおのみことはえいゆうしんになるのだが、)

この功績で須左之男命は英雄神になるのだが、

(がいこくのしんわなどにみられる)

外国の神話などに見られる

(えいゆうのようなまっこうしょうぶではなく、)

英雄のような真っ向勝負ではなく、

(さけをのませてねむったところをきりきざむという)

酒を飲ませて眠ったところを切り刻むという

(だましうちだった。)

騙し討ちだった。

(いっぱんてきな「かいぶつたいじをしたゆうそうなかみ」という)

一般的な「怪物退治をした勇壮な神」という

(いんしょうとはちがうのだが、)

印象とは違うのだが、

(とはいえあしなづちのみことてなづちのみことふうふや)

とはいえ足名椎命・手名椎命夫婦や

(むすめのくしなだひめがすくわれたのはじじつ。)

娘の櫛名田比売が救われたのは事実。

(だましうちもまっこうしょうぶでは)

騙し討ちも真っ向勝負では

(かてないとはんだんしたからで、)

勝てないと判断したからで、

(そこには「こまっているものをたすけるために)

そこには「困っている者を助けるために

(ちからをつくす」というぎしんがかんじられる。)

力を尽くす」という義心が感じられる。

(この「ぎしんからのひとだすけ」というのは、)

この「義心からの人助け」というのは、

(むかしからにほんじんのだいこうぶつ。)

昔から日本人の大好物。

(すさのおのみことがかぐらやじょうるりの)

須左之男命が神楽や浄瑠璃の

(だいざいにされているのも、)

題材にされているのも、

(ひとびとがこのぎしんにきょうかんするからだろう。)

人々がこの義心に共感するからだろう。

(ぶたいせっていのちがいはあるが、)

舞台設定の違いはあるが、

(げんだいのらいとのべるなどでも)

現代のライトノベルなどでも

(しゅじんこうのひとだすけはおやくそく。)

主人公の人助けはお約束。

(ちからのうむがあるにしろ、)

力の有無があるにしろ、

(どくしゃはしゅじんこうのこころいきやちからをつくすしせいに)

読者は主人公の心意気や力を尽くす姿勢に

(ひかれるわけで、)

惹かれるわけで、

(いうなればかれらはげんだいのすさのおのみことなのだ。)

いうなれば彼らは現代の須左之男命なのだ。

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