レ×××ド・ダ・ヴインチの手記 芥川龍之介訳
順位 | 名前 | スコア | 称号 | 打鍵/秒 | 正誤率 | 時間(秒) | 打鍵数 | ミス | 問題 | 日付 |
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1 | subaru | 6673 | S+ | 7.0 | 94.4% | 252.2 | 1789 | 106 | 37 | 2024/10/29 |
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問題文
(おお、かみよ。なんじは、いっさいのよきものを、ろうりょくのあたいをもって、われらにうりたまえり。)
おお、神よ。爾は、一切の善きものを、勞力の價を以て、我等に賣り給へり。
(*)
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(こじんをもほうすることは、こんじんをもほうすることより、しょうさんにあたいする。)
古人を模倣する事は、今人を模倣する事より、賞讃に値する。
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(「せい」において、「び」はしめつする。が、「げいじゅつ」においては、しめつしない。)
「生」に於て、「美」は死滅する。が、「藝術」に於ては、死滅しない。
(*)
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(かんじょうのしじょうのちからがそんするところに、じゅんきょうしゃちゅうのさいだいなるじゅんきょうしゃがある。)
感情の至上の力が存する所に、殉教者中の最大なる殉教者がある。
(*)
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(われらのこきょうにかえらんとする、われらのおうじのじょうたいにかえらんとする、)
我等の故郷に歸らんとする、我等の往時の状態に還らんとする、
(きぼうとよくぼうとをみよ。いかにそれが、ひかりにおけるひとりむしににているか。)
希望と欲望とを見よ。如何にそれが、光に於ける蛾に似てゐるか。
(たえざるしょうけいをもって、つねに、あらたなるはるとあらたなるなつと、あらたなるつきとあらたなるとしとを、)
絶えざる憧憬を以て、常に、新なる春と新なる夏と、新なる月と新なる年とを、
(よろこびのぞみ、そのしょうけいするもののあまりりにおそくきたるのをたんずるものは、)
悦び望み、その憧憬する物の餘りに遲く來るのを歎ずる者は、
(じつはかれじしんおのれのめつぼうをしょうけいしつつあるということも、みとめずにしまう。しかし、)
實は彼自身己の滅亡を憧憬しつつあると云ふ事も、認めずにしまふ。しかし、
(このしょうけいこそは、ごげんのせいずいでありせいしんである。それはにくたいのせいかつのなかに)
この憧憬こそは、五元の精髄であり精神である。それは肉體の生活の中に
(ゆうへいせられながら、しかもなお、そのみなもとにかえることをのぞんでやまない。じぶんは、)
幽閉せられながら、しかも猶、その源に歸る事を望んでやまない。自分は、
(しょくんにこういうことをしってもらいたいとおもう。このおなじしょうけいが、しぜんのなかにせいらい)
諸君にかふ云ふ事を知つて貰ひたいと思ふ。この同じ憧憬が、自然の中に生來
(そんしているせいずいだということを。そうして、にんげんはせかいいちのたいぷだということを。)
存してゐる精髄だと云ふ事を。さうして、人間は世界一のタイプだと云ふ事を。
(*)
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(よくついやされたひが、こうふくなねむりをもたらすように、よくもちいられたせいは、)
善く費された日が、幸福な眠を齎すやうに、善く用ひられた生は、
(こうふくなしをしょうらいする。)
幸福な死を將來する。
(*)
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(じぶんが、いかにいくべきかをまなんでいたとおもっているあいだに、じぶんは、)
自分が、如何に生く可きかを學んでゐたと思つてゐる間に、自分は、
(いかにしすべきかをまなんでいたのである。)
如何に死す可きかを學んでゐたのである。
(*)
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(てつは、もちいないときに、さびる。たまりみずは、にごって、かんてんには、ひょうけつする。)
鐵は、用ひない時に、鏽る。溜り水は、濁つて、寒天には、氷結する。
(けたいがこころのかつりょくをうばうこともまた、これにひとしい。)
懈怠が心の活力を奪ふ事も亦、これに比しい。
(*)
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(おお「とき」よ。いっさいをめっきゃくするなんじよ。おおねたみふかきじだいよ。)
おお「時」よ。一切を滅却する爾よ。おお嫉みふかき時代よ。
(なんじは、としのするどきしがをもって、しずかなるしに、いっさいをはかいし、いっさいをへいどんする。)
爾は、年の鋭き齒牙を以て、徐なる死に、一切を破壊し、一切を併呑する。
(へれんは、ろうねんがめんじょうにこくしたしわを、きょうちゅうのかげにみとめたとき、ないて、)
ヘレンは、老年が面上に刻した皺を、鏡中の影に認めた時、泣いて、
(なにゆえにかのじょがにどまでもゆうかいしさられたかをあやしんだ。 おお「とき」よ、)
何故に彼女が二度までも誘拐し去られたかを怪んだ。 おお、「時」よ、
(いっさいをめっきゃくするなんじよ。おおいっさいをめっきゃくするねたみふかきじだいよ。)
一切を滅却する爾よ。おお一切を滅却する嫉みふかき時代よ。
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(きは、きをめっするひのねんりょうとなる。)
木は、木を滅する火の燃料となる。
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(さいだいのふこうは、りろんがしゅわんをちょうかしたときである。)
最大の不幸は、理論が手腕を超過した時である。
((しょうやく) (たいしょうさんねんごろ))
(抄譯) (大正三年頃)