紫式部 源氏物語 夕顔 8 與謝野晶子訳

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(げんじはひるごろにおきてこうしをじしんであげた。ひじょうにあれていて、ひとかげなどは)

源氏は昼ごろに起きて格子を自身で上げた。非常に荒れていて、人影などは

(みえずにはるばるととおくまでがみわたされる。むこうのほうのこだちはきみわるく)

見えずにはるばると遠くまでが見渡される。向こうのほうの木立ちは気味悪く

(ふるいたいぼくにみななっていた。ちかいうえこみのくさやかんぼくなどにはうつくしいすがたもない。)

古い大木に皆なっていた。近い植え込みの草や灌木などには美しい姿もない。

(あきのあれののけしきになっている。いけもみずくさでうずめられたすごいものである。)

秋の荒野の景色になっている。池も水草でうずめられた凄いものである。

(わかれたむねのほうにへやなどをもってあずかりやくはすむらしいが、そことこことは)

別れた棟のほうに部屋などを持って預かり役は住むらしいが、そことこことは

(よほどはなれている。 「きみわるいいえになっている。でもおになんかだってわたくしだけは)

よほど離れている。 「気味悪い家になっている。でも鬼なんかだって私だけは

(どうともしなかろう」 とげんじはいった。まだこのときまではかおをかくしていたが、)

どうともしなかろう」 と源氏は言った。まだこの時までは顔を隠していたが、

(このたいどをおんながうらめしがっているのをしって、なんたるさくごだ、ふつごうなのは)

この態度を女が恨めしがっているのを知って、何たる錯誤だ、不都合なのは

(じぶんである、こんなにあいしていながらときがついた。 )

自分である、こんなに愛していながらと気がついた。

(「ゆうつゆにひもとくはなはたまぼこのたよりにみえしえにこそありけれ )

「夕露にひもとく花は玉鉾のたよりに見えし縁こそありけれ

(あなたのこころあてにそれかとおもうといったときのひとのかおをちかくにみて)

あなたの心あてにそれかと思うと言った時の人の顔を近くに見て

(げんめつがおこりませんか」 というげんじのきみをしりめにおんなはみあげて、)

幻滅が起りませんか」 と言う源氏の君を後目に女は見上げて、

(ひかりありとみしゆうがおのうわつゆはたそがれどきのそらめなりけり )

光ありと見し夕顔のうは露は黄昏時のそら目なりけり

(といった。じょうだんまでもいうきになったのがげんじにはうれしかった。)

と言った。冗談までも言う気になったのが源氏にはうれしかった。

(うちとけたしゅんかんからげんじのびはあたりにほうさんした。ふるくさくあれたいえとのたいしょうは)

打ち解けた瞬間から源氏の美はあたりに放散した。古くさく荒れた家との対照は

(ましてみわくてきだった。 「いつまでもしんじつのことをうちあけてくれないのが)

まして魅惑的だった。 「いつまでも真実のことを打ちあけてくれないのが

(うらめしくって、わたくしもだれであるかをかくしとおしたのだが、まけた。)

恨めしくって、私もだれであるかを隠し通したのだが、負けた。

(もういいでしょう、なをいってください。にんげんばなれがあまりしすぎます」)

もういいでしょう、名を言ってください。人間離れがあまりしすぎます」

(とげんじがいっても、 「いえもなにもないおんなですもの」)

と源氏が言っても、 「家も何もない女ですもの」

(といってそこまではまだうちとけぬようすもうつくしくかんぜられた。)

と言ってそこまではまだ打ち解けぬ様子も美しく感ぜられた。

など

(「しかたがない。わたくしがわるいのだから」 とうらんでみたり、えいきゅうのこいのちかいを)

「しかたがない。私が悪いのだから」 と怨んでみたり、永久の恋の誓いを

(しあったりしてときをおくった。)

し合ったりして時を送った。

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