紫式部 源氏物語 榊 4 與謝野晶子訳

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(じゅうろくにちにかつらがわでさいぐうのみそぎのしきがあった。じょうれいいじょうはなやかにそれらのしきも) 十六日に桂川で斎宮の御禊の式があった。常例以上はなやかにそれらの式も (おこなわれたのである。ちょうぶそうし、そのたかんちょうからさんれつされるこうかんも) 行なわれたのである。長奉送使、その他官庁から参列される高官も (せいめいのあるひとたちばかりをえらんであった。いんがごこうえんしゃで) 勢名のある人たちばかりを選んであった。院が御後援者で (いらせられるからである。しゅったつのひにげんじからべつりのじょうにたえがたいこころをかいた) いらせられるからである。出立の日に源氏から別離の情に堪えがたい心を書いた (てがみがきた。ほかにまたいつきのみやのおまえへといって、ゆふにつけたものもあった。) 手紙が来た。ほかにまた斎の宮のお前へといって、斎布につけたものもあった。 (いかずちのかみでさえこいびとのなかをさくものではないといいます。 ) いかずちの神でさえ恋人の中を裂くものではないと言います。 (やしまもるくにつみかみもこころあらばあかぬわかれのなかをことわれ ) 八洲もる国つ御神もこころあらば飽かぬ別れの中をことわれ (どうかんがえましてもしんりょがわかりませんから、わたくしはまんぞくできません。) どう考えましても神慮がわかりませんから、私は満足できません。 (とかかれてあった。とりこんでいたがへんじをした。) と書かれてあった。取り込んでいたが返事をした。 (みやのおうたをにょべっとうがだいひつしたものであった。 ) 宮のお歌を女別当が代筆したものであった。
(くにつかみそらにことわるなかならばなおざりごとをまづやたださん ) 国つ神空にことわる中ならばなほざりごとを先づやたださん (げんじはさいごにきゅうちゅうであるしきをみたくもおもったが、すてていかれるおとこが) 源氏は最後に宮中である式を見たくも思ったが、捨てて行かれる男が (みおくりにでるというきまりわるさをおもっていえにいた。げんじはさいぐうのおとなびたへんかを) 見送りに出るというきまり悪さを思って家にいた。源氏は斎宮の大人びた返歌を (びしょうしながらながめていた。ねんれいいじょうによいきじょになっておられるきがする) 微笑しながらながめていた。年齢以上によい貴女になっておられる気がする (とおもうとむねがなった。こいをすべきでないひとにこうきしんのうごくのがげんじのしゅうへきで、) と思うと胸が鳴った。恋をすべきでない人に好奇心の動くのが源氏の習癖で、 (かおをみようとすれば、よくそれもできたさいぐうのようしょうじだいを) 顔を見ようとすれば、よくそれもできた斎宮の幼少時代を (そのままでおわったことがざんねんである。けれどもうんめいはどうなっていくものか) そのままで終わったことが残念である。けれども運命はどうなっていくものか (よちされないのがじんせいであるから、またよりよくそのひとをみることのできるひを) 予知されないのが人生であるから、またよりよくその人を見ることのできる日を (じぶんはまっているかもしれないのであるともげんじはおもった。けんしきのたかい、) 自分は待っているかもしれないのであるとも源氏は思った。見識の高い、 (うつくしいきふじんであるとなだかいそんざいになっているみやすどころのそったさいぐうのしゅっぱつのれつを) 美しい貴婦人であると名高い存在になっている御息所の添った斎宮の出発の列を
など
(ながめようとしてものみぐるまがおおくでているひであった。さいぐうはごごよじに) ながめようとして物見車が多く出ている日であった。斎宮は午後四時に (きゅうちゅうへおはいりになった。みやのこしにどうじょうしながらみやすどころは、ちちのだいじんが) 宮中へおはいりになった。宮の輿に同乗しながら御息所は、父の大臣が (みらいのきさきにぎしてとうぐうのこうきゅうにそなえたじぶんを、どんなにはなやかに) 未来の后に擬して東宮の後宮に備えた自分を、どんなにはなやかに (とりあつかったことであったか、ふこうなうんめいのはてに、きさきのこしでないこしへ) 取り扱ったことであったか、不幸な運命のはてに、后の輿でない輿へ (わずかにばいじょうしてじぶんはきゅうていをみるのであるとおもうとかんがいがむりょうであった。) わずかに陪乗して自分は宮廷を見るのであると思うと感慨が無量であった。 (じゅうろくでこうたいしのひになって、はたちでかふになり、) 十六で皇太子の妃になって、二十で寡婦になり、 (さんじゅうできょうまただいりへはいったのである。 ) 三十で今日また内裏へはいったのである。 (そのかみをきょうはかけじとおもえどもこころのうちにものぞかなしき ) そのかみを今日はかけじと思へども心のうちに物ぞ悲しき (みやすどころのうたである。さいぐうはじゅうしでおありになった。きれいなかたであるうえに、) 御息所の歌である。斎宮は十四でおありになった。きれいな方である上に、 (きんしゅうにつつまれておいでになったから、このせかいのにょにんともみえないほど) 錦繍に包まれておいでになったから、この世界の女人とも見えないほど (おうつくしかった。さいおうのびにみこころをうたれながら、わかれのみぐしをかみにさして) お美しかった。斎王の美に御心を打たれながら、別れの御櫛を髪に挿して (おあたえになるとき、みかどはかなしみにたえがたくおなりになったふうで) お与えになる時、帝は悲しみに堪えがたくおなりになったふうで (しょうぜんとしておしまいになった。しきのおわるのをはっしょういんのまえにまっている) 悄然としておしまいになった。式の終わるのを八省院の前に待っている (さいぐうのにょうぼうたちののったくるまからみえるそでのいろのうつくしさもこんどはとくにめをひいた。) 斎宮の女房たちの乗った車から見える袖の色の美しさも今度は特に目を引いた。 (わかいてんじょうやくにんがよっていって、こじんこじんのわかれをおしんでいた。くらくなってから) 若い殿上役人が寄って行って、個人個人の別れを惜しんでいた。暗くなってから (ぎょうれつはうごいて、にじょうからとういんのおおじをおれるところににじょうのいんは) 行列は動いて、二条から洞院の大路を折れる所に二条の院は (あるのであったから、げんじはみにしむおもいをしながら、さかきにうたをさしておくった。) あるのであったから、源氏は身にしむ思いをしながら、榊に歌を挿して送った。 (ふりすててきょうはいくともすずかがわやそせのなみにそではぬれじや ) ふりすてて今日は行くとも鈴鹿川八十瀬の波に袖は濡れじや (そのときはもうくらくもあったし、あわただしくもあったので、) その時はもう暗くもあったし、あわただしくもあったので、 (よくじつおうさかやまのむこうからみやすどころのへんじはきたのである。 ) 翌日逢坂山の向こうから御息所の返事は来たのである。 (すずかがわやそせのなみにぬれぬれずいせまでたれかおもいおこせん ) 鈴鹿川八十瀬の波に濡れ濡れず伊勢までたれか思ひおこせん (かんたんにかかれてあるが、きじんらしさのあるこうみょうなじであった。) 簡単に書かれてあるが、貴人らしさのある巧妙な字であった。 (やさしさをすこしくわえたらさいじょうのじになるであろうとげんじはおもった。) 優しさを少し加えたら最上の字になるであろうと源氏は思った。 (きりがこくかかっていて、みにしむあきのよあけのそらをながめて、げんじは、 ) 霧が濃くかかっていて、身にしむ秋の夜明けの空をながめて、源氏は、 (ゆくかたをながめもやらんこのあきはおうさかやまをきりなへだてそ ) 行くかたをながめもやらんこの秋は逢坂山を霧な隔てそ (こんなうたをくちずさんでいた。にしのたいへもいかずにしゅうじつものおもいをして) こんな歌を口ずさんでいた。西の対へも行かずに終日物思いをして (げんじはくらした。たびびとになったみやすどころはましてたえがたいかなしみを) 源氏は暮らした。旅人になった御息所はまして堪えがたい悲しみを (あじわっていたことであろう。) 味わっていたことであろう。
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