紫式部 源氏物語 須磨 9 與謝野晶子訳

背景
投稿者投稿者文吾いいね0お気に入り登録
プレイ回数96難易度(4.5) 2983打 長文 長文モードのみ
順位 名前 スコア 称号 打鍵/秒 正誤率 時間(秒) 打鍵数 ミス 問題 日付
1 おもち 8039 8.1 98.1% 362.6 2970 55 48 2025/01/07
2 subaru 8029 8.2 97.7% 359.3 2954 69 48 2024/12/24
3 HAKU 7408 7.5 97.6% 392.8 2982 72 48 2024/12/24
4 ヤス 7128 7.4 95.4% 397.0 2972 142 48 2024/12/23
5 だだんどん 6677 S+ 6.9 95.6% 421.1 2947 135 48 2024/12/28

関連タイピング

問題文

ふりがな非表示 ふりがな表示

(とうじつはしゅうじつふじんとかたりあっていて、そのころのれいのとおりにそうぎょうに)

当日は終日夫人と語り合っていて、そのころの例のとおりに早暁に

(げんじはでかけていくのであった。かりぎぬなどをきて、かんたんなりょそうをしていた。)

源氏は出かけて行くのであった。狩衣などを着て、簡単な旅装をしていた。

(「つきがでてきたようだ。もうすこしはしのほうへでてきて、)

「月が出てきたようだ。もう少し端のほうへ出て来て、

(みおくってだけでもください。あなたにはなすことがたくさんつもったとまいにちまいにち)

見送ってだけでもください。あなたに話すことがたくさん積もったと毎日毎日

(おもわなければならないでしょうよ。いちにちふつかほかにいてもはなしがたまりすぎる)

思わなければならないでしょうよ。一日二日ほかにいても話がたまり過ぎる

(くるしいわたくしなのだ」 といって、みすをまきあげて、えんがわにちかくにょおうをさそうと、)

苦しい私なのだ」 と言って、御簾を巻き上げて、縁側に近く女王を誘うと、

(なきしずんでいたふじんはためらいながらいざってでた。つきのひかりのさすところに)

泣き沈んでいた夫人はためらいながら膝行って出た。月の光のさすところに

(ひじょうにうつくしくにょおうはすわっていた。じぶんがりょちゅうにしんでしまえば)

非常に美しく女王はすわっていた。自分が旅中に死んでしまえば

(このひとはどんなふうになるであろうとおもうと、げんじはのこしていくのが)

この人はどんなふうになるであろうと思うと、源氏は残して行くのが

(きがかりになってかなしかったが、そんなことをおもいだせば、)

気がかりになって悲しかったが、そんなことを思い出せば、

(いっそうこのひとをかなしませることになるとおもって、 )

いっそうこの人を悲しませることになると思って、

(「いけるよのわかれをしらでちぎりつついのちをひとにかぎりけるかな )

「生ける世の別れを知らで契りつつ命を人に限りけるかな

(はかないことだった」 とだけいった。ひつうなこころのそこは)

はかないことだった」 とだけ言った。悲痛な心の底は

(みせまいとしているのだった。 )

見せまいとしているのだった。

(おしからぬいのちにかえてめのまえのわかれをしばしとどめてしがな )

惜しからぬ命に代へて眼の前の別れをしばしとどめてしがな

(とふじんはいう。それがしんじつのこころのさけびであろうとおもうと、)

と夫人は言う。それが真実の心の叫びであろうと思うと、

(たっていけないげんじであったが、よがあけてからいえをでるのはみぐるしいとおもって)

立って行けない源氏であったが、夜が明けてから家を出るのは見苦しいと思って

(わかれていった。 みちすがらもふじんのおもかげがめにみえて、げんじはむねを)

別れて行った。 道すがらも夫人の面影が目に見えて、源氏は胸を

(かなしみにふさがれたままふねにのった。ひのながいころであったし、)

悲しみにふさがれたまま船に乗った。日の長いころであったし、

(おいかぜでもあってごごよじごろにげんじのいっこうはすまについた。)

追い風でもあって午後四時ごろに源氏の一行は須磨に着いた。

など

(たびをしたことのないげんじには、こころぼそさもおもしろさも)

旅をしたことのない源氏には、心細さもおもしろさも

(みなはじめてのけいけんであった。おおえどのというところはこうはいしていて)

皆はじめての経験であった。大江殿という所は荒廃していて

(まつだけがむかしのなごりのものらしくたっていた。 )

松だけが昔の名残のものらしく立っていた。

(からくにになをのこしけるひとよりもゆくえしられぬいえいをやせん )

唐国に名を残しける人よりもゆくへ知られぬ家居をやせん

(とげんじはくちずさまれた。なぎさへよるなみがすぐにまたかえるなみになるのをながめて、)

と源氏は口ずさまれた。渚へ寄る波がすぐにまた帰る波になるのをながめて、

(「いとどしくすぎゆくかたのこいしきにうらやましくもかえるなみかな」)

「いとどしく過ぎ行く方の恋しきにうらやましくも帰る波かな」

(これもげんじのくちにのぼった。だれもしったなりひらあそんのこかであるが、)

これも源氏の口に上った。だれも知った業平朝臣の古歌であるが、

(かんしょうてきになっているひとびとはこのうたにこころをうたれていた。きたほうをみると)

感傷的になっている人々はこの歌に心を打たれていた。来たほうを見ると

(やまやまがとおくかすんでいて、さんぜんりがいのたびをうたって、)

山々が遠く霞んでいて、三千里外の旅を歌って、

(かいのしずくにないたしのきょうちにいるきもした。 )

櫂の雫に泣いた詩の境地にいる気もした。

(ふるさとをみねのかすみはへだつれどながむるそらはおなじくもいか )

ふる里を峯の霞は隔つれど眺むる空は同じ雲井か

(すべてのものがさびしくかなしくみられた。いんせいのばしょはゆきひらが「もしおたれつつ)

総てのものが寂しく悲しく見られた。隠栖の場所は行平が「藻塩垂れつつ

(わぶとこたえよ」とうたってすんでいたところにちかくて、かいがんからは)

侘ぶと答へよ」と歌って住んでいた所に近くて、海岸からは

(ややはいったあたりで、きわめてさびしいやまのなかである。めぐらせたかきねも)

ややはいったあたりで、きわめて寂しい山の中である。めぐらせた垣根も

(みなれぬめずらしいものにげんじはおもった。かやぶきのいえであって、それにあしぶきの)

見馴れぬ珍しい物に源氏は思った。茅葺きの家であって、それに葦葺きの

(ろうにあたるようなたてものがつづけられたふうりゅうなすまいになっていた。)

廊にあたるような建物が続けられた風流な住居になっていた。

(とかいのいえとはぜんぜんかわったこのおもむきも、ただのたびにとどまるいえであったなら)

都会の家とは全然変わったこの趣も、ただの旅にとどまる家であったなら

(きっとおもしろくおもわれるにちがいないとへいぜいのしゅみからげんじはおもって)

きっとおもしろく思われるに違いないと平生の趣味から源氏は思って

(ながめていた。ここにちかいりょうちのあずかりにんなどをよびだして、いろいろなしごとを)

ながめていた。ここに近い領地の預かり人などを呼び出して、いろいろな仕事を

(めいじたり、よしきよあそんなどがかしょくのしたやくしかせぬことにもほんそうするのも)

命じたり、良清朝臣などが家職の下役しかせぬことにも奔走するのも

(あわれであった。きわめてたんじじつのうちにそのいえも)

哀れであった。きわめて短時日のうちにその家も

(おもしろいじょうひんなさんそうになった。みずのながれをふかくさせたり、)

おもしろい上品な山荘になった。水の流れを深くさせたり、

(きをうえさせたりしておちついてみればみるほどゆめのきがした。)

木を植えさせたりして落ち着いてみればみるほど夢の気がした。

(せっつのかみもいぜんからげんじにれいぞくしていたおとこであったから、こうぜんではないが)

摂津守も以前から源氏に隷属していた男であったから、公然ではないが

(こういをよせていた。そんなことで、じゅんはいしょであるべきいえもひとでいりは)

好意を寄せていた。そんなことで、準配所であるべき家も人出入りは

(おおいのであるが、はかばかしいはなしあいてはなくてがいこくにでもいるように)

多いのであるが、はかばかしい話し相手はなくて外国にでもいるように

(げんじはおもわれるのであった。こうしたつれづれなせいかつになんねんもしんぼうすることが)

源氏は思われるのであった。こうしたつれづれな生活に何年も辛抱することが

(できるであろうかとげんじはみずからあやぶんだ。)

できるであろうかと源氏はみずから危んだ。

問題文を全て表示 一部のみ表示 誤字・脱字等の報告

文吾のタイピング

オススメの新着タイピング

タイピング練習講座 ローマ字入力表 アプリケーションの使い方 よくある質問

人気ランキング

注目キーワード