私の個人主義10

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(わたしはそれからぶんげいにたいするじこのりっきゃくちを)

私はそれから文芸に対する自己の立脚地を

(かためるため、かためるというよりしんらしく)

堅めるため、堅めるというより新らしく

(けんせつするために、ぶんげいとはまったくえんのない)

建設するために、文芸とは全く縁のない

(しょもつをよみはじめました。ひとくちでいうと、)

書物を読み始めました。一口でいうと、

(じこほんいというよんじをようやくかんがえて、)

自己本位という四字をようやく考えて、

(そのじこほんいをりっしょうするために、かがくてきな)

その自己本位を立証するために、科学的な

(けんきゅうやらてつがくてきのしさくにふけりだしたのであり)

研究やら哲学的の思索に耽り出したのであり

(ます。いまはじせいがちがいますから、このへんの)

ます。今は時勢が違いますから、この辺の

(ことはたしょうあたまのあるひとにはよくげせられている)

事は多少頭のある人にはよく解せられている

(はずですが、そのころはわたしがようちなうえに、せけんが)

はずですが、その頃は私が幼稚な上に、世間が

(まだそれほどすすんでいなかったので、わたしの)

まだそれほど進んでいなかったので、私の

(やりかたはじっさいやむをえなかったのです。)

やり方は実際やむをえなかったのです。

(わたしはこのじこほんいということばをじぶんのてに)

私はこの自己本位という言葉を自分の手に

(にぎってからたいへんつよくなりました。かれらなにものぞ)

握ってから大変強くなりました。彼ら何者ぞ

(やときがいがでました。いままでぼうぜんとじしつして)

やと気慨が出ました。今まで茫然と自失して

(いたわたしに、ここにたって、このみちからこう)

いた私に、ここに立って、この道からこう

(いかなければならないとさしずをしてくれた)

行かなければならないと指図をしてくれた

(ものはじつにこのじがほんいのよんじなのでありま)

ものは実にこの自我本位の四字なのでありま

(す。)

す。

(じはくすればわたしはそのよんじからあらたにしゅったつした)

自白すれば私はその四字から新たに出立した

など

(のであります。そうしていまのようにただじんの)

のであります。そうして今のようにただ人の

(しりうまにばかりのってからさわぎをしているようでは)

尻馬にばかり乗って空騒ぎをしているようでは

(はなはだこころもとないことだから、そうせいようじんぶら)

はなはだ心元ない事だから、そう西洋人ぶら

(ないでもよいといううごかすべからざるりゆうを)

ないでも好いという動かすべからざる理由を

(りっぱにかれらのまえになげだしてみたら、じぶんも)

立派に彼らの前に投げ出してみたら、自分も

(さぞゆかいだろう、ひともさぞよろこぶだろうとおもって、)

さぞ愉快だろう、人もさぞ喜ぶだろうと思って、

(ちょしょそのほかのしゅだんによって、それをじょうじゅする)

著書その他の手段によって、それを成就する

(のをわたしのしょうがいのじぎょうとしようとかんがえたのです。)

のを私の生涯の事業としようと考えたのです。

(そのときわたしのふあんはまったくきえました。わたしはけいかいな)

その時私の不安は全く消えました。私は軽快な

(こころをもっていんうつなろんどんをながめたのです。ひゆで)

心をもって陰欝な倫敦を眺めたのです。比喩で

(もうすと、わたしはたねんのあいだおうのうしたけっかようやく)

申すと、私は多年の間懊悩した結果ようやく

(じぶんのつるはしをがちりとこうみゃくにほりあてたような)

自分の鶴嘴をがちりと鉱脈に掘り当てたような

(きがしたのです。なおくりかえしていうと、いままで)

気がしたのです。なお繰り返していうと、今まで

(きりのなかにとじこまれたものが、あるかくどの)

霧の中に閉じ込まれたものが、ある角度の

(ほうこうで、あきらかにじぶんのすすんでいくべきみちを)

方向で、明らかに自分の進んで行くべき道を

(おしえられたことになるのです。)

教えられた事になるのです。

(かくわたしがけいはつされたときは、もうりゅうがくしてから、)

かく私が啓発された時は、もう留学してから、

(いちねんいじょうけいかしていたのです。それでとても)

一年以上経過していたのです。それでとても

(がいこくではわたしのじぎょうをしあげるわけにいかない、)

外国では私の事業を仕上る訳に行かない、

(とにかくできるだけざいりょうをまとめて、ほんごくへ)

とにかくできるだけ材料を纏めて、本国へ

(たちかえったあと、りっぱにしまつをつけようというきに)

立ち帰った後、立派に始末をつけようという気に

(なりました。すなわちがいこくへいったときよりも)

なりました。すなわち外国へ行った時よりも

(かえってきたときのほうが、ぐうぜんながらあるちからを)

帰って来た時の方が、偶然ながらある力を

(えたことになるのです。)

得た事になるのです。

(ところがかえるやいなやわたしはいしょくのためにほんそうする)

ところが帰るや否や私は衣食のために奔走する

(ぎむがさっそくおこりました。わたしはこうとうがっこうへも)

義務がさっそく起りました。私は高等学校へも

(でました。だいがくへもでました。あとではきんが)

出ました。大学へも出ました。後では金が

(たりないので、しりつがっこうもいっけんかせぎました。)

足りないので、私立学校も一軒稼ぎました。

(そのうえ)

その上

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