私の個人主義22
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関連タイピング
問題文
(そのひとのあとからえんだんにあがりました。)
その人のあとから演壇に上りました。
(とうじのわたしのたいどなりぎょうぎなりははなはだ)
当時の私の態度なり行儀なりははなはだ
(みぐるしいものだとおもいますが、それでも)
見苦しいものだと思いますが、それでも
(かんけつにいうことだけはいってしりぞけました。)
簡潔に云う事だけは云って退けました。
(ではそのときなんといったかとおたずねになるかも)
ではその時何と云ったかとお尋ねになるかも
(しれませんが、それはすこぶるかんたんなのです。)
知れませんが、それはすこぶる簡単なのです。
(わたしはこういいました。こっかはたいせつかもしれないが、)
私はこう云いました。国家は大切かも知れないが、
(そうあさからばんまでこっかこっかといってあたかも)
そう朝から晩まで国家国家と云ってあたかも
(こっかにとりつかれたようなまねはとうてい)
国家に取りつかれたような真似はとうてい
(われわれにできるはなしでない。じょうじゅうざがこっかのこといがいを)
我々にできる話でない。常住坐臥国家の事以外を
(かんがえてならないというひとはあるかもしれないが、)
考えてならないという人はあるかも知れないが、
(そうかんだんなくひとつことをかんがえているひとはじじつ)
そう間断なく一つ事を考えている人は事実
(ありえない。とうふやがとうふをうってあるくのは、)
あり得ない。豆腐屋が豆腐を売ってあるくのは、
(けっしてこっかのためにうってあるくのではない。)
けっして国家のために売って歩くのではない。
(こんぽんてきのしゅいはじぶんのいしょくのりょうをえるためである。)
根本的の主意は自分の衣食の料を得るためである。
(しかしとうにんはどうあろうともそのけっかはしゃかいに)
しかし当人はどうあろうともその結果は社会に
(ひつようなものをきょうするというてんにおいて、かんせつに)
必要なものを供するという点において、間接に
(こっかのりえきになっているかもしれない。これと)
国家の利益になっているかも知れない。これと
(おなじことで、きょうのうまにわたしはめしをさんはいたべた、)
同じ事で、今日の午に私は飯を三杯たべた、
(ばんにはそれをよんはいにふやしたというのも)
晩にはそれを四杯に殖やしたというのも
(かならずしもこっかのためにぞうげんしたのではない。)
必ずしも国家のために増減したのではない。
(しょうじきにいえばいのぐあいできめたのである。)
正直に云えば胃の具合できめたのである。
(しかしこれらもかんせつのまたかんせつにいえば)
しかしこれらも間接のまた間接に云えば
(てんかにえいきょうしないとはかぎらない、いなかんぽうによっては)
天下に影響しないとは限らない、否観方によっては
(せかいのおおぜいにいくぶんかかんけいしていないともかぎらない。)
世界の大勢に幾分か関係していないとも限らない。
(しかしながらかんじんのとうにんはそんなことをかんがえて、)
しかしながら肝心の当人はそんな事を考えて、
(こっかのためにめしをくわせられたり、こっかのために)
国家のために飯を食わせられたり、国家のために
(かおをあらわせられたり、またこっかのためにべんじょに)
顔を洗わせられたり、また国家のために便所に
(いかせられたりしてはたいへんである。)
行かせられたりしては大変である。
(こっかしゅぎをしょうれいするのはいくらしてもさしつかえないが、)
国家主義を奨励するのはいくらしても差支ないが、
(じじつできないことをあたかもこっかのためにする)
事実できない事をあたかも国家のためにする
(ごとくによそおうのはいつわりである。わたしのとうべんは)
ごとくに装うのは偽りである。私の答弁は
(ざっとこんなものでありました。いったいこっかという)
ざっとこんなものでありました。いったい国家という
(ものがあぶなくなればだれだってこっかのあんぴをかんがえない)
ものが危くなれば誰だって国家の安否を考えない
(ものはひとりもない。くにがつよくせんそうのうきがすくなく、)
ものは一人もない。国が強く戦争の憂が少なく、
(そうしてたからおかされるうきがなければないほど、)
そうして他から犯される憂がなければないほど、
(こっかてきかんねんはすくなくなってしかるべきわけで、その)
国家的観念は少なくなってしかるべき訳で、その
(くうきょをみたすためにこじんしゅぎがはいってくるのは)
空虚を充たすために個人主義が這入ってくるのは
(りのとうぜんともうすよりほかにしかたがないのです。)
理の当然と申すよりほかに仕方がないのです。
(いまのにほんはそれほどあんたいでもないでしょう。)
今の日本はそれほど安泰でもないでしょう。
(びんぼうであるうえに、くにがちいさい。したがって)
貧乏である上に、国が小さい。したがって
(いつどんなことがたってくるかもしれない。)
いつどんな事が起ってくるかも知れない。
(そういういみからみてわれわれはこっかのことをかんがえて)
そういう意味から見て吾々は国家の事を考えて
(いなければならんのです。けれどもそのにほんが)
いなければならんのです。けれどもその日本が
(いまがいまつぶれるとかめつぼうのうきめにあうとかいう)
今が今潰れるとか滅亡の憂目にあうとかいう
(くにがらでないいじょうは、そうこっかこっかとさわぎまわる)
国柄でない以上は、そう国家国家と騒ぎ廻る
(ひつようはないはずです。かじのおこらないさきに)
必要はないはずです。火事の起らない先に
(かじしょうぞくをつけてきゅうくつなおもいをしながら、)
火事装束をつけて窮屈な思いをしながら、
(ちょうないちゅうかけあるくのといっぱんであります。)
町内中駈け歩くのと一般であります。