私の個人主義14
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問題文
(ません。こういうちからが)
ません。こういう力が
(あるから、えらいようで)
あるから、偉いようで
(いて、そのみひじょうにあぶな)
いて、その実非常に危
(けんなのです。せんこくもうした)
険なのです。先刻申した
(こせいはおもにがくもんとか)
個性はおもに学問とか
(ぶんげいとかしゅみとかにつ)
文芸とか趣味とかにつ
(いてじこのおちつくべき)
いて自己の落ちつくべき
(ところまでいってはじめてはってん)
所まで行って始めて発展
(するようにおはなしいたした)
するようにお話し致した
(のですが、みをいうとそ)
のですが、実をいうとそ
(のおうようははなはだひろいも)
の応用ははなはだ広いも
(ので、たんにがくげいだけには)
ので、単に学芸だけには
(とどまらないのです。わたし)
とどまらないのです。私
(のしっているきょうだいで、おとうと)
の知っている兄弟で、弟
(のほうはいえにひきこんでしょもつ)
の方は家に引込んで書物
(などをよむことがすきなの)
などを読む事が好きなの
(にひきかえて、あにはまた)
に引き易えて、兄はまた
(つりどうらくにうきみをやつして)
釣道楽に憂身をやつして
(いるのがあります。すると)
いるのがあります。すると
(このあにがじぶんのおとうとのひきこみ)
この兄が自分の弟の引込
(しあんでただいえにばかりひき)
思案でただ家にばかり引
(こもっているのをひじょうにき)
籠っているのを非常に忌
(まわしいもののようにかんがえ)
まわしいもののように考
(えるのです。ひっきょうはつりを)
えるのです。必竟は釣を
(しないからああいうかぜに)
しないからああいう風に
(えんせいてきになるのだとがてん)
厭世的になるのだと合点
(して、むやみにおとうとをつりに)
して、むやみに弟を釣に
(ひっぱりだそうとするのです。)
引張り出そうとするのです。
(おとうとはまたそれがふゆかいで)
弟はまたそれが不愉快で
(たまらないのだけれども、)
たまらないのだけれども、
(あにがこうあつてきにつりざおをにないがし、)
兄が高圧的に釣竿を担がし、
(たり、ぎょらんをさげさせたり)
たり、魚籃を提げさせたり
(して、つりぼりへずいこうをめいずる)
して、釣堀へ随行を命ずる
(ものだから、まあめをつぶっ)
ものだから、まあ目を瞑っ
(てくっついていって、きみ)
てくっついて行って、気味
(のわるいふななどをつっていや)
の悪い鮒などを釣っていや
(いやかえってくるのです。それ)
いや帰ってくるのです。それ
(がためにあにのけいかくどおりおとうとの)
がために兄の計画通り弟の
(せいしつがなおったかというと、)
性質が直ったかというと、
(けっしてそうではない、ます)
けっしてそうではない、ます
(ますこのつりというものにたい)
ますこの釣というものに対
(してはんこうしんをおこしてくるよう)
して反抗心を起してくるよう
(になります。つまりつりとあにの)
になります。つまり釣と兄の
(せいしつとはぴたりとあってその)
性質とはぴたりと合ってその
(あいだになにのすきまもないのでしょ)
間に何の隙間もないのでしょ
(うが、それはいわゆるあにのこせい)
うが、それはいわゆる兄の個性
(で、おとうととはまるでこうしょうがないの)
で、弟とはまるで交渉がないの
(です。これはもとよりきんりょくの)
です。これはもとより金力の
(れいではありません、けんりょくのたを)
例ではありません、権力の他を
(いあつするせつめいになるのです。)
威圧する説明になるのです。
(あにのこせいがおとうとをあっぱくしてむりに)
兄の個性が弟を圧迫して無理に
(さかなをつらせるのですから。もっと)
魚を釣らせるのですから。もっと
(もあるばあいには、たとえば)
もある場合には、例えば
(じゅぎょうをうけるときとか、へいたいに)
授業を受ける時とか、兵隊に
(なったときとか、またきしゅくしゃで)
なった時とか、また寄宿舎で
(もぐんたいせいかつをしゅいにおくとか)
も軍隊生活を主位におくとか
(すべてそういったばあいには)
すべてそう云った場合には
(たしょうこのこうあつてきしゅだんはめんかれ)
多少この高圧的手段は免かれ
(ますまい。しかしわたしはおもに)
ますまい。しかし私はおもに
(あなたがたがいっぽんりつになって)
あなたがたが一本立になって
(せけんへでたときのことをいっている)
世間へ出た時の事を云っている
(のだからそのつもりできいて)
のだからそのつもりで聴いて
(くださらなくてはこまります。)
下さらなくては困ります。
(そこでぜんもうしたとおりじぶんがよい)
そこで前申した通り自分が好い
(とおもったこと、すきなこと、じぶんと)
と思った事、好きな事、自分と
(せいのあうこと、こうにそこにぶつかっ)
性の合う事、幸にそこにぶつかっ
(てじぶんのこせいをはってんさせていくうち)
て自分の個性を発展させて行くうち
(には、じたのくべつをわすれて、どうか)
には、自他の区別を忘れて、どうか
(あいつもおれのなかまにひきずりこん)
あいつもおれの仲間に引き摺り込ん
(でやろうというきになる。そのとき)
でやろうという気になる。その時
(けんりょくがあるとぜんいったきょうだいのような)
権力があると前云った兄弟のような
(へんなかんけいができあがるし、またきんりょくが)
変な関係が出来上るし、また金力が
(あると、それをふりまいて、たをじぶん)
あると、それをふりまいて、他を自分
(のようなものにしたてあげようとする。)
のようなものに仕立上げようとする。
(すなわちきんをゆうわくのどうぐとして、その)
すなわち金を誘惑の道具として、その
(ゆうわくのちからでたをじぶんにきにいるように)
誘惑の力で他を自分に気に入るように
(へんかさせようとする。どっちにしても)
変化させようとする。どっちにしても
(ひじょうなきけんがおこるのです。)
非常な危険が起るのです。