私の個人主義20
関連タイピング
問題文
(をしていたおとこにとりけしを)
をしていた男に取消を
(もうしこんできました。それが)
申し込んで来ました。それが
(ほんにんからではないのです。)
本人からではないのです。
(せつれいさんのこぶんこぶんというと)
雪嶺さんの子分子分というと
(なんだかばくちうちのようでおかしいが、)
何だか博奕打のようでおかしいが、
(まあどうじんといったようなものでしょう、)
まあ同人といったようなものでしょう、
(どうしてもとりけせというのです。)
どうしても取り消せというのです。
(それがじじつのもんだいならもっともですけれども、)
それが事実の問題ならもっともですけれども、
(ひひょうなんだからしかたがないじゃありませんか。)
批評なんだから仕方がないじゃありませんか。
(わたしのほうではこちらのじゆうだというより)
私の方ではこちらの自由だというより
(ほかにとはないのです。しかも)
ほかに途はないのです。しかも
(そうしたとりけしをもうしこんだ「にほんおよび)
そうした取消を申し込んだ「日本及び
(にほんじん」のいちぶではまいごう)
日本人」の一部では毎号
(わたしのわるくちをかいているひとがあるのだから)
私の悪口を書いている人があるのだから
(なおのことひとをきょうろかせるのです。)
なおのこと人を驚ろかせるのです。
(わたしはちょくせつだんぱんはしませんでしたけれども、)
私は直接談判はしませんでしたけれども、
(そのはなしをかんせつにきいたとき、へんな)
その話を間接に聞いた時、変な
(こころもちがしました。というのは、)
心持がしました。というのは、
(わたしのほうはこじんしゅぎでやっているのに)
私の方は個人主義でやっているのに
(かえして、むこうはとうはしゅぎでかつどうしているらしく)
反して、向うは党派主義で活動しているらしく
(おもわれたからです。とうじわたしは)
思われたからです。当時私は
(わたしのさくもつをわるくひょうしたものさえ、)
私の作物をわるく評したものさえ、
(じぶんのたんにんしているぶんげいらんへ)
自分の担任している文芸欄へ
(のせたくらいですから、かれらのいわゆる)
載せたくらいですから、彼らのいわゆる
(どうじんなるものが、いちどにせつれいさんにたいする)
同人なるものが、一度に雪嶺さんに対する
(ひょうごがきにいらないといっていかったのを、)
評語が気に入らないと云って怒ったのを、
(おどろかしろきもしたし、またへんにもかんじました。)
驚ろきもしたし、また変にも感じました。
(しつれいながらじだいおくれだともおもいました。)
失礼ながら時代後れだとも思いました。
(ほうけんじだいのにんげんのだんたいのようにもかんがえました。)
封建時代の人間の団隊のようにも考えました。
(しかしそうかんがえたわたしはついにいっしゅの)
しかしそう考えた私はついに一種の
(さびしさをだっきゃくするわけにいかなかったのです。)
淋しさを脱却する訳に行かなかったのです。
(わたしはいけんのそういはいかにしたしいあいだがらでも)
私は意見の相違はいかに親しい間柄でも
(どうすることもできないとおもっていましたから、)
どうする事もできないと思っていましたから、
(わたしのいえにでいりをするわかいひとたちに)
私の家に出入りをする若い人達に
(じょげんはしても、そのひとびとのいけんのはっぴょうに)
助言はしても、その人々の意見の発表に
(よくあつをくわえるようなことは、ほかにじゅうだいな)
抑圧を加えるような事は、他に重大な
(りゆうのないかぎり、けっしてやったことがないのです。)
理由のない限り、けっしてやった事がないのです。
(わたしはほかのそんざいをそれほどにみとめている、)
私は他の存在をそれほどに認めている、
(すなわちほかにそれだけのじゆうをあたえているのです。)
すなわち他にそれだけの自由を与えているのです。
(だからむこうのきがすすまないのに、いくら)
だから向うの気が進まないのに、いくら
(わたしがおじょくをかんずるようなことがあっても、)
私が汚辱を感ずるような事があっても、
(けっしてじょりょくはたよめないのです。)
けっして助力は頼めないのです。
(そこがこじんしゅぎのさびしさです。)
そこが個人主義の淋しさです。
(こじんしゅぎはひとをもくひょうとしてこうはいを)
個人主義は人を目標として向背を
(けっするまえに、まずりひをあからめて、)
決する前に、まず理非を明らめて、
(きょしゅうをさだめるのだから、あるばあいには)
去就を定めるのだから、ある場合には
(たったひとりぼっちになって、)
たった一人ぼっちになって、
(さびしいこころもちがするのです。それはそのはずです。)
淋しい心持がするのです。それはそのはずです。
(まきざつぼくでもたばになっていればこころじょうぶですから。)
槙雑木でも束になっていれば心丈夫ですから。
(それからもうひとつごかいをふせぐために)
それからもう一つ誤解を防ぐために
(ひとことしておきたいのですが、)
一言しておきたいのですが、
(なんだかこじんしゅぎというとちょっと)
何だか個人主義というとちょっと
(こっかしゅぎのはんたいで、それをうちこわすように)
国家主義の反対で、それを打ち壊すように
(とられますが、そんなりくつのたたない)
取られますが、そんな理窟の立たない
(まんぜんとしたものではないのです。)
漫然としたものではないのです。
(いったいなになにしゅぎということはわたしの)
いったい何々主義という事は私の
(あまりこのまないところで、にんげんが)
あまり好まないところで、人間が
(そうひとつしゅぎにかたづけられるものでは)
そう一つ主義に片づけられるものでは
(あるまいとはおもいますが、せつめいのためですから、)
あるまいとは思いますが、説明のためですから、
(ここに)
ここに