私の個人主義21
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問題文
(はやむをえず、しゅぎというもじのしたに)
はやむをえず、主義という文字の下に
(いろいろのことをもうしあげます。)
いろいろの事を申し上げます。
(あるひとはいまのにほんはどうしても)
ある人は今の日本はどうしても
(こっかしゅぎでなければたちゆかないように)
国家主義でなければ立ち行かないように
(いいふらしまたそうかんがえています。)
云いふらしまたそう考えています。
(しかもこじんしゅぎなるものをじゅうりんしなければ)
しかも個人主義なるものを蹂躙しなければ
(こっかがほろびるようなことをしょうどうするものも)
国家が亡びるような事を唱道するものも
(すくなくはありません。けれどもそんな)
少なくはありません。けれどもそんな
(ばかきたはずはけっしてありようがないのです。)
馬鹿気たはずはけっしてありようがないのです。
(じじつわたくしどもはこっかしゅぎでもあり、せかいしゅぎでもあり、)
事実私共は国家主義でもあり、世界主義でもあり、
(どうじにまたこじんしゅぎでもあるのであります。)
同時にまた個人主義でもあるのであります。
(こじんのこうふくのきそとなるべきこじんしゅぎは)
個人の幸福の基礎となるべき個人主義は
(こじんのじゆうがそのないようになっているには)
個人の自由がその内容になっているには
(そういありませんが、かくじんのきょうゆうするその)
相違ありませんが、各人の享有するその
(じゆうというものはこっかのあんきにしたがって、)
自由というものは国家の安危に従って、
(かんだんけいのようにあがったりくだったりするのです。)
寒暖計のように上ったり下ったりするのです。
(これはりろんというよりもむしろじじつからでる)
これは理論というよりもむしろ事実から出る
(りろんといったほうがよいかもしれません、)
理論と云った方が好いかも知れません、
(つまりしぜんのじょうたいがそうなってくるのです。)
つまり自然の状態がそうなって来るのです。
(こっかがあぶなくなればこじんのじゆうがせばめられ、)
国家が危くなれば個人の自由が狭められ、
(こっかがたいへいのときにはこじんのじゆうがぼうちょうしてくる、)
国家が泰平の時には個人の自由が膨脹して来る、
(それがとうぜんのはなしです。いやしくもじんかくのあるいじょう、)
それが当然の話です。いやしくも人格のある以上、
(それをふみちがえて、こっかのほろびるかほろびないか)
それを踏み違えて、国家の亡びるか亡びないか
(というばあいに、かんちがいをしてただむやみに)
という場合に、疳違いをしてただむやみに
(こせいのはってんばかりめがけているひとはないはずです。)
個性の発展ばかりめがけている人はないはずです。
(わたしのいうこじんしゅぎのうちには、ひことがすんでも)
私のいう個人主義のうちには、火事が済んでも
(まだかじずきんがひつようだといって、ようもないのに)
まだ火事頭巾が必要だと云って、用もないのに
(きゅうくつがるひとにたいするちゅうこくもふくまれているとかんがえて)
窮屈がる人に対する忠告も含まれていると考えて
(ください。またれいになりますが、むかししわたしが)
下さい。また例になりますが、昔し私が
(こうとうがっこうにいたじぶん、あるかいをそうせつしたものが)
高等学校にいた時分、ある会を創設したものが
(ありました。そのなもしゅいもくわしいことはわすれて)
ありました。その名も主意も詳しい事は忘れて
(しまいましたが、なにしろそれはこっかしゅぎをひょうぼうした)
しまいましたが、何しろそれは国家主義を標榜した
(やかましいかいでした。もちろんわるいかいでもなんでも)
やかましい会でした。もちろん悪い会でも何でも
(ありません。とうじのこうちょうのきのしたひろじさんなどは)
ありません。当時の校長の木下広次さんなどは
(おおいたかたをいれていたようすでした。そのかいいんは)
大分肩を入れていた様子でした。その会員は
(みんなむねにめだるをさげていました。)
みんな胸にめだるを下げていました。
(わたしはめだるだけはごめんかぶりましたが、それでも)
私はめだるだけはご免蒙りましたが、それでも
(かいいんにはされたのです。むろんほっきにんでないから、)
会員にはされたのです。無論発起人でないから、
(ずいぶんいぞんもあったのですが、まあはいっても)
ずいぶん異存もあったのですが、まあ入っても
(さしつかえなかろうというしゅいからにゅうかいしました。)
差支なかろうという主意から入会しました。
(ところがそのはっかいしきがひろいこうどうでおこなわれたときに、)
ところがその発会式が広い講堂で行なわれた時に、
(なにかのきでしたろう、ひとりのかいいんがだんじょうにたって)
何かの機でしたろう、一人の会員が壇上に立って
(えんぜつめいたことをやりました。ところがかいいんでは)
演説めいた事をやりました。ところが会員では
(あったけれどもわたしのいけんにはおおいたはんたいのところも)
あったけれども私の意見には大分反対のところも
(あったので、わたしはそのまえずいぶんそのかいのしゅいを)
あったので、私はその前ずいぶんその会の主意を
(こうげきしていたようにきおくしています。しかるに)
攻撃していたように記憶しています。しかるに
(いよいよはっかいしきとなって、いまもうしたおとこのえんぜつを)
いよいよ発会式となって、今申した男の演説を
(きいてみると、まったくわたしのせつのはんばくにすぎないのです。)
聴いてみると、全く私の説の反駁に過ぎないのです。
(こいだかぐうぜんだかわかりませんけれどもいきおい)
故意だか偶然だか解りませんけれども勢い
(わたしはそれにたいしてとうべんのひつようがでてきました。)
私はそれに対して答弁の必要が出て来ました。
(わたしはしかたなしに、)
私は仕方なしに、