紫式部 源氏物語 絵合 4 與謝野晶子訳

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1 berry 7573 7.7 98.2% 468.5 3611 63 53 2025/03/29
2 omochi 7483 7.7 97.1% 474.4 3659 109 53 2025/03/29
3 subaru 7400 7.7 95.5% 467.0 3623 167 53 2025/03/29
4 HAKU 7312 7.5 96.7% 483.4 3658 123 53 2025/03/29

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問題文

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(げんじはそのなかのことにできのよいものでしかもすまとあかしのとくしょくの)

源氏はその中のことにできのよいものでしかも須磨と明石の特色の

(よくでているものをいちじょうずつえらんでいながらも、あかしのいえのかかれてあるえにも、)

よく出ている物を一帖ずつ選んでいながらも、明石の家の描かれてある絵にも、

(どうしているであろうと、こいしさがさそわれた。げんじがえをあつめているときいて、)

どうしているであろうと、恋しさが誘われた。源氏が絵を集めていると聞いて、

(ごんのちゅうなごんはいっそうじかでけっさくをこしらえることにどりょくした。まきもののじく、)

権中納言はいっそう自家で傑作をこしらえることに努力した。巻物の軸、

(ひものそうていにもいしょうをこらしているのである。それはさんがつのとおかごろのことで)

紐の装幀にも意匠を凝らしているのである。それは三月の十日ごろのことで

(あったから、もっともうららかなこうきせつで、ひとのこころものびのびとして)

あったから、最もうららかな好季節で、人の心ものびのびとして

(おもしろくばかりものがみられるときであったし、きゅうていでもさだまったぎょうじの)

おもしろくばかり物が見られる時であったし、宮廷でも定まった行事の

(なにもないときで、かいがやぶんがくのけっさくをいかにしてあつめようかとくしんをするばかりが)

何もない時で、絵画や文学の傑作をいかにして集めようかと苦心をするばかりが

(しごとになっていた。これをみなへいかへさしあげることにしてこうぜんのせきで)

仕事になっていた。これを皆陛下へ差し上げることにして公然の席で

(しょうぶをきめるほうがきょうみのあってよいことであるとげんじがまずいいだした。)

勝負を決めるほうが興味のあってよいことであると源氏がまず言い出した。

(そうほうからだすのであるからきゅうちゅうへあつまったえまきのかずはおおかった。)

双方から出すのであるから宮中へ集まった絵巻の数は多かった。

(しょうせつをえにしたものは、みるひとがすでにこころにつくっているげんそうを)

小説を絵にした物は、見る人がすでに心に作っている幻想を

(それにくわえてみることによってえのこうかがばいかされるものであるから)

それに加えてみることによって絵の効果が倍加されるものであるから

(そのしゅるいのものがおおい。うめつぼのおうにょごのほうはこてんてきなかちのさだまったものを)

その種類の物が多い。梅壺の王女御のほうは古典的な価値の定まった物を

(えにしたのがおおく、こきでんのはしんさくとしてちかごろのせけんにひょうばんのよいものを)

絵にしたのが多く、弘徽殿のは新作として近ごろの世間に評判のよい物を

(かかせたのがおおかったから、みためのにぎやかではでなのはこちらにあった。)

描かせたのが多かったから、見た目のにぎやかで派手なのはこちらにあった。

(ないしのすけやないしやみょうぶもえのかちをろんじることにいっしょけんめいになっていた。)

典侍や内侍や命婦も絵の価値を論じることに一所懸命になっていた。

(にょいんもきゅうちゅうにおいでになるころであったから、にょかんたちのろんぎするものを)

女院も宮中においでになるころであったから、女官たちの論議する者を

(ふたつにしてせつをたたかわせてごらんになった。さゆうにわけられたのである。)

二つにして説をたたかわせて御覧になった。左右に分けられたのである。

(うめつぼがたはひだりで、へいてんじ、じじゅうのないし、しょうしょうのみょうぶなどで、)

梅壺方は左で、平典侍、侍従の内侍、少将の命婦などで、

など

(うほうはだいにのてんじ、ちゅうじょうのみょうぶ、ひょうえのみょうぶなどであった。みなせけんから)

右方は大弐の典侍、中将の命婦、兵衛の命婦などであった。皆世間から

(ゆうしきしゃとしてみとめられているじょせいである。おもいおもいのことをしゅちょうするべんろんを)

有識者として認められている女性である。思い思いのことを主張する弁論を

(にょいんはきょうみぶかくおぼしめして、まずにほんさいしょのしょうせつであるたけとりのおきなと)

女院は興味深く思召して、まず日本最初の小説である竹取の翁と

(うつぼのとしかげのかんをさゆうにしてろんぴょうをおききになった。)

空穂の俊蔭の巻を左右にして論評をお聞きになった。

(「たけとりのろうじんとおなじようにふるくなったしょうせつではあっても、おもいあがったしゅじんこうの)

「竹取の老人と同じように古くなった小説ではあっても、思い上がった主人公の

(かぐやひめのせいかくににんげんのりそうのさいこうのものがあんじされていてよいのです。)

赫耶姫の性格に人間の理想の最高のものが暗示されていてよいのです。

(ひきんなことばかりがおもしろいひとにはわからないでしょうが」)

卑近なことばかりがおもしろい人にはわからないでしょうが」

(とひだりはいう。みぎは、 「かぐやひめののぼったてんじょうのせかいというものは)

と左は言う。右は、 「赫耶姫の上った天上の世界というものは

(くうそうのしょさんにすぎません。このよのせいかつのうつしてあるところはあまりにひきぞくてきで)

空想の所産にすぎません。この世の生活の写してある所はあまりに非貴族的で

(うつくしいものではありません。きゅうていのびょうしゃなどはすこしもないではありませんか。)

美しいものではありません。宮廷の描写などは少しもないではありませんか。

(かぐやひめはたけとりのおきなのひとつのいえをてらすだけのひかりしかなかったようですね。)

赫耶姫は竹取の翁の一つの家を照らすだけの光しかなかったようですね。

(あべのおおしがたいきんでかったけがわがめらめらとやけたとかいてあったり、)

安部の多が大金で買った毛皮がめらめらと焼けたと書いてあったり、

(あれだけほうらいのしまをそうぞうしていえるくらもちのみこがにせものをもってきて)

あれだけ蓬莱の島を想像して言える倉持の皇子が贋物を持って来て

(ごまかそうとするところがとてもいやです」)

ごまかそうとするところがとてもいやです」

(このたけとりのえはこせのおうみのふでで、ことばがきはつらゆきがしている。かんやがみにからにしきのふちが)

この竹取の絵は巨勢の相覧の筆で、詞書は貫之がしている。紙屋紙に唐錦の縁が

(つけられてあって、あかむらさきのひょうし、したんのじくでおんけんなていさいである。)

付けられてあって、赤紫の表紙、紫檀の軸で穏健な体裁である。

(「としかげはぼうふうとなみにもてあそばれていきょうをひょうはくしてもげいじゅつをもとめるこころがつよくて、)

「俊蔭は暴風と波に弄ばれて異境を漂泊しても芸術を求める心が強くて、

(しまいにはがいこくにもにほんにもないおんがくしゃになったというすじがたけとりものがたりよりずっと)

しまいには外国にも日本にもない音楽者になったという筋が竹取物語よりずっと

(すぐれております。それにえもにほんとがいこくとのたいしょうがおもしろく)

すぐれております。それに絵も日本と外国との対照がおもしろく

(あつかわれているてんですぐれております」 とうほうはしゅちょうするのであった。)

扱われている点ですぐれております」 と右方は主張するのであった。

(これはしきしじのかみにかかれ、あおいひょうしとおうぎょくのじくがつけられてあった。)

これは式紙地の紙に書かれ、青い表紙と黄玉の軸が付けられてあった。

(えはつねのり、じはみちかぜであったからはでなきぶんにみちている。ひだりはそのてんが)

絵は常則、字は道風であったから派手な気分に満ちている。左はその点が

(ふそくであった。つぎはいせものがたりとしょうさんみがあわされた。このろんそうもひととおりでは)

不足であった。次は伊勢物語と正三位が合わされた。この論争も一通りでは

(すまない。こんどもみぎはみためがおもしろくてしげきてきできゅうちゅうのもようも)

済まない。今度も右は見た目がおもしろくて刺戟的で宮中の模様も

(かかれてあるし、げんだいにえんのおおいばしょやひとがうつされてあるてんで)

描かれてあるし、現代に縁の多い場所や人が写されてある点で

(よさそうにはみえた。へいてんじがいった。 )

よさそうには見えた。平典侍が言った。

(「いせのうみのふかきこころをたどらずてふりにしあととなみやけつべき )

「伊勢の海の深き心をたどらずて古りにし跡と波や消つべき

(ただのれんあいだんをぎこうだけでつづってあるようなしょうせつになりひらあそんをまけさせて)

ただの恋愛談を技巧だけで綴ってあるような小説に業平朝臣を負けさせて

(なるものですか」 みぎのてんじがいう。)

なるものですか」 右の典侍が言う。

(くものうえにおもいのぼれるこころにはちひろのそこもはるかにぞみる )

雲の上に思ひのぼれる心には千尋の底もはるかにぞ見る

(にょいんがひだりのかたをおもちになるおことばをくだされた。)

女院が左の肩をお持ちになるお言葉を下された。

(「ひょうえおうのせいしんはりっぱだけれどざいごちゅうじょういじょうのものではない )

「兵衛王の精神はりっぱだけれど在五中将以上のものではない

(みるめこそうらぶれぬらめとしへにしいせをのあまのなをやしずめん」)

見るめこそうらぶれぬらめ年経にし伊勢をの海人の名をや沈めん」

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