風の又三郎 12

順位 | 名前 | スコア | 称号 | 打鍵/秒 | 正誤率 | 時間(秒) | 打鍵数 | ミス | 問題 | 日付 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | りく | 6252 | S | 6.3 | 98.1% | 365.8 | 2332 | 45 | 47 | 2025/04/10 |
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問題文
(みんなはかやのあいだの、ちいさなみちをやまのほうへすこしのぼりますと、)
みんなは萱の間の、小さなみちを山の方へ少しのぼりますと、
(そのみなみがわにむいたくぼみに、くりのきがあちこちたって、)
その南側にむいた窪みに、栗の木があちこち立って、
(したにはぶどうがもくもくしたおおきなやぶになっていました。)
下には葡萄がもくもくした大きな藪になっていました。
(「こごおれみっつけだのだがら、みんなあんまりとるやなぃぞ。」)
「こごおれ見っ附だのだがら、みんなあんまりとるやなぃぞ。」
(こうすけがいいました。)
耕助がいいました。
(するとさぶろうは、)
すると三郎は、
(「おいらくりのほうをとるんだい。」といって、)
「おいら栗の方をとるんだい。」といって、
(いしをひろってひとつのえだへなげました。あおいいががひとつおちました。)
石を拾って一つの枝へ投げました。青いいがが一つ落ちました。
(またさぶろうはそれをぼうきれでむいて、まだしろいくりをふたつとりました。)
又三郎はそれを棒きれで剥いて、まだ白い栗を二つとりました。
(みんなはぶどうのほうへいっしょうけんめいでした。)
みんなは葡萄の方へ一生けん命でした。
(そのうちこうすけがもひとつのやぶへいこうと、いっぽんのくりのきのしたをとおりますと、)
そのうち耕助がも一つの藪へ行こうと、一本の栗の木の下を通りますと、
(いきなりうえからしずくが、いっぺんにざっとおちてきましたので、)
いきなり上から雫が、一ぺんにざっと落ちてきましたので、
(こうすけはかたからせなかから、みずへはいったようになりました。)
耕助は肩からせなかから、水へ入ったようになりました。
(こうすけはおどろいてくちをあいてうえをみましたら、)
耕助は愕いて口をあいて上を見ましたら、
(いつかきのうえにまたさぶろうがのぼっていて、)
いつか木の上に又三郎がのぼっていて、
(なんだかすこしわらいながら、じぶんもそでぐちでかおをふいていたのです。)
なんだか少しわらいながら、じぶんも袖ぐちで顔をふいていたのです。
(「わあい、またさぶろうなにする。」こうすけはうらめしそうにきをみあげました。)
「わあい、又三郎何する。」耕助はうらめしそうに木を見あげました。
(「かぜがふいたんだい。」さぶろうはうえでくつくつわらいながらいいました。)
「風が吹いたんだい。」三郎は上でくつくつわらいながらいいました。
(こうすけはきのしたをはなれて、またべつのやぶでぶどうをとりはじめました。)
耕助は樹の下をはなれて、また別の藪で葡萄をとりはじめました。
(もうこうすけはじぶんでももてないくらい、あちこちへためていて、)
もう耕助はじぶんでも持てないくらい、あちこちへためていて、
(くちもむらさきいろになって、まるでおおきくみえました。)
口も紫いろになって、まるで大きく見えました。
(「さあ、このくらいもってもどらなぃが。」いちろうがいいました。)
「さあ、この位持って戻らなぃが。」一郎がいいました。
(「おら、もっととってぐじゃ。」こうすけがいいました。)
「おら、もっと取ってぐじゃ。」耕助がいいました。
(そのときこうすけはまたあたまから、つめたいしずくをざあっとかぶりました。)
そのとき耕助はまた頭から、つめたい雫をざあっとかぶりました。
(こうすけはまたびっくりしたように、きをみあげましたが、)
耕助はまたびっくりしたように、木を見上げましたが、
(こんどはさぶろうはきのうえにはいませんでした。)
今度は三郎は樹の上には居ませんでした。
(けれどもきのむこうがわに、さぶろうのねずみいろのひじもみえていましたし、)
けれども樹の向う側に、三郎の鼠いろのひじも見えていましたし、
(くつくつわらうこえもしましたから、こうすけはもうすっかりおこってしまいました。)
くつくつ笑う声もしましたから、耕助はもうすっかり怒ってしまいました。
(「わあいまたさぶろう、まだひとさみずかげだな。」)
「わあい又三郎、まだひとさ水掛げだな。」
(「かぜがふいたんだい。」)
「風が吹いたんだい。」
(みんなはどっとわらいました。)
みんなはどっと笑いました。
(「わあいまたさぶろう、うなそごできゆすったけぁなあ。」)
「わあい又三郎、うなそごで木ゆすったけぁなあ。」
(みんなはどっとまたわらいました。)
みんなはどっとまた笑いました。
(するとこうすけは、うらめしそうにしばらくだまってさぶろうのかおをみながら、)
すると耕助は、うらめしそうにしばらくだまって三郎の顔を見ながら、
(「うあいまたさぶろう、うななどあ、せかいになくてもいなあぃ。」)
「うあい又三郎、汝(ウナ)などあ、世界になくてもいなあぃ。」
(するとまたさぶろうはずるそうにわらいました。)
すると又三郎はずるそうに笑いました。
(「やあこうすけくん、しっけいしたねえ。」)
「やあ耕助君、失敬したねえ。」
(こうすけはなにかもっとべつのことをいおうとおもいましたが、)
耕助は何かもっと別のことをいおうと思いましたが、
(あんまりおこってしまって、かんがえだすことができませんでしたので、)
あんまり怒ってしまって、考え出すことが出来ませんでしたので、
(またおなじようにさけびました。)
また同じように叫びました。
(「うあい、うあいだが、またさぶろう、うなみだぃなかぜなど、)
「うあい、うあいだが、又三郎、うなみだぃな風など、
(せかいじゅうになくてもいいなあ、うわあい。」)
世界中になくてもいいなあ、うわあい。」
(「しっけいしたよ。だってあんまりきみも、ぼくへいじわるをするもんだから。」)
「失敬したよ。だってあんまりきみも、ぼくへ意地悪をするもんだから。」
(またさぶろうはすこしめをぱちぱちさせて、きのどくそうにいいました。)
又三郎は少し眼をパチパチさせて、気の毒そうにいいました。
(けれどもこうすけのいかりは、なかなかとけませんでした。)
けれども耕助のいかりは、仲々解けませんでした。
(そしてさんどおなじことをくりかえしたのです。)
そして三度同じことをくりかえしたのです。
(「うわい、またさぶろう、かぜなどあせかいじゅうになくてもいな、うわい。」)
「うわい、又三郎、風などあ世界中に無くてもいな、うわい。」