銀河鉄道の夜 53

(さそりの火 1/3)
まったく向こう岸の野原に大きなまっ赤な火が燃され、その黒いけむりは高くききょういろのつめたそうな天をも焦がしそうでした。
ルビーよりも赤くすきとおりリチウムよりもうつくしく酔ったようになってその火は燃えているのでした。
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問題文
(かわのむこうぎしがにわかにあかくなりました。)
川の向こう岸がにわかに赤くなりました。
(やなぎのきやなにかもまっくろにすかしだされ、)
やなぎの木や何かもまっ黒にすかし出され、
(みえないあまのがわのなみも、ときどきちらちらはりのようにあかくひかりました。)
見えない天の川の波も、ときどきちらちら針のように赤く光りました。
(まったくむこうぎしののはらにおおきなまっかなひがもされ、)
まったく向こう岸の野原に大きなまっ赤な火が燃され、
(そのくろいけむりはたかく)
その黒いけむりは高く
(ききょういろのつめたそうなてんをもこがしそうでした。)
ききょういろのつめたそうな天をも焦がしそうでした。
(るびーよりもあかくすきとおり)
ルビーよりも赤くすきとおり
(りちうむよりもうつくしくよったようになって)
リチウムよりもうつくしく酔ったようになって
(そのひはもえているのでした。)
その火は燃えているのでした。
(「あれはなんのひだろう。)
「あれはなんの火だろう。
(あんなあかくひかるひはなにをもやせばできるんだろう。」)
あんな赤く光る火は何を燃やせばできるんだろう。」
(じょばんにがいいました。)
ジョバンニがいいました。
(「さそりのひだな。」)
「さそりの火だな。」
(かむぱねるらがまたちずとくびっぴきしてこたえました。)
カムパネルラがまた地図と首っ引きして答えました。
(「あら、さそりのひのことならあたししってるわ。」)
「あら、さそりの火のことならあたし知ってるわ。」
(「さそりのひってなんだい。」)
「さそりの火ってなんだい。」
(じょばんにがききました。)
ジョバンニがききました。
(「さそりがやけてしんだのよ。)
「さそりがやけて死んだのよ。
(そのひがいまでももえてるって、あたしなんべんもおとうさんからきいたわ。」)
その火がいまでも燃えてるって、あたしなんべんもお父さんから聞いたわ。」
(「さそりって、むしだろう。」)
「さそりって、虫だろう。」
(「ええ、さそりはむしよ。だけどいいむしだわ。」)
「ええ、さそりは虫よ。だけどいい虫だわ。」
(「さそり、いいむしじゃないよ。)
「さそり、いい虫じゃないよ。
(ぼく、はくぶつかんであるこーるにつけてあるのみた。)
ぼく、博物館でアルコールにつけてあるの見た。
(おにこんなかぎがあって、それでさされるとしぬってせんせいがいったよ。」)
尾にこんなかぎがあって、それでさされると死ぬって先生がいったよ。」
(「そうよ。だけどいいむしだわ、おとうさんこういったのよ。)
「そうよ。だけどいい虫だわ、お父さんこういったのよ。