銀河鉄道の夜 21

宮沢賢治 作
カムパネルラが、ふしぎそうに立ちどまって、岩から黒い細長いさきのとがったくるみの実のようなものをひろいました。
「くるみの実だよ。そら、たくさんある。流れてきたんじゃない。岩の中に入ってるんだ。」
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問題文
(そのしろいいわになったところのいりぐちに、)
その白い岩になったところの入口に、
([ぷりおきしんかいがん]という、せともののつるつるしたひょうさつがたって、)
[プリオキシン海岸]という、瀬戸物のつるつるした表札が立って、
(むこうのなぎさには、ところどころ、ほそいてつのらんかんもうえられ、)
向こうの渚には、ところどころ、細い鉄の欄干も植えられ、
(もくせいのきれいなべんちもおいてありました。)
木製のきれいなベンチも置いてありました。
(「おや、へんなものがあるよ。」)
「おや、へんなものがあるよ。」
(かむぱねるらが、ふしぎそうにたちどまって、)
カムパネルラが、ふしぎそうに立ちどまって、
(いわからくろいほそながいさきのとがったくるみのみのようなものをひろいました。)
岩から黒い細長いさきのとがったくるみの実のようなものをひろいました。
(「くるみのみだよ。そら、たくさんある。)
「くるみの実だよ。そら、たくさんある。
(ながれてきたんじゃない。いわのなかにはいってるんだ。」)
流れてきたんじゃない。岩の中に入ってるんだ。」
(「おおきいね、このくるみ、ばいもあるね。こいつはすこしもいたんでない。」)
「大きいね、このくるみ、倍もあるね。こいつはすこしもいたんでない。」
(「はやくあすこへいってみよう。きっとなにかほってるから。」)
「早くあすこへ行って見よう。きっと何か掘ってるから。」
(ふたりは、ぎざぎざのくろいくるみのみをもちながら、)
ふたりは、ぎざぎざの黒いくるみの実を持ちながら、
(またさっきのほうへちかよっていきました。)
またさっきの方へ近よって行きました。
(ひだりてのなぎさには、なみがやさしいいなずまのようにもえてよせ、)
左手の渚には、波がやさしい稲妻のように燃えて寄せ、
(みぎてのがけには、いちめんぎんやかいがらでこさえたような)
右手の崖には、いちめん銀や貝がらでこさえたような
(すすきのほがゆれたのです。)
すすきの穂がゆれたのです。
(だんだんちかづいてみると、)
だんだん近づいて見ると、
(ひとりのせいのたかい、ひどいきんがんきょうをかけ、ながぐつをはいたがくしゃらしいひとが、)
ひとりのせいの高い、ひどい近眼鏡をかけ、長靴をはいた学者らしい人が、
(てちょうになにかせわしそうにかきつけながら、)
手帳に何かせわしそうに書きつけながら、
(つるはしをふりあげたり、)
つるはしをふりあげたり、
(すこーぷ(こがたのしゃべる)をつかったりしている、)
スコープ(小形のシャベル)をつかったりしている、
(さんにんのじょしゅらしいひとたちにむちゅうでいろいろさしずをしていました。)
三人の助手らしい人たちに夢中でいろいろ指図をしていました。
(「そこのそのとっきをこわさないように。)
「そこのその突起をこわさないように。
(すこーぷをつかいたまえ、すこーぷを。)
スコープを使いたまえ、スコープを。
(おっと、もすこしとおくからほって。いけない、いけない。)
おっと、も少し遠くから掘って。いけない、いけない。
(なぜそんならんぼうをするんだ。」)
なぜそんな乱暴をするんだ。」
(みると、そのしろいやわらかないわのなかから、)
見ると、その白い柔らかな岩の中から、
(おおきなおおきなあおじろいけだもののほねが、)
大きな大きな青じろいけだものの骨が、
(よこにたおれてつぶれたというふうになって、)
横に倒れてつぶれたというふうになって、
(はんぶんいじょうほりだされていました。)
半分以上堀り出されていました。