半七捕物帳 津の国屋5
岡本綺堂 半七捕物帳シリーズ 第16話
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問題文
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(じぶんのうちのまえまでぶじにおくりとどけてもらって、もじはるははじめてほんとうに)
二
自分の家の前まで無事に送り届けて貰って、文字春は初めてほんとうに
(じぶんのたましいをとりもどしたようなこころもちになった。かのじょはじぶんをおくってくれたれいごころに、)
自分の魂を取り戻したような心持になった。彼女は自分を送ってくれた礼心に、
(かねきちをうちへよびこんで、ちゃでもいっぱいのんでいけとすすめた。かのじょはこおんなと)
兼吉を内へ呼び込んで、茶でも一杯のんで行けと勧めた。彼女は小女と
(ふたりぐらしであるので、すぐそのこおんなをつかいにだして、きんじょへかしをかいに)
二人暮らしであるので、すぐその小女を使に出して、近所へ菓子を買いに
(やりなどした。かねきちもことわりかねてあがりこむと、もじはるはうちわを)
やりなどした。兼吉もことわり兼ねてあがり込むと、文字春は団扇を
(すすめながらいった。)
すすめながら云った。
(「ほんとうにこんやはおかげさまでたすかりました。しんじんまいりもあてにゃあ)
「ほんとうに今夜はおかげさまで助かりました。信心まいりも的にゃあ
(ならない。あたしはよっぽどつみがふかいのかしら。それにしてもきになって)
ならない。あたしは余っぽど罪が深いのかしら。それにしても気になって
(ならないのは・・・・・・。あのこがつのくにやへたずねていくというのは、)
ならないのは……。あの娘が津の国屋へたずねて行くというのは、
(いったいどういうわけなんでしょうね」)
一体どういう訳なんでしょうね」
(かのじょはかねきちをむりによびこんだのも、じつはこのおそろしそうなひみつを)
彼女は兼吉を無理に呼び込んだのも、実はこの恐ろしそうな秘密を
(ききだしたいためであった。かねきちもはじめはいいかげんにことばをにごしていたが、)
聞き出したいためであった。兼吉も初めはいい加減に詞をにごしていたが、
(じぶんがうっかりくちをすべらしてしまったいじょう、そのことばじちをとって)
自分がうっかり口をすべらしてしまった以上、その詞質を取って
(といつめるので、かれもとうとうはくじょうしないわけにはいかなくなった。)
問い詰めるので、彼もとうとう白状しないわけには行かなくなった。
(「でいりばのうわさをするようでよくねえが、ししょうはおいらからみるとはんぶんもとしが)
「出入り場の噂をするようで良くねえが、師匠はおいらから見ると半分も年が
(ちがうんだから、なんにもしらねえはずだ。そのこはじぶんのなをなんとか)
違うんだから、なんにも知らねえ筈だ。その娘は自分の名をなんとか
(いったかえ」)
云ったかえ」
(「いいえ。こっちできいてもだまっているんです。おかしいじゃありませんか」)
「いいえ。こっちで訊いても黙っているんです。おかしいじゃありませんか」
(「むむ。おかしい。そのこのなはおやすというんだろうとおもう。)
「むむ。おかしい。その娘の名はお安というんだろうと思う。
(はちおうじのほうでしんだはずだ」)
八王子の方で死んだ筈だ」
など
(もじはるはいよいよみをかたくして、ひとひざのりだした。)
文字春はいよいよ身を固くして、ひと膝のり出した。
(「そうです、そうですよ。はちおうじのほうからきたといっていましたよ。)
「そうです、そうですよ。八王子の方から来たと云っていましたよ。
(じゃあ、あのこははちおうじのほうでしんだんですか」)
じゃあ、あの娘は八王子の方で死んだんですか」
(「なんでもいどへみをなげてしんだといううわさだが、とおいところのことだから)
「なんでも井戸へ身を投げて死んだという噂だが、遠いところの事だから
(たしかにはわからねえ。みをなげたかくびをくくったか、どっちにしても)
確かには判らねえ。身を投げたか首をくくったか、どっちにしても
(へんしにはちげえねえんだ」)
変死には違えねえんだ」
(「まあ」と、もじはるはまっさおになった。「いったいどうしてしんだんでしょうね」)
「まあ」と、文字春は真っ蒼になった。「一体どうして死んだんでしょうね」
(「こんなことはつのくにやでもかくしているし、おいらたちもしらねえかおをして)
「こんなことは津の国屋でもかくしているし、おいら達も知らねえ顔をして
(いるんだが、おめえはこんやそのみちづれになってきたというから、まんざら)
いるんだが、おめえは今夜その道連れになって来たというから、まんざら
(かかりあいのねえこともねえから」)
係り合いのねえこともねえから」
(「あら、とうりょう。いやですよ。あたしなんにもかかりあいなんぞありゃしませんよ」)
「あら、棟梁。忌ですよ。あたしなんにも係り合いなんぞありゃしませんよ」
(「まあさ。ともかくもそのむすめといっしょにきたんだから、まんざらいんねんの)
「まあさ。ともかくも其の娘と一緒に来たんだから、まんざら因縁の
(ねえことはねえ。それだからないしょでおめえにだけははなしてきかせる。)
ねえことはねえ。それだから内所でおめえにだけは話して聞かせる。
(だが、せけんにはさたなしだよ。おいらがこんなことをしゃべったなんていうことが)
だが、世間には沙汰無しだよ。おいらがこんな事をしゃべったなんていうことが
(つのくにやへしれると、でいりばをいっけんしくじるようなことができるかも)
津の国屋へ知れると、出入り場を一軒しくじるような事が出来るかも
(しれねえから。いいかえ」
もじはるはだまってうなずいた。)
知れねえから。いいかえ」
文字春は黙ってうなずいた。
