半七捕物帳 津の国屋8

順位 | 名前 | スコア | 称号 | 打鍵/秒 | 正誤率 | 時間(秒) | 打鍵数 | ミス | 問題 | 日付 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | なり | 4634 | C++ | 4.9 | 94.2% | 492.2 | 2428 | 147 | 39 | 2025/05/11 |
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問題文
(もじはるはそのばんおちおちねむられなかった。なでしこのゆかたをきたわかいおんなが)
三 文字春はその晩おちおち眠られなかった。撫子の浴衣を着た若い女が
(かやのそとからのぞいているようなゆめにおそわれて、すこしうとうとするかとおもうと)
蚊帳の外から覗いているような夢におそわれて、少しうとうとするかと思うと
(すぐにめがさめた。あいにくむしあついよるで、かのじょのまくらがみはびっしょり)
すぐに眼がさめた。あいにく蒸し暑い夜で、彼女の枕紙はびっしょり
(ぬれてしまった。あくるあさもあたまがおもくてむねがつかえて、あさめしのぜんに)
濡れてしまった。あくる朝も頭が重くて胸がつかえて、あさ飯の膳に
(むかうきにもなれなかった。きのうとおみちをあるいたのであつさにあたったのかも)
むかう気にもなれなかった。きのう遠路を歩いたので暑さにあたったのかも
(しれないと、こおんなのてまえはごまかしていたが、かのじょのあたまのなかはいいしれない)
知れないと、小女の手前は誤魔かしていたが、彼女の頭のなかは云い知れない
(きょうふにうめられていた。ぶつだんにはせんこうをそなえて、かのじょはよそながら)
恐怖に埋められていた。仏壇には線香を供えて、彼女はよそながら
(おやすというむすめのえこうをしていた。)
お安という娘の回向をしていた。
(きんじょのむすめたちはいつものとおりにけいこにきた。つのくにやのおゆきもきた。)
近所の娘たちはいつもの通りに稽古に来た。津の国屋のお雪も来た。
(おゆきのぶじなかおをみて、もじはるはまずはほっとあんしんしたが、そのうしろには)
お雪の無事な顔をみて、文字春はまずはほっと安心したが、そのうしろには
(めにみえないおやすのかげがつきまとっているのではないかとおもうと、)
眼にみえないお安の影が付きまとっているのではないかと思うと、
(かのじょはおゆきとむかいあうのがなんだかうすきみわるかった。けいこがすむと、)
彼女はお雪と向い合うのがなんだか薄気味悪かった。稽古が済むと、
(おゆきはこんなことをいいだした。)
お雪はこんなことを云い出した。
(「おしょさん、ゆうべはへんなことがあったんですよ」)
「お師匠さん、ゆうべは変なことがあったんですよ」
(もじはるはむねをおどらせた。)
文字春は胸をおどらせた。
(「かれこれいつつはん(ごごくじ)ごろでしたろう」と、おゆきははなした。)
「かれこれ五ツ半(午後九時)頃でしたろう」と、お雪は話した。
(「あたしがみせのまえのえんだいにこしをかけてすずんでいると、しろじのゆかたをきた・・・・・・)
「あたしが店の前の縁台に腰をかけて涼んでいると、白地の浴衣を着た……
(ちょうどあたしとおないどしくらいのむすめがうちのまえにたって、なんだかしさいありそうに)
丁度あたしと同い年くらいの娘が家の前に立って、なんだか仔細ありそうに
(うちのなかをいつまでものぞいているんです。どうもおかしなひとだとおもっていると、)
家の中をいつまでも覗いているんです。どうもおかしな人だと思っていると、
(みせのちょうたろうもきがついて、なにかごようですかとこえをかけると、そのむすめは)
店の長太郎も気がついて、なにか御用ですかと声をかけると、その娘は
(だまってすうといってしまったんです。それからすこしたつと、)
黙ってすうと行ってしまったんです。それから少し経つと、
(しらないかごやがきてかごちんをくれといいますから、それはまちがいだろう、)
知らない駕籠屋が来て駕籠賃をくれと云いますから、それは間違いだろう、
(ここのうちでかごなんかにのったものはないというと、いいえ、よつやみつけのそばから)
ここの家で駕籠なんかに乗った者はないと云うと、いいえ、四谷見附のそばから
(むすめさんをのせてきました。そのむすめさんはちょうないのかどでおりて、かごちんはつのくにやへ)
娘さんを乗せて来ました。その娘さんは町内の角で降りて、駕籠賃は津の国屋へ
(いってもらってくれといったから、それでここへうけとりにきたんだといって、)
行って貰ってくれと云ったから、それでここへ受け取りに来たんだと云って、
(どうしてもきかないんです」 「それから、どうして・・・・・・」)
どうしても肯かないんです」 「それから、どうして……」
(「それでも、こっちじゃまったくおぼえがないんですもの」と、おゆきは)
「それでも、こっちじゃ全く覚えがないんですもの」と、お雪は
(ふへいらしくいった。「ばんとうもちょうばからでてきて、いったいそのむすめは)
不平らしく云った。「番頭も帳場から出て来て、一体その娘は
(どんなおんなだときくと、としごろはじゅうしちはちでなでしこのもようのゆかたをきていたと)
どんな女だと訊くと、年ごろは十七八で撫子の模様の浴衣を着ていたと
(いうんです。してみると、たったいまここのみせをのぞいていたむすめにそういない。)
云うんです。してみると、たった今ここの店を覗いていた娘に相違ない。
(そんないいかげんなことをいって、かごちんをふみたおしてにげたんだろうと)
そんないい加減なことを云って、駕籠賃を踏み倒して逃げたんだろうと
(いっていると、おくからおとっさんがでてきて、たというそにもしろ、)
云っていると、奥からお父っさんが出て来て、たとい嘘にもしろ、
(つのくにやののれんをさされたのがこっちもふしょうだ。かごやさんにそんをさせては)
津の国屋の暖簾を指されたのがこっちも不祥だ。駕籠屋さんに損をさせては
(きのどくだといってむこうのいうとおりにかごちんをはらってやったら、かごやもよろこんで)
気の毒だと云ってむこうの云う通りに駕籠賃を払ってやったら、駕籠屋も喜んで
(かえりました。おとっさんはそれぎりでおくへはいってしまって、べつになんにも)
帰りました。お父っさんはそれぎりで奥へはいってしまって、別になんにも
(いいませんでしたけれど、あとでみせのものたちは、ほんとうにいまどきのむすめは)
云いませんでしたけれど、あとで店の者たちは、ほんとうに今どきの娘は
(ゆだんがならない。あんななまわかいくせにかごちんをふみたおしたりなんかして、)
油断がならない。あんな生若い癖に駕籠賃を踏み倒したりなんかして、
(あれがだんだんぞうちょうするとかたりやつつもたせでもやりかねないと・・・・・・」)
あれがだんだん増長すると騙りや美人局でもやり兼ねないと……」
(「そりゃまったくですわね」)
「そりゃ全くですわね」