半七捕物帳 津の国屋12
岡本綺堂 半七捕物帳シリーズ 第16話
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問題文
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(でいりばのわざわいをむなしくながめているのは、いかにもふにんじょうのようではあるが、)
出入り場の禍いをむなしく眺めているのは、いかにも不人情のようではあるが、
(もんだいがもんだいであるだけに、さしあたりどうすることもできないと、かねきちも)
問題が問題であるだけに、差し当りどうすることも出来ないと、兼吉も
(かおをしかめながらいった。かれはもじはるにむかって、いっそおまえがつのくにやへ)
顔をしかめながら云った。彼は文字春にむかって、いっそお前が津の国屋へ
(いって、おやすのゆうれいとみちづれになったことをしょうじきにはなしたらどうだとすすめたが、)
行って、お安の幽霊と道連れになったことを正直に話したらどうだと勧めたが、
(もじはるはみぶるいしてかぶりをふった。そんなことをうかつにくちばしって、)
文字春は身ぶるいして頭をふった。そんなことを迂闊に口走って、
(じぶんがどんなたたりをうけるかもしれないと、かのじょはひたすらおそれていた。)
自分がどんな祟りを受けるかも知れないと、彼女はひたすら恐れていた。
(こんなわけで、もじはるはつのくにやのうんめいをあやぶむばかりでなく、じぶんの)
こんなわけで、文字春は津の国屋の運命を危ぶむばかりでなく、自分の
(みのうえまでがふあんでならなかった。かのじょはまいにちけいこにかよってくるおゆきを)
身の上までが不安でならなかった。彼女は毎日稽古に通ってくるお雪を
(みるのさえうすきみわるくて、いつもそのうしろにはおやすのぼうれいがかげのように)
見るのさえ薄気味悪くて、いつも其のうしろにはお安の亡霊が影のように
(つきまとっているのではないかとおそれられてならなかった。そのうちに)
付きまとっているのではないかと恐れられてならなかった。そのうちに
(こんなうわさがまたもやちょうないのおんなゆからつたわった。)
こんな噂が又もや町内の女湯から伝わった。
(つのくにやのじょちゅうでおまつという、ことしはたちのおんなが、よるのよっつ(じゅうじ)すこしまえに)
津の国屋の女中でお松という、ことし二十歳の女が、夜の四ツ(十時)少し前に
(ゆやからかえってくると、うすぐらいよこちょうからわかいおんながまぼろしのようにあらわれて、)
湯屋から帰ってくると、薄暗い横町から若い女がまぼろしのように現われて、
(すれちがいながらおまつにこえをかけた。)
すれ違いながらお松に声をかけた。
(「はやくひまをおとんなさいよ。つのくにやはつぶれるから」)
「早く暇をお取んなさいよ。津の国屋は潰れるから」
(びっくりしてみかえると、そのおんなのすがたはもうみえなかった。おまつはきゅうにこわくなって)
びっくりして見返ると、その女の姿はもう見えなかった。お松は急に怖くなって
(いきをきってにげてかえった。しゅじんにむかってまさかにそんなことを)
息を切って逃げて帰った。主人にむかって真逆にそんなことを
(うちあけるわけにもいかないので、かのじょはほうばいのおよねにそっとはなすと、)
打ち明けるわけにも行かないので、彼女は朋輩のお米にそっと話すと、
(およねはまたそれをみせのものどもにもらした。みせのものばかりでなく、おんなゆへいっても)
お米は又それを店の者どもに洩らした。店の者ばかりでなく、女湯へ行っても
(およねはそれをきんじょのひとたちにはなした。それがまたちょうないのうわさのたねになった。)
お米はそれを近所の人達に話した。それがまた町内の噂の種になった。
など
(いつのだいにも、すべてのことがおひれをそえていいふらされるのがせけんの)
いつの代にも、すべてのことが尾鰭を添えて云い触らされるのが世間の
(ならいである。ましてめいしんのつよいこのじだいのひとたちは、こうしたいやなうわさが)
習いである。まして迷信の強いこの時代の人たちは、こうした忌な噂が
(たびたびつづくのをけっしてききながしているものはなかった。うわさはそれからそれへと)
たびたびつづくのを決して聞き流している者はなかった。噂はそれからそれへと
(つたえられて、つのくにやにはしりょうのたたりがあるということが、たんにゆやかみゆいどこの)
伝えられて、津の国屋には死霊の祟りがあるということが、単に湯屋髪結床の
(うわさばなしばかりでなく、かたぎのあきんどのみせさきでもまじめにささやかれるように)
噂話ばかりでなく、堅気の商人の店先でもまじめにささやかれるように
(なってきた。)
なって来た。
(あしたがくさいちというひに、おゆきはいつものようにもじはるのところへけいこにきた。)
あしたが草市という日に、お雪はいつものように文字春のところへ稽古に来た。
(ちょうどほかにあいでしのないのをみて、かのじょはししょうにこごえではなした。)
丁度ほかに相弟子のないのを見て、彼女は師匠に小声で話した。
(「おしょさん。おまえさんもおききでしょう。あたしのうちにはしりょうのたたりが)
「お師匠さん。おまえさんもお聞きでしょう。あたしの家には死霊の祟りが
(あるとかいううわさを・・・・・・」)
あるとかいう噂を……」
(もじはるはなんとへんじをしていいか、すこしゆきづまったが、どうもしょうじきなことを)
文字春はなんと返事をしていいか、少しゆき詰まったが、どうも正直なことを
(いいにくいので、かのじょはわざとそらとぼけていた。)
云いにくいので、彼女はわざと空とぼけていた。
(「へえ。そんなことをだれかいうものがあるんですか。まあ、けしからない。)
「へえ。そんなことを誰か云うものがあるんですか。まあ、けしからない。
(どういうわけでしょうかねえ」)
どういうわけでしょうかねえ」
(「ほうぼうでそんなことをいうもんですから、おとっさんやおっかさんも)
「方々でそんなことを云うもんですから、お父っさんや阿母さんも
(もうしっているんです。おっかさんはいやなかおをして、あたしのこのあしも)
もう知っているんです。阿母さんは忌な顔をして、あたしのこの足も
(もうなおらないかもしれないといっているんですよ」)
もう癒らないかも知れないと云っているんですよ」
(「なぜでしょうね」と、もじはるはむねをどきつかせながらきいた。)
「なぜでしょうね」と、文字春は胸をどきつかせながら訊いた。
(「なぜだかしりませんけれど」と、おゆきもかおをくもらせていた。「おとっさんや)
「なぜだか知りませんけれど」と、お雪も顔を曇らせていた。「お父っさんや
(おっかさんもそのうわさをひどくきにやんで、ちょうどおぼんまえにそんなうわさをされると)
阿母さんも其の噂をひどく気に病んで、丁度お盆前にそんな噂をされると
(なんだかこころもちがよくないといっているんですの。だれがいいだしたんだか)
何だか心持がよくないと云っているんですの。誰が云い出したんだか
(しりませんけれど、まったくきになりますわ。つのくにやのまえにはおんなのゆうれいが)
知りませんけれど、まったく気になりますわ。津の国屋の前には女の幽霊が
(まいばんたっているなんて、とんでもないことをいわれると、うそだとおもっても)
毎晩立っているなんて、飛んでもないことを云われると、嘘だと思っても
(きみがわるうござんす」)
気味が悪うござんす」
