半七捕物帳 石燈籠6

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プレイ回数389難易度(4.5) 2003打 長文
岡本綺堂 半七捕物帳シリーズ 第二話
順位 名前 スコア 称号 打鍵/秒 正誤率 時間(秒) 打鍵数 ミス 問題 日付
1 すもさん 6003 A++ 6.2 96.1% 332.3 2079 84 31 2024/03/03
2 やまちやまちゃん 4694 C++ 4.7 98.5% 416.0 1983 30 31 2024/03/16

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問題文

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(「えんがわのあまどはあいていたんですか」と、はんしちはきいた。)

「縁側の雨戸は開いていたんですか」と、半七は訊いた。

(「あまどはみんなしめてあったんですが、そのちょうずばちのまえだけが、)

「雨戸はみんな閉めてあったんですが、その手水鉢の前だけが、

(いつもいちまいほそめにあけてありますので・・・・・・」と、あんないしてきたじゅうぞうはせつめいした。)

いつも一枚細目にあけてありますので……」と、案内して来た重蔵は説明した。

(「もちろんそれはよいのうちだけで、ねるじぶんにはぴったりしめてしまいます」)

「勿論それは宵の内だけで、寝る時分にはぴったり閉めてしまいます」

(はんしちはむごんでたかいまつのこずえをみあげた。ちんにゅうしゃはこのまつをつたってきたものらしくも)

半七は無言で高い松の梢をみあげた。闖入者はこの松を伝って来たものらしくも

(おもわれなかった。しのびがえしのたけにもそんしょはなかった。)

思われなかった。忍び返しの竹にも損所はなかった。

(「ずいぶんたかいへいですね」)

「ずいぶん高い塀ですね」

(「はい、ゆうべもおやくにんしゅうがごらんになって、このたかいへいをのりこしてくるのは)

「はい、ゆうべもお役人衆が御覧になって、この高い塀を乗り越して来るのは

(よういでない。といって、はしごをかけたようすもなし、まつをつたってきたらしくも)

容易でない。と云って、梯子をかけた様子もなし、松を伝って来たらしくも

(おもわれない。これはにわぐちからしのびこんだのではあるまいとおっしゃいました。)

思われない。これは庭口から忍び込んだのではあるまいと仰しゃいました。

(しかしどこからはいったにしましても、でるときはこのにわぐちからでたに)

併しどこからはいったにしましても、出る時はこの庭口から出たに

(そういないようにおもわれますが、きどのじょうはうちからかたくおろしたままに)

相違ないように思われますが、木戸の錠は内から固くおろしたままに

(なっていますので、どこをどうしてでていったかさっぱりわかりません」と、)

なっていますので、何処をどうして出て行ったかさっぱり判りません」と、

(じゅうぞうはくもっためをいよいよくもらせて、むいみにそこらをみまわしていた。)

重蔵は陰(くも)った眼をいよいよ陰らせて、無意味にそこらを見廻していた。

(「さようさ。しのびがえしにもきずをつけず、まつのえだにもさわらずに、このたかべいを)

「左様さ。忍び返しにも疵をつけず、松の枝にもさわらずに、この高塀を

(のりこすというのはなまやさしいことじゃあねえ」)

乗り越すというのは生優しいことじゃあねえ」

(どうかんがえても、これはまちやのむすめなどにできそうなげいではなかった。)

どう考えても、これは町家の娘などに出来そうな芸ではなかった。

(くせものはよほどけいけんにとんだやつにそういないとはんしちはかんていした。)

曲者はよほど経験に富んだ奴に相違ないと半七は鑑定した。

(しかしそのばへかけつけたさんにんのおんなは、たしかにおきくのうしろすがたをみたという。)

併しその場へ駈けつけた三人の女は、たしかにお菊のうしろ姿を見たという。

(それにはなにかのあやまりがなければならないとかれはまたかんがえた。)

それには何かの錯誤(あやまり)がなければならないと彼は又かんがえた。

など

(かれはさらにねんのために、にわげたをはいてせまいにわのすみずみをみまわると、)

彼は更に念のために、庭下駄を穿いて狭い庭の隅々を見まわると、

(にわのひがしのすみにはおおきいいしどうろうがたっていた。よほどじだいがたっているものと)

庭の東の隅には大きい石燈籠が立っていた。よほど時代が経っているものと

(みえて、かさもだいいしもあおぐろいこけのころもにすきまなくつつまれていた。)

見えて、笠も台石も蒼黒い苔のころもに隙き間なく包まれていた。

(いっしゅのしっけをおびたこけのにおいが、このしにせのふるいれきしをかたるようにもみえた。)

一種の湿気を帯びた苔の匂いが、この老舗の古い歴史を語るようにも見えた。

(「いいいしどうろうだ。ちかごろにこれをいじりましたか」と、はんしちはなにげなくきいた。)

「好い石燈籠だ。近頃にこれをいじりましたか」と、半七は何げなく訊いた。

(「いいえ、むかしからだれもてをつけたことはありません。こんなにみごとに)

「いいえ、昔から誰も手を着けたことはありません。こんなに見事に

(こけがついているから、めったにさわっちゃいけないと、おかみさんからも)

苔が付いているから、滅多にさわっちゃいけないと、お内儀(かみ)さんからも

(やかましくいわれていますので・・・・・・」 「そうですか」)

やかましく云われていますので……」 「そうですか」

(めったにさわることをきんじられているというふるいいしどうろうのかさのうえに、)

滅多にさわることを禁じられているという古い石燈籠の笠の上に、

(ひとのあしあとがかすかにのこっていることを、はんしちはふとみつけだしたのであった。)

人の足あとが微かに残っていることを、半七はふと見つけ出したのであった。

(あついあおごけのおもてはちいさいつまさきのあとだけかるくふみにじられていた。)

あつい青苔の表は小さい爪先の跡だけ軽く踏みにじられていた。

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