半七捕物帳 奥女中10

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岡本綺堂 半七捕物帳シリーズ 第七話

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問題文

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(「おいであそばしませ。まあ、どうぞこちらへ」)

「お出であそばしませ。まあ、どうぞこちらへ」

(いりぐちへでたおかめがうろうろしながら、あたらしいおんなきゃくをおくへ)

入口へ出たお亀がうろうろしながら、新しい女客を奥へ

(しょうじいれようとすると、あないをたのんだおんなはすこし)

招じ入れようとすると、案内(あない)を頼んだ女は少し

(ためらっているらしかった。)

ためらっているらしかった。

(「どうやらごらいきゃくのごようすでござりますな」 「はい」)

「どうやら御来客の御様子でござりますな」 「はい」

(「では、かさねてまいりましょう」)

「では、重ねてまいりましょう」

(ひっかえそうとするらしいおんなを、はんしちはうちからよびかえした。)

引っ返そうとするらしい女を、半七は内から呼びかえした。

(「あの、おそれいりますが、しばらくおひかえくださいまし。)

「あの、恐れ入りますが、しばらくお控えくださいまし。

(ここにあなたのにせものがまいっておりますから、どうかおたちあいのうえで)

ここにあなたの偽物がまいって居りますから、どうか御立ち会いの上で

(ごぎんみをねがいとうぞんじますが・・・・・・」)

御吟味をねがいとう存じますが……」

(はじめのおんなはいよいよかおいろをかえたが、かのじょはもうどきょうをすえたらしく、)

はじめの女はいよいよ顔色を変えたが、彼女はもう度胸を据えたらしく、

(きゅうににやにやわらいだした。)

急ににやにや笑い出した。

(「おやぶん。おみそれもうしてあいすみません。さっきからどうもただのひとで)

「親分。お見それ申して相済みません。さっきからどうも唯の人で

(ないらしいとおもっていましたが、おまえさんはみかわちょうのおやぶんさんで)

ないらしいと思っていましたが、おまえさんは三河町の親分さんで

(ございましたね。もういけません。ずきんをぬぎましょうよ」)

ございましたね。もういけません。頭巾を脱ぎましょうよ」

(「そんなことだろうとおもった」と、はんしちもわらった。「じつはおもてへ)

「そんなことだろうと思った」と、半七も笑った。「実は表へ

(まわってみると、おだいみょうのおやしきのおむかいがつじかごもめずらしい。)

まわって見ると、御大名の御屋敷のお迎いが辻駕籠もめずらしい。

(おくじょちゅうのゆびにはばちだこがある。どうもこれじゃあしばいに)

奥女中の指には撥胝(ばちだこ)がある。どうもこれじゃあ芝居に

(ならねえ。おめえはいったいどこからばけてきたんだ。にせむかいもにせじょうしもいいが、)

ならねえ。おめえは一体どこから化けて来たんだ。偽迎いも偽上使もいいが、

(やくしゃのいいわりにゃあぶたいがちっともはえねえじゃあねえか」)

役者の好い割にゃあ舞台がちっとも栄(は)えねえじゃあねえか」

など

(「どうもおそれいりました」と、おんなはあたまをすこしさげた。)

「どうも恐れ入りました」と、女は頭をすこし下げた。

(「このしばいはちっとむずかしかろうとおもったんですが、)

「この芝居はちっとむずかしかろうと思ったんですが、

(まあどきょうでやってみろというきになって、どうにかこうにか)

まあ度胸でやってみろという気になって、どうにかこうにか

(だんどりだけはつけてみたんですが、おやぶんにあっちゃかないませんよ。)

段取りだけは付けて見たんですが、親分に逢っちゃ敵(かな)いませんよ。

(こうなりゃあみんなはくじょうしてしまいますがね。わたくしはふかがわで)

こうなりゃあみんな白状してしまいますがね。わたくしは深川で

(うまれまして、おふくろはながうたのししょうをしていましたんです」)

生まれまして、おふくろは長唄の師匠をしていましたんです」

(かのじょのなはおとしといった。はははじぶんのあとをつがせるつもりで、)

彼女の名はお俊といった。母は自分のあとを嗣がせるつもりで、

(こどものときからいっしょうけんめいにながうたをしこんだが、おとしはかたあげの)

子供のときから一生懸命に長唄を仕込んだが、お俊は肩揚げの

(おりないうちからおとこぐるいをはじめて、ははをさんざんなかせたあげくに、)

下りないうちから男狂いをはじめて、母をさんざん泣かせた挙句に、

(ふかがわのじっかをとびだして、じょうしゅうからしんしゅうえちごをたびげいしゃでながれわたって、)

深川の実家を飛び出して、上州から信州越後を旅芸者でながれ渡って、

(に、さんねんまえにひさしぶりでえどにかえってくると、ふかがわのはははもうしんでいた。)

二、三年前に久し振りで江戸に帰ってくると、深川の母はもう死んでいた。

(それでもきんじょにはむかしのちじんがのこっているので、かのじょはここで)

それでも近所には昔の知人が残っているので、彼女はここで

(ながうたのししょうをはじめて、すこしはでしもあつまるようになったが、)

長唄の師匠をはじめて、少しは弟子もあつまるようになったが、

(どうらくのつよいかのじょはとてもおとなしくしていられなかった。)

道楽の強い彼女はとてもおとなしくしていられなかった。

(つまらないおとこにひっかかって、かねがほしさにつつもたせもやった。)

詰まらない男に引っかかって、金が欲しさに女囮(つつもたせ)もやった。

(ゆやのいたのまもかせいだ。そのうちにおとしはこのきんじょの)

湯屋の板の間もかせいだ。そのうちにお俊はこの近所の

(さかなやからふとおちょうのうわさをききこんだ。)

魚屋からふとお蝶の噂を聞き込んだ。

(さかなやはおとしがこんいのうちで、そこのむすめはおかめともこころやすくしているので、)

魚屋はお俊が懇意の家で、そこの娘はお亀とも心安くしているので、

(おちょうがときどきにあやしいつかいにゆうかいされてゆくといううわさが)

お蝶がときどきに怪しい使いに誘拐されてゆくという噂が

(しぜんにおとしのみみにつたわった。おちょうのきりょうよしをかねてしっている)

自然にお俊の耳に伝わった。お蝶の容貌(きりょう)好しをかねて知っている

(かのじょは、このあやしいつかいをりようして、むすめをさらにじぶんのてへ)

彼女は、この怪しい使いを利用して、娘を更に自分の手へ

(ゆうかいしようというわるいりょうけんをおこした。ふだんからじぶんのてさきに)

誘拐しようという悪い料簡を起した。ふだんから自分の手先に

(つかっているやすぞうというやつにいいふくめて、に、さんにちまえから)

つかっている安蔵という奴に云いふくめて、二、三日まえから

(おかめのうちのきんじょをうろついて、うちのようすをうかがわせているうちに、)

お亀の家の近所をうろついて、内の様子を窺わせているうちに、

(そのやしきからおちょうをいっしょうほうこうにかかえたいというかけあいにきたことも)

その屋敷からお蝶を一生奉公にかかえたいという掛け合いに来たことも

(わかった。おちょうがゆうべもどってきたこともわかった。かのじょはやすぞうを)

判った。お蝶がゆうべ戻って来たことも判った。彼女は安蔵を

(とものさむらいにしたてて、じぶんはおくじょちゅうにばけておちょうを)

共の武士(さむらい)に仕立てて、自分は奥女中に化けてお蝶を

(うけとりにきたのであった。かのじょがおちょうのまえにならべたにひゃくりょうは)

受け取りに来たのであった。彼女がお蝶の前にならべた二百両は

(むろんにどうみゃくのにせものであった。)

無論に銅脈の偽物であった。

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