半七捕物帳 帯取りの池4

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岡本綺堂 半七捕物帳シリーズ 第八話

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問題文

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(それからなのかばかりのあとのよるであった。てさきのまつきちがかんだみかわちょうの)

二 それから七日ばかりの後の夜であった。手先の松吉が神田三河町の

(はんしちのうちへいせいよくかけこんできた。)

半七の家へ威勢よく駈け込んで来た。

(「おやぶん、しれましたよ。あのおびとりのいっけんが・・・・・・。きんじょのひょうばんにうそはねえ、)

「親分、知れましたよ。あの帯取りの一件が……。近所の評判に嘘はねえ、

(おみよというおんなはやっぱりだんなとりをしていたんですよ。)

おみよという女はやっぱり旦那取りをしていたんですよ。

(あいてはなんでもはたもとのいんきょで、こっちからときどきにそっとかよっていたんです。)

相手はなんでも旗本の隠居で、こっちから時々にそっと通っていたんです。

(おふくろはしきりにかくしていたんですけれども、わっしがいろいろおどしつけて、)

おふくろは頻りに隠していたんですけれども、わっしがいろいろ嚇しつけて、

(とうとうそれだけのどろをはかせてきたんですが、どうでしょう、)

とうとうそれだけの泥を吐かせて来たんですが、どうでしょう、

(それがなにかのてがかりになりますまいか」)

それが何かの手がかりになりますまいか」

(「むむ、それだけでもわかると、だいぶけんとうがつく」と、はんしちはうなずいた。)

「むむ、それだけでも判ると、だいぶ見当がつく」と、半七はうなずいた。

(「おふくろをおどかしてきたんじゃあ、あんまりてがらにもならねえが・・・・・・。)

「おふくろを嚇かして来たんじゃあ、あんまり手柄にもならねえが……。

(ひょろまつ、まあてめえにしちゃあじょうできのほうだ。おとなしそうにみえていても、)

ひょろ松、まあ手前にしちゃあ上出来のほうだ。おとなしそうに見えていても、

(だんなとりをするようなおんなじゃあ、ほかにもまたいろいろのいざこざが)

旦那取りをするような女じゃあ、ほかにも又いろいろの紛糾(いざこざ)が

(あるだろう。そこで、おまえはこれからどうする」)

あるだろう。そこで、お前はこれからどうする」

(「さあ、それがわからねえからそうだんにきたんです。まさかそのはたもとのいんきょが)

「さあ、それが判らねえから相談に来たんです。まさかその旗本の隠居が

(ころしたんじゃありますめえ。おやぶんはどうおもいます」)

殺したんじゃありますめえ。親分はどう思います」

(「おれもまさかとおもうが・・・・・・」と、はんしちはくびをひねった。)

「おれもまさかと思うが……」と、半七は首をひねった。

(「だが、せけんにはあんがいなことがあるからな。なかなかゆだんはできねえ。)

「だが、世間には案外なことがあるからな。なかなか油断はできねえ。

(そのはたもとはなんというやしきで、いんきょのしもやしきはどこにあるんだ」)

その旗本はなんという屋敷で、隠居の下屋敷はどこにあるんだ」

(「やしきはおおくぼしきぶというせんごくどりで、そのいんきょのしもやしきは)

「屋敷は大久保式部という千石取りで、その隠居の下屋敷は

(ぞうしがやににあるそうです」)

雑司ヶ谷にあるそうです」

など

(「じゃあ、なにしろそのぞうしがやというのへいってみようじゃあねえか。)

「じゃあ、なにしろその雑司ヶ谷というのへ行って見ようじゃあねえか。

(とんでもねえものにつきあたるかもしれねえ」)

飛んでもねえものに突き当たるかも知れねえ」

(あくるあさ、まつきちのさそいにくるのをまって、はんしちはふたりづれでかんだをでた。)

あくる朝、松吉の誘いに来るのを待って、半七は二人づれで神田を出た。

(きょうはさんがつなかばのはなみびよりといううららかなひで、ぶらぶらあるいている)

きょうは三月なかばの花見日和といううららかな日で、ぶらぶら歩いている

(ふたりのひたいにはうすいあせがにじんだ。ぞうしがやへゆきついて、)

二人のひたいには薄い汗がにじんだ。雑司ヶ谷へゆき着いて、

(おおくぼしきぶのしもやしきをたずねると、さすがはせんごくどりのいんきょじょだけに)

大久保式部の下屋敷をたずねると、さすがは千石取りの隠居所だけに

(やしきはなかなかてびろそうなかまえで、まえにはちいさいどぶがわが)

屋敷はなかなか手広そうな構えで、前には小さい溝川(どぶがわ)が

(ながれていた。)

流れていた。

(「まるでいっけんやですね」と、まつきちはいった。)

「まるで一軒家ですね」と、松吉は云った。

(なるほどせなかあわせにいっけんのやしきがあるだけで、みぎもひだりもひろいはたちであった。)

なるほど背中合わせに一軒の屋敷があるだけで、右も左も広い畑地であった。

(きんじょできくと、このしもやしきにはろくじゅうばかりのごいんきょがすんでいて、)

近所で訊くと、この下屋敷には六十ばかりの御隠居が住んでいて、

(ほかにはようにんとわかとうとちゅうげん、それからじょちゅうがふたりほどほうこうしている)

ほかには用人と若党と中間、それから女中が二人ほど奉公している

(とのことであった。はんしちはなのはなのきいろいはたけのあいだをぬって、)

とのことであった。半七は菜の花の黄いろい畑のあいだを縫って、

(やしきのよこてをひととおりみまわした。)

屋敷の横手を一と通り見まわした。

(「やしきのやつがやったんじゃあるめえな」)

「屋敷の奴が殺(や)ったんじゃあるめえな」

(「そうでしょうか」)

「そうでしょうか」

(「これだけのひろいやしきだ。おまけにきんじょにとおいいっけんやもどうようだ。)

「これだけの広い屋敷だ。おまけに近所に遠い一軒家も同様だ。

(めかけをやっつけるきがあるなら、やしきのなかでやっつけるか、)

妾をやっつける気があるなら、屋敷の中でやっつけるか、

(かえるとちゅうをやっつけるか、なにもわざわざとうにんのうちまでおしかけて)

帰る途中をやっつけるか、何もわざわざ当人の家まで押し掛けて

(いくにはおよばねえ。だれがかんがえてもそうじゃねえか」)

行くには及ばねえ。誰が考えてもそうじゃねえか」

(「そうですよねえ。じゃあ、きょうはむだあしでしたか」と、)

「そうですよねえ。じゃあ、きょうは無駄足でしたか」と、

(まつきちはつまらなそうなかおをしていた。)

松吉は詰まらなそうな顔をしていた。

(「だが、まあいいや、ひさしぶりでこっちへのぼってきたから、)

「だが、まあいいや、久し振りでこっちへ登って来たから、

(きしぼじんさまへごさんけいをして、みょうがやでひるめしでもくおうじゃねえか」)

鬼子母神様へ御参詣をして、茗荷屋で昼飯でも食おうじゃねえか」

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