半七捕物帳 帯取りの池8

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岡本綺堂 半七捕物帳シリーズ 第八話

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問題文

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(おとくのきょうだいにみやげのささおりをもたせてかえして、)

三 お登久の姉妹(きょうだい)に土産の笹折を持たせて帰して、

(はんしちはまだみょうがやにのこっていた。)

半七はまだ茗荷屋に残っていた。

(「やい、ひょろまつ。いぬもあるけばぼうにあたるとはこのことだ。)

「やい、ひょろ松。犬も歩けば棒にあたるとはこの事だ。

(ぞうしがやへきたのもむだにゃあならねえ。かっぱざかのてがかりが)

雑司ヶ谷へ来たのも無駄にゃあならねえ。合羽坂の手がかりが

(すこしついたようだ。じょちゅうをちょいとよんでくれ」)

少し付いたようだ。女中をちょいと呼んでくれ」

(まつきちがてをならすと、としまのじょちゅうがすぐにかおをだした。)

松吉が手を鳴らすと、年増の女中がすぐに顔を出した。

(「どうもおかまいもうしませんで、すみません」)

「どうもお構い申しませんで、済みません」

(「なに、すこしおまえにききたいことがある。もとはいちがやのしちやの)

「なに、少しお前に訊きたいことがある。もとは市ヶ谷の質屋の

(ばんとうさんをしていたせんちゃんというひとが、ときどきここへあそびにきやあしねえかね」)

番頭さんをしていた千ちゃんという人が、時々ここへ遊びに来やあしねえかね」

(「はあ。おいでになります」)

「はあ。お出でになります」

(「つきにに、さんどはくるだろう」 「よくごぞんじでございますね」)

「月に二、三度は来るだろう」 「よく御存じでございますね」

(「いつもひとりでくるかえ」と、はんしちはわらいながらきいた。)

「いつも一人で来るかえ」と、半七は笑いながら訊いた。

(「わかいきれいなむすめといっしょにじゃあねえか」)

「若い綺麗な娘と一緒にじゃあねえか」

(じょちゅうはだまってわらっていた。しかしだんだんにといつめられて、)

女中は黙って笑っていた。併しだんだんに問いつめられて、

(かのじょはこんなことをしゃべった。せんじろうはさんねんほどまえから、)

彼女はこんなことをしゃべった。千次郎は三年ほど前から、

(まいつきに、さんどずつそのわかいきれいなむすめとつれだってくる。)

毎月二、三度ずつその若い綺麗な娘と連れ立って来る。

(ひるまくることもあれば、ゆうがたにくることもある。げんにとおかほどまえにも、)

昼間来ることもあれば、夕方に来ることもある。現に十日ほど前にも、

(せんじろうがさきにきてまっていると、ひるごろになってむすめがきて、)

千次郎が先に来て待っていると、午(ひる)頃になって娘が来て、

(ひのくれるころいっしょにかえったとのことであった。じょちゅうたちのいるまえでは、)

日の暮れるころ一緒に帰ったとのことであった。女中たちのいる前では、

(ふたりともはずかしそうなかおをしてちっともくちをきかないので、)

二人とも恥かしそうな顔をしてちっとも口を利かないので、

など

(だれもきょうまでそのむすめのなをしらないとかのじょはいった。)

誰もきょうまでその娘の名を知らないと彼女は云った。

(「とおかばかりまえにきたときに、そのむすめはあさのはしぼりのあかいおびを)

「十日ばかり前に来たときに、その娘は麻の葉絞りの紅い帯を

(しめていなかったかね」と、はんしちはきいた。)

締めていなかったかね」と、半七は訊いた。

(「はあ、たしかにそうでございましたよ」)

「はあ、たしかにそうでございましたよ」

(「いや、ありがとう。ねえさん、いずれまたおれいにくるぜ」)

「いや、ありがとう。姐さん、いずれまたお礼に来るぜ」

(いくらかつつんだものをじょちゅうにやって、はんしちはみょうがやのかどをでると、)

幾らか包んだものを女中にやって、半七は茗荷屋の門(かど)を出ると、

(まつきちもあとからついてきてささやいた。)

松吉もあとから付いて来てささやいた。

(「おやぶん、なるほどちっとはあたりがついてきたようですね。)

「親分、なるほどちっとは当りが付いて来たようですね。

(なにしろ、そのせんじろうというやろうをひきあげなけりゃあいけますめえ」)

なにしろ、その千次郎という野郎を引き挙げなけりゃあいけますめえ」

(「そうだ」と、はんしちもうなずいた。「だが、しろうとのことだ。)

「そうだ」と、半七もうなずいた。「だが、素人(しろうと)のことだ。

(いつまでどこにかくれてもいられめえ。ほとぼりのさめたころにゃあ、)

いつまで何処に隠れてもいられめえ。ほとぼりの冷めた頃にゃあ、

(きっとぶらぶらでてくるにちげえねえ。てめえはこれからしんじゅくへいって、)

きっとぶらぶら出て来るに違えねえ。てめえはこれから新宿へ行って、

(そのふるぎやとししょうのうちのきんじょをまいにちみはっていろ」)

その古着屋と師匠の家の近所を毎日見張っていろ」

(「ようがす。きっとうけあいました」)

「ようがす。きっと受け合いました」

(まつきちにわかれて、はんしちはまっすぐにかんだへかえろうとおもったが、)

松吉に別れて、半七はまっすぐに神田へ帰ろうと思ったが、

(じぶんはまだいちどもそのげんばをみとどけたことがないので、)

自分はまだ一度もその現場を見とどけたことがないので、

(ねんのためにかえりにいちがやへまわることにした。かっぱざかしたへ)

念のために帰途(かえり)に市ヶ谷へ廻ることにした。合羽坂下へ

(きたころにははるのひももうくれかかっていた。さかやのうらへはいって、)

来た頃には春の日ももう暮れかかっていた。酒屋の裏へはいって、

(こうしのそとからおみよのうちのようすをいちおううかがって、それから)

格子の外からおみよの家の様子を一応うかがって、それから

(いえぬしのさかやをたずねると、ごようできたひとだときいて、ちょうばにいた)

家主の酒屋をたずねると、御用で来た人だと聞いて、帳場にいた

(いえぬしもかたちをあらためた。)

家主も形をあらためた。

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