半七捕物帳 春の雪解2

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プレイ回数409難易度(4.4) 2339打 長文 長文モード可
岡本綺堂 半七捕物帳シリーズ 第九話
順位 名前 スコア 称号 打鍵/秒 正誤率 時間(秒) 打鍵数 ミス 問題 日付
1 すもさん 5917 A+ 6.0 97.1% 396.3 2415 70 46 2024/03/23

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問題文

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(「きょうこそはあぶねえ」)

「きょうこそはあぶねえ」

(かれはあまがさをよういしてゆくと、おおきいゆきがはたしておちてきた。)

かれは雨傘を用意してゆくと、大きい雪が果たして落ちて来た。

(かえりはやはりななつすぎになって、いりやのたんぼはもうまっしろにうめられていた。)

帰りはやはり七ツ過ぎになって、入谷の田圃はもう真っ白に埋められていた。

(おもいかさをかたげて、このあいだのりょうのまえまでくると、ひよりげたの)

重い傘をかたげて、このあいだの寮の前まで来ると、日和下駄(ひよりげた)の

(まえはなおがあいにくきれた。はんしちはしたうちをしながらへいぎわにみをよせて、)

前鼻緒があいにく切れた。半七は舌打ちをしながら塀ぎわに身を寄せて、

(まにあわせでつくろっていると、ゆきをふむげたのおとがきこえて、)

間にあわせでつくろっていると、雪を踏む下駄の音がきこえて、

(もんのなかからこのあいだのおんながとびいしづたいにでてきた。)

門の中からこの間の女が飛石(とびいし)伝いに出て来た。

(「まあ、いつのまにかつもったこと」)

「まあ、いつの間にか積ったこと」

(ひとりごとをいいながら、かのじょはひとまちがおにたたずんでいたが、)

独り言を云いながら、彼女は人待ち顔にたたずんでいたが、

(かさをもっていないかのじょはかみをうつゆきにたえないとみえて、)

傘を持っていない彼女は髪を打つ雪に堪えないと見えて、

(やがてうちへひっかえしてしまった。)

やがて内へ引っ返してしまった。

(てがかじかんでいるので、はなおをたてるのにひまがかかって、)

手が亀縮(かじか)んでいるので、鼻緒を立てるのに暇がかかって、

(はんしちはようようにげたをつっかけて、どろだらけのてをゆきでもんでいるところへ、)

半七はようように下駄を突っかけて、泥だらけの手を雪で揉んでいるところへ、

(このあいだのあんまがなれたあしどりですたすたあるいてきた。)

このあいだの按摩が馴れた足取りですたすた歩いて来た。

(まえにこりたのであろう。こんどはかさをすぼめてさしていた。)

前に懲りたのであろう。今度は傘をすぼめて差していた。

(「とくじゅさん。きょうはにがさないよ」)

「徳寿さん。きょうは逃がさないよ」

(よびかけられて、あんまはおびえたようにたちどまったが、)

呼びかけられて、按摩はおびえたように立ち停まったが、

(きょうもなにかしきりにいいわけしてすりぬけていこうとするのを)

きょうも何か頻りに云い訳して摺り抜けて行こうとするのを

(おんなはまたひきもどした。こうしたもんちゃくがたびたびつづくので、)

女はまた曳き戻した。こうした捫着(もんちゃく)がたびたび続くので、

(はんしちもすこしおかしくおもって、もうつくろってしまったどろげたを)

半七も少しおかしく思って、もうつくろってしまった泥下駄を

など

(ふたたびいじくるようなふうをしてよこめでそっとうかがっていると、あんまはあくまでも)

再びいじくるような風をして横眼でそっと窺っていると、按摩はあくまでも

(ごうじょうにふりきって、きょうもにげるようにここをたちさってしまった。)

強情に振り切って、きょうも逃げるように此処を立ち去ってしまった。

(「ほんとうにしようのないひとだねえ」)

「ほんとうにしようのない人だねえ」

(くちこごとをいいながらおんなはうちへひっこんだ。そのうしろすがたのきえるのを)

口小言を云いながら女は内へ引っ込んだ。そのうしろ姿の消えるのを

(みおくって、はんしちはもうご、ろっけんゆきすぎているあんまのかさの)

見送って、半七はもう五、六間ゆき過ぎている按摩の傘の

(しろいかげをおった。かれはうしろからこえをかけた。)

白い影を追った。彼はうしろから声をかけた。

(「おい、あんまさん。とくじゅさん」 「はい、はい」)

「おい、按摩さん。徳寿さん」 「はい、はい」

(ききなれないこえにあんまはすこしくびをかしげてたちどまると、)

聞き慣れない声に按摩は少し首をかしげて立ち停まると、

(はんしちはかさをならべてたった。)

半七は傘をならべて立った。

(「とくじゅさん。さむいね。べらぼうにふるじゃあねえか。)

「徳寿さん。寒いね。べらぼうに降るじゃあねえか。

(おまえにゃあなかでに、さんどやっかいになったことがあったっけ。)

おまえにゃあ廓(なか)で二、三度厄介になったことがあったっけ。

(それ、このあいだもおうみやのにかいでよ」)

それ、このあいだも近江屋の二階でよ」

(「はあ、さようでございましたか。としをとりますと、だんだんに)

「はあ、左様でございましたか。年を取りますと、だんだんに

(かんがわるくなりまして、ごひいきさまにまいまいしつれいをしてあいすみません。)

勘がわるくなりまして、御贔屓様に毎々失礼をして相済みません。

(だんなもこれからなかへおでかけでございますか。こういうばんにおかよいもまた)

旦那もこれから廓へお出かけでございますか。こういう晩にお通いもまた

(おたのしみなものでございます。わがものとおもえばかるしかさのゆきとか)

お楽しみなものでございます。わが物と思えば軽し傘の雪とか

(もうしましてね。ははははは」)

申しましてね。ははははは」

(こっちのでたらめをしっているのか、しらないのか、とくじゅは)

こっちの出鱈目を知っているのか、知らないのか、徳寿は

(じょさいなくちょうしをあわせた。)

如才なく調子をあわせた。

(「なにしろわるくさむいね」 「このに、さんにちはさえかえりました」)

「なにしろ悪く寒いね」 「この二、三日は冴え返りました」

(「これからたんぼをつっきるのはらくじゃあねえ。どうだい、あすこで)

「これから田圃を突っ切るのは楽じゃあねえ。どうだい、あすこで

(そばのいっぱいもすすりこんでいせいをつけていこうじゃねえか。)

蕎麦の一杯も啜(すす)り込んで威勢をつけて行こうじゃねえか。

(おまえもつきあわねえか。なかへはいるのはまだちっとはやかろう」)

おまえも附き合わねえか。廓へはいるのはまだちっと早かろう」

(「はい、はい、どうもごちそうさまでございます。わたくしはげこで)

「はい、はい、どうも御馳走さまでございます。わたくしは下戸(げこ)で

(ございますけれど、ごしゅをめしあがるおかたはいっぱいあがらなければ、)

ございますけれど、御酒(ごしゅ)を召しあがるお方は一杯あがらなければ、

(このたんぼはちっとほねがおれます。はい、はい、ありがとうございます」)

この田圃はちっと骨が折れます。はい、はい、ありがとうございます」

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