半七捕物帳 春の雪解4

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岡本綺堂 半七捕物帳シリーズ 第九話
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1 kkk4015 4815 B 4.9 96.8% 552.0 2746 88 51 2024/11/10

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問題文

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(もとよりめくらのいうことで、べつにとりとめたしょうこも)

二 もとより盲(めくら)の云うことで、別に取り留めた証拠も

(ないのであるが、はんしちはそれをいっしゅのふしぎなはなしとして、)

ないのであるが、半七はそれを一種の不思議な話として、

(ただききながしてしまうわけにはいかなかった。かれはあくまでそのふしぎの)

ただ聞き流してしまうわけには行かなかった。彼はあくまでその不思議の

(しょうたいをつきとめたかった。そのばんはとくじゅにわかれて、かんだのうちへまっすぐ)

正体を突き止めたかった。その晩は徳寿に別れて、神田の家へまっすぐ

(かえったが、あくるあさ、あさくさのうまみちにいるこぶんのしょうたを)

帰ったが、あくる朝、浅草の馬道(うまみち)にいる子分の庄太を

(よびにやった。)

呼びにやった。

(「おい、しょうた。くるわはたまちのじゅうべえのなわばりだが、おれがすこしちょっかいを)

「おい、庄太。廓は田町の重兵衛の縄張りだが、おれが少しちょっかいを

(だしてみたいことがあるんだ。てめえひとつはたらいてくれ。えどちょうにたついせとかいう)

出して見たいことがあるんだ。てめえ一つ働いてくれ。江戸町に辰伊勢とかいう

(じょろうやがあるだろう。あすこのたがそでというおんなのことを)

女郎屋があるだろう。あすこの誰袖(たがそで)という女のことを

(すこしあらってもらいてえんだ」)

少し洗って貰いてえんだ」

(「たがそではいりやのりょうにでているというじゃありませんか」と、)

「誰袖は入谷の寮に出ていると云うじゃありませんか」と、

(しょうたはこころえがおにいった。)

庄太は心得顔に云った。

(「それをしらべてくれというんだ。じつはすこしおれのふにおちねえことが)

「それを調べてくれと云うんだ。実は少し俺の腑に落ちねえことが

(あるんだ・・・・・・。つまりあのおんなにはおとこでもあるか、なにかひとから)

あるんだ……。つまりあの女には情夫(おとこ)でもあるか、なにか人から

(うらみでもうけているようなことでもあるか。それからじょさいもあるめえが、)

恨みでも受けているようなことでもあるか。それから如才もあるめえが、

(そのたついせというみせのうちまくもひととおりはしらべあげてくれ」)

その辰伊勢という店の内幕も一と通りは調べあげてくれ」

(「わかりました。に、さんにちちゅうにはみんなしらべあげてまいります」)

「わかりました。二、三日中にはみんな調べあげてまいります」

(しょうたはうけあってかえった。に、さんにちというやくそくがし、ごにちをすぎても、)

庄太は受け合って帰った。二、三日という約束が四、五日を過ぎても、

(しょうたはかおをみせなかった。あいつなにをしているのだろうとおもったが、)

庄太は顔を見せなかった。あいつ何をしているのだろうと思ったが、

(いちにちをあらそうしごとでもないので、はんしちもそのままうっちゃっておくと、)

一日を争う仕事でもないので、半七もそのまま打っちゃって置くと、

など

(にがつのはじめになってしょうたがぶらりとたずねてきた。)

二月の初めになって庄太がぶらりと訪ねて来た。

(「おやぶん。もうしわけがありません。じつはちいせえがきがはしかを)

「親分。申し訳がありません。実は小せえ餓鬼が麻疹(はしか)を

(やったもんですから」 「そりゃあいけねえな。かるくすみそうか」)

やったもんですから」 「そりゃあいけねえな。軽く済みそうか」

(「へえ、いいあんばいにかるそうです」と、しょうたはいった。)

「へえ、好い塩梅(あんばい)に軽そうです」と、庄太は云った。

(「そこでおやぶん、れいのたついせのいっけんですが、まあひととおりはあらってきましたよ」)

「そこで親分、例の辰伊勢の一件ですが、まあ一と通りは洗って来ましたよ」

(しょうたのほうこくによると、たついせはえどちょうでもかなりうったが、)

庄太の報告によると、辰伊勢は江戸町でも可なり売ったが、

(あんせいのおおじしんのときに、かかえのゆうじょをあなぐらへとじこめておいて、)

安政の大地震のときに、抱えの遊女を穴倉へ閉じ籠めて置いて、

(みんなやきころしてしまったとかいうので、それからとかくにけちがついて、)

みんな焼き殺してしまったとかいうので、それから兎角にけちがついて、

(しょうばいのほうもあまりおもわしくない。もっともよしわらではのれんのふるいみせでもあり、)

商売の方もあまり思わしくない。尤も吉原では暖簾の旧(ふる)い店でもあり、

(ほかにもじしょやかさくなどをもっているので、まずそうとうに)

ほかにも地所や家作(かさく)などをもっているので、まず相当に

(みせをはっている。とうじはおまきというのがおんなしゅじんで、えいたろうという)

店を張っている。当時はおまきというのが女主人で、永太郎という

(ことしはたちのせがれのこうけんをしているが、しんだていしゅとちがって、)

今年二十歳(はたち)の伜の後見をしているが、死んだ亭主と違って、

(おまきはなさけぶかいほうでせけんのひょうばんもわるくない。たがそではおしょくから)

おまきは情けぶかい方で世間の評判も悪くない。誰袖はお職から

(にまいめのうれっこで、きょねんのにのとりがすんだころからいりやのりょうに)

二枚目の売れっ妓(こ)で、去年の二の酉(とり)が済んだ頃から入谷の寮に

(でようじょうをしているが、おんなににあわないおおざけであるから、しゅどくでむねを)

出養生をしているが、女に似合わない大酒であるから、酒毒で胸を

(いためたのだろうといううわさである。としはにじゅういちで、したやのかなすぎのうまれだと)

傷めたのだろうという噂である。年は二十一で、下谷の金杉の生まれだと

(ぜげんがはなした。)

女衒(ぜげん)が話した。

(「いや、ごくろう。まずそれでひととおりはわかった」と、はんしちはうなずいた。)

「いや、御苦労。まずそれで一と通りは判った」と、半七はうなずいた。

(「そこで、そのおんなにはおとことかなんとかいうものはねえのか。)

「そこで、その女には情夫(おとこ)とか何とかいう者はねえのか。

(それだけのうれっこならなにかあるだろう」)

それだけの売れっ妓なら何かあるだろう」

(「それがはっきりとけんとうがつかねえそうで・・・・・・。もちろんなじみのきゃくは)

「それがはっきりと見当が付かねえそうで……。もちろん馴染みの客は

(おおぜいあるんですが、なかなかてどりものらしいんで、どれがほんとうの)

大勢あるんですが、なかなか手取り者らしいんで、どれがほんとうの

(おとこなんだか、みせのものにもよくわかっていないということです。)

情夫なんだか、店の者にもよく判っていないということです。

(これにはわたしもこまりましたよ」)

これには私も困りましたよ」

(それだけのことでは、はんしちもかんがえのつけようがなかった。)

それだけのことでは、半七も考えの付けようがなかった。

(「きょうはかかあがるすだから、みまいはいずれあとからとどけるが、)

「きょうは嬶(かかあ)が留守だから、見舞はいずれ後から届けるが、

(こどもがびょうきじゃあこまるだろう。まあ、とりあえずこれだけ)

小児(こども)が病気じゃあ困るだろう。まあ、取りあえずこれだけ

(もっていけ」)

持って行け」

(はんしちはしょうたにいくらかのかねをやって、まあひるめしでもくっていけと)

半七は庄太に幾らかの金をやって、まあ午飯(ひるめし)でも食っていけと

(いうと、しょうたはよろこんでうなぎめしのちそうになった。そのあいだにかれはまた)

云うと、庄太は喜んで鰻飯の馳走になった。その間に彼は又

(こんなことをはなした。)

こんなことを話した。

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