半七捕物帳 春の雪解7
順位 | 名前 | スコア | 称号 | 打鍵/秒 | 正誤率 | 時間(秒) | 打鍵数 | ミス | 問題 | 日付 |
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1 | kkk4015 | 5051 | B+ | 5.1 | 97.4% | 509.8 | 2643 | 68 | 46 | 2024/11/14 |
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問題文
(とくじゅのはなしはこうであった。)
三 徳寿の話はこうであった。
(たがそではおととしのあきごろからしゅじんのせがれのえいたろうとしのびあっている。)
誰袖(たがそで)はおととしの秋頃から主人の伜の永太郎と忍び逢っている。
(つきとおしはくるわのきんもつで、それがしれるとめんどうであるから、)
突き通しは廓の禁物(きんもつ)で、それが知れると面倒であるから、
(たがそではびょうきにかこつけていりやのりょうへたびたびでようじょうにゆく。)
誰袖は病気にかこつけて入谷の寮へたびたび出養生にゆく。
(そこへえいたろうがしのんでゆく。ふつうのみせとちがって、おんなしゅじんがなさけぶかいのと、)
そこへ永太郎が忍んでゆく。普通の店と違って、女主人が情けぶかいのと、
(たがそでがうれっこであるのとで、たついせのみせでもあまりやかましくはいわないで、)
誰袖が売れっ妓であるのとで、辰伊勢の店でも余りやかましくは云わないで、
(たがそでをりょうのほうへだしてやる。ばんじのしゅびはなかばたらきのおときがのみこんでいて、)
誰袖を寮の方へ出してやる。万事の首尾は仲働きのお時が吞み込んでいて、
(ほかのものにはちっともしらさなかった。)
ほかの者にはちっとも知らさなかった。
(わかしゅじんのえいたろうはまだへやずみもどうようのみのうえで、かってにみせをあけて)
若主人の永太郎はまだ部屋住みも同様の身の上で、勝手に店をあけて
(たびたびであるくわけにもゆかないので、たがそでがりょうにでているあいだにも)
度々出あるくわけにもゆかないので、誰袖が寮に出ているあいだにも
(まいにちかならずあいにくることはできなかった。おんなはそれをもどかしくおもって、)
毎日かならず逢いに来ることは出来なかった。女はそれをもどかしく思って、
(おとこがふつかもかおをみせないとすぐによびだしのてがみをやる。)
男が二日も顔をみせないとすぐに呼び出しの手紙をやる。
(そのふみつかいのやくはとくじゅであるので、かれがたがそでにかわいがられるのも)
その文使いの役は徳寿であるので、彼が誰袖に可愛がられるのも
(むりはなかった。)
無理はなかった。
(「それほどかわいがってくれるところへ、おまえはなぜいやがって)
「それほど可愛がってくれるところへ、お前はなぜ忌(いや)がって
(よりつかねえんだ」と、はんしちはまたきいた。)
寄り付かねえんだ」と、半七はまた訊いた。
(「あとのかかりあいがめんどうだとおもうのか」)
「あとの係り合いが面倒だと思うのか」
(「それもありますが・・・・・・。それはおかみさんがいいひとですから、)
「それもありますが……。それはおかみさんがいい人ですから、
(そうむずかしいこともあるまいとおもいますが・・・・・・。このあいだも)
そうむずかしいこともあるまいと思いますが……。このあいだも
(もうしあげましたとおり、あすこのりょうへいって、おいらんのそばにすわっていますと、)
申し上げました通り、あすこの寮へ行って、花魁のそばに坐っていますと、
(なんだかぞっとしてどうにもがまんができないのでございます。)
何だかぞっとしてどうにも我慢が出来ないのでございます。
(どういうわけですか、じぶんにもいっこうわかりません」と、)
どういう訳ですか、自分にも一向わかりません」と、
(とくじゅもしあんにあまるようなかおをしてみせた。)
徳寿も思案に余るような顔をして見せた。
(「あすこのみせでこのごろにしんだおんなでもあるかえ」)
「あすこの店で此の頃に死んだ女でもあるかえ」
(「そんなはなしはききません。おおじしんのときにはおおぜいしんだそうですが、)
「そんな話は聞きません。大地震の時には大勢死んだそうですが、
(そのあとはひとりもないようです。なにしろ、せんのだんなとちがって、)
その後は一人も無いようです。なにしろ、先(せん)の旦那と違って、
(おかみさんもわかだんなもよいひとですから、かかえのおんなどもを)
おかみさんも若旦那も善い人ですから、抱えの妓(おんな)どもを
(いじめたといううわさもなし、しんじゅうしたおんなもないようです」)
いじめたという噂も無し、心中した妓もないようです」
(「よし、わかった。きょうのことはだれにもいっちゃあならねえぜ」)
「よし、判った。きょうのことは誰にも云っちゃあならねえぜ」
(くちどめをしてはんしちはとくじゅにわかれた。)
口止めをして半七は徳寿に別れた。
(「どうしても、こんどはそのとらまつというやろうをさがしださなけりゃあならねえ」)
「どうしても、今度はその寅松という野郎を探し出さなけりゃあならねえ」
(はんしちはとらまつきょうだいがすんでいたといううらながやをたずねて、そのいえぬしに)
半七は寅松兄妹が住んでいたという裏長屋をたずねて、その家主(いえぬし)に
(あった。いえぬしもきょうだいのゆくえをしらなかった。しかしきょねんのおしつまりに、)
逢った。家主も兄妹のゆくえを知らなかった。しかし去年の押し詰まりに、
(とらまつがどこからかそっとまいもどってきて、きんじょのてらへいくらかのかねを)
寅松がどこからかそっと舞い戻って来て、近所の寺へ幾らかの金を
(おさめていったといううわさがあるとはなした。ふたりはすぐにそのてらをたずねてゆくと、)
納めて行ったという噂があると話した。二人はすぐに其の寺をたずねてゆくと、
(てらでもさいしょはあいまいなことをいっていたが、けっきょくきょねんのくれのじゅうごにちに)
寺でも最初はあいまいなことを云っていたが、結局去年の暮の十五日に
(とらまつがふいにかおをだして、ごりょうのかねをおさめていったとうちあけた。)
寅松が不意に顔を出して、五両の金を納めて行ったと打ち明けた。
(「とらまつのふたおやはこのてらにうまっているんですが、なにしろ)
「寅松の両親(ふたおや)はこの寺に埋まっているんですが、なにしろ
(あのとおりのどうらくものですから、きんじょにいながらぼんくれのつけとどけも)
あの通りの道楽者ですから、近所にいながら盆暮の附け届けも
(ろくろくしたことはないんです。それがなんとおもったか、ふいにたずねてきて、)
碌々したことはないんです。それが何と思ったか、不意にたずねて来て、
(なにぶんごえこうをたのむといってごりょうというかねをめずらしくおいて)
なにぶん御回向(ごえこう)を頼むと云って五両という金をめずらしく置いて
(いきました」と、じゅうしょくもふしぎそうにはなした。「そうして、こんなことを)
行きました」と、住職も不思議そうに話した。「そうして、こんなことを
(いっていました。いもうともさきごろからゆくえしれずになってしまって、)
云っていました。妹も先頃からゆくえ知れずになってしまって、
(どこにどうしているかわからないから、いえでのひをめいにちだとおもって、)
何処にどうしているか判らないから、家出の日を命日だと思って、
(どうかごえこうをねがいたい・・・・・・。わたくしがしょうちしてやったら、)
どうか御回向を願いたい……。わたくしが承知してやったら、
(とらまつもたいそうよろこんで、れいをいってかえりました」)
寅松もたいそう喜んで、礼を云って帰りました」