半七捕物帳 春の雪解10

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岡本綺堂 半七捕物帳シリーズ 第九話

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問題文

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(おとこはどうするかとみていると、かれはまたひっかえしてもときたほうがくへ)

四 男はどうするかと見ていると、彼はまた引っ返して元来た方角へ

(あるきだそうとして、じぶんのあとをつけてきたはんしちとちょうどむかいあった。)

歩き出そうとして、自分のあとを尾けて来た半七とちょうど向い合った。

(いっぽんみちをすれちがっていこうとするかれを、はんしちはおうようによびとめた。)

一本路をすれ違って行こうとする彼を、半七は追うように呼び止めた。

(「おい、あにい、とらあにい」)

「おい、あにい、寅大哥(あにい)」

(とらまつはだまってたちどまった。)

寅松は黙って立ち停まった。

(「おめえ、ひさしくかおをみせねえじゃあねえか。どこにひっこんでいたんだ」)

「おめえ、久しく顔を見せねえじゃあねえか。どこに引っ込んでいたんだ」

(と、はんしちはつづけて、なれなれしくこえをかけた。)

と、半七は続けて、馴れ馴れしく声をかけた。

(「おめえはだれだ」と、とらまつはうすぐらいなかでようじんぶかそうにすかしてみた。)

「おめえは誰だ」と、寅松は薄暗いなかで用心深そうに透かして視た。

(「まあ、だれでもいいや。くじゃくながやのにかいでに、さんどあったことがあるんだ」)

「まあ、誰でもいいや。孔雀長屋の二階で二、三度逢ったことがあるんだ」

(「うそをつけ」と、とらまつはみがまえをしながらいった。「てめえはいま、)

「嘘をつけ」と、寅松は身構えをしながら云った。「てめえは今、

(そこのそばやにいたやろうだろう。どうもつらつきがきにくわねえと)

そこの蕎麦屋にいた野郎だろう。どうも面(つら)付きが気に食わねえと

(おもった。たまちのじゅうべえのこぶんにもてめえのようなつらをみたことはねえ。)

思った。田町の重兵衛の子分にもてめえのような面を見たことはねえ。

(てめえたちのくいものになるおれじゃあねえ。おれをつれていきたけりゃあ)

てめえ達の食い物になる俺じゃあねえ。おれを連れて行きたけりゃあ

(じゅうべえをよんでこい」)

重兵衛を呼んで来い」

(「あにい、ひどくいせいがいいな」と、はんしちはあざわらった。)

「大哥、ひどく威勢が好いな」と、半七はあざわらった。

(「まあ、なんでもいいからそこまでおとなしくきてくれ」)

「まあ、なんでもいいから其処までおとなしく来てくれ」

(「ばかをいえ。こんどてんまちょうへいけばしまいゆだ。)

「馬鹿をいえ。今度伝馬町(てんまちょう)へ行けば仕舞い湯だ。

(てめえたちのようなしたっぴきにあげられてたまるものか、)

てめえ達のような下っ引きにあげられて堪まるものか、

(もちざおでくじゃくをさそうとすると、ちっとばかりあてがちがうぞ。)

もち竿で孔雀を差そうとすると、ちっとばかり的(あて)がちがうぞ。

(おれをしばりたけりゃありっぱにじってととりなわをもってこい」)

おれを縛りたけりゃあ立派に十手と捕り縄を持って来い」

など

(むやみにきがつよいので、はんしちももてあました。もうこうなればいやでも)

むやみに気が強いので、半七も持て余した。もうこうなれば忌でも

(どろじあいをするよりほかはない。このゆきあがりにやっかいだとはおもったが、)

泥仕合いをするよりほかはない。この雪あがりに厄介だとは思ったが、

(たかがあそびにんひとりをてどりするのはさのみむずかしくもない。)

多寡が遊び人ひとりを手捕りするのはさのみむずかしくもない。

(もううでずくでひきずっていこうとおもった。)

もう腕ずくで引き摺って行こうと思った。

(「やい、とら。てめえのようなはんぱにんそくをあいてにして、はねをあげるのも)

「やい、寅。てめえのような半端人足を相手にして、泥沫(はね)をあげるのも

(いやだとおもって、おじひをかけてやりゃあさいげんがねえ。)

いやだと思って、お慈悲をかけてやりゃあ際限がねえ。

(おれはりっぱにごようのじってをもっているが、てめえをしばってから)

おれは立派に御用の十手を持っているが、てめえを縛ってから

(あとでみせてやる。さあ、すなおにこい」)

後で見せてやる。さあ、素直に来い」

(ひとあしすすみよると、とらまつはひとあしさがってふところにてをいれた。)

一と足すすみ寄ると、寅松は一と足さがってふところに手を入れた。

(おかっぴきをあいてにはものなどをふりまわすのはしろうとである。)

岡っ引を相手に刃物などを振り廻すのは素人である。

(こいつはくちほどでもないやつだとはんしちはすぐにたかをくくってしまった。)

こいつは口ほどでもない奴だと半七はすぐに多寡をくくってしまった。

(しかしそのしろうとがかえってけんのんであるから、かれはあいてのきもを)

併しその素人がかえって剣呑(けんのん)であるから、彼は相手の胆を

(おびやかすためにひとつどなった。)

おびやかすために一つ呶鳴った。

(「とらまつ。ごようだ。しんみょうにしろ」)

「寅松。御用だ。神妙にしろ」

(このとたんに、だれかはんしちのうしろからしのんできて、りょうてでそのめかくしをする)

この途端に、誰か半七のうしろから忍んで来て、両手でその眼隠しをする

(ものがあった。ふいをくらってかれもすこしあわてたが、そのてざわりで)

者があった。不意を喰らって彼もすこし慌てたが、その手触りで

(それがおんなのてであることをはんしちはすぐにさとった。おんなはいうまでもなく、)

それが女の手であることを半七はすぐに覚った。女は云うまでもなく、

(かのおときであろう。かれはかたをしずめてあいてのうでをひっつかむとどうじに)

かのお時であろう。彼は肩を沈めて相手の腕を引っ摑むと同時に

(じぶんのつまさきへなげだすと、そのうえをとびこえてとらまつがついてきた。)

自分の爪先へ投げ出すと、その上を飛び越えて寅松が突いて来た。

(かれのてにはあいくちがひかっていた。)

かれの手には匕首(あいくち)が光っていた。

(「ごようだ」と、はんしちはまたしかった。)

「御用だ」と、半七はまた叱った。

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