桜の樹の下には1 梶井基次郎
「桜の樹の下には死体が埋まっている」
| 順位 | 名前 | スコア | 称号 | 打鍵/秒 | 正誤率 | 時間(秒) | 打鍵数 | ミス | 問題 | 日付 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | ちょも | 3211 | E++ | 3.2 | 98.2% | 405.7 | 1326 | 23 | 20 | 2026/09/02 |
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問題文
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(さくらのきのしたにはしたいがうまっている!
これはしんじていいことなんだよ。)
桜の樹の下には死体が埋まっている!
これは信じていいことなんだよ。
(なぜって、さくらのはながあんなにもみごとにさくなんてしんじられないことじゃないか。)
何故って、桜の花があんなにも見事に咲くなんて信じられないことじゃないか。
(おれはあのうつくしさがしんじられないので、このにさんにちふあんだった。)
俺はあの美しさが信じられないので、この二三日不安だった。
(しかしいま、やっとわかるときがきた。さくらのきのしたにはしたいがうまっている。)
しかし今、やっと分かる時が来た。桜の樹の下には屍体が埋まっている。
(これはしんじていいことだ。)
これは信じていいことだ。
(どうしておれがまいばんいえにかえってくるみちで、おれのへやのかずあるどうぐのうちの、)
どうして俺が毎晩家に帰って来る道で、俺の部屋の数ある道具のうちの、
(よりによってちっぽけなうすっぺらいもの、あんぜんかみそりのはなんぞが、)
選りに選ってちっぽけな薄っぺらいもの、安全剃刀の刃なんぞが、
(せんりがんのようにおもいうかんでくるのかーーおまえはそれがわからないといったが)
千里眼のように思い浮かんで来るのか――おまえはそれがわからないと言ったが
(ーーそしておれにもやはりそれがわからないのだがーーそれもこれもやっぱり)
――そして俺にもやはりそれがわからないのだが――それもこれもやっぱり
(おなじようなことにちがいない。)
同じようなことにちがいない。
(いったいどんなきのはなでも、いわゆるまっさかりというじょうたいにたっすると、あたりの)
いったいどんな樹の花でも、いわゆる真っ盛りという状態に達すると、あたりの
(くうきのなかへいっしゅしんぴなふんいきをまきちらすものだ。それは、よくまわったこまが)
空気のなかへ一種神秘な雰囲気を撒き散らすものだ。それは、よく廻った独楽が
(かんぜんなせいしにすむように、また、おんがくのじょうずなえんそうがきまってなにかのげんかくを)
完全な静止に澄むように、また、音楽の上手な演奏がきまってなにかの幻覚を
(ともなうように、しゃくねつしたせいしょくのげんかくさせるごこうのようなものだ。それはひとのこころを)
伴うように、灼熱した生殖の幻覚させる後光のようなものだ。それは人の心を
(うたずにはおかない、ふしぎな、いきいきとした、うつくしさだ。
しかし、きのう、)
撲たずにはおかない、不思議な、生き生きとした、美しさだ。
しかし、昨日、
(おとつい、おれのこころをひどくいんきにしたものもそれなのだ。おれにはそのうつくしさが)
一昨日、俺の心をひどく陰気にしたものもそれなのだ。俺にはその美しさが
(なにかしんじられないもののようなきがした。おれははんたいにふあんになり、ゆううつになり)
なにか信じられないもののような気がした。俺は反対に不安になり、憂鬱になり
(くうきょなきもちになった。しかし、おれはいまやっとわかった。
おまえ、このらんまん)
空虚な気持ちになった。しかし、俺はいまやっとわかった。
おまえ、この爛漫
(とさきみだれているさくらのきのしたへ、ひとつひとつしたいがうまっているとそうぞうしてみるが)
と咲き乱れている桜の樹の下へ、一つ一つ屍体が埋まっていると想像してみるが
(いい。なにがおれをそんなにふあんにしていたかがおまえにはなっとくいくだろう。)
いい。何が俺をそんなに不安にしていたかがお前には納得いくだろう。