銀河鉄道の夜 50
九、ジョバンニの切符 22/36
(天の川の岸辺 1/3)
(天の川の岸辺 1/3)
「ええ、もうこのへんから下ります。何せこんどは一ぺんにあの水面までおりて行くんですから容易じゃありません。この傾斜があるもんですから、汽車は決して向こうからこっちへはこないんです。そら、もうだんだん早くなったでしょう。」
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問題文
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(「ええ、もうこのへんからくだります。)
「ええ、もうこのへんから下ります。
(なんせこんどはいっぺんにあのすいめんまでおりていくんですから)
何せこんどは一ぺんにあの水面までおりて行くんですから
(よういじゃありません。)
容易じゃありません。
(このけいしゃがあるもんですから)
この傾斜があるもんですから
(きしゃはけっしてむこうからこっちへはこないんです。)
汽車は決して向こうからこっちへはこないんです。
(そら、もうだんだんはやくなったでしょう。」)
そら、もうだんだん早くなったでしょう。」
(さっきのろうじんらしいこえがいいました。)
さっきの老人らしい声がいいました。
(どんどんどんどんきしゃはおりていきました。)
どんどんどんどん汽車は降りて行きました。
(がけのはじにてつどうがかかるときは、かわがあかるくしたにのぞけたのです。)
崖のはじに鉄道がかかるときは、川が明るく下にのぞけたのです。
(じょばんにはだんだんこころもちがあかるくなってきました。)
ジョバンニはだんだん心もちが明るくなってきました。
(きしゃがちいさなこやのまえをとおって、)
汽車が小さな小屋の前を通って、
(そのまえにしょんぼりひとりのこどもがたって)
その前にしょんぼりひとりの子どもが立って
(こっちをみているときなどはおもわず、ほう、とさけびました。)
こっちを見ているときなどは思わず、ほう、と叫びました。
(どんどんどんどんきしゃははしっていきました。)
どんどんどんどん汽車は走って行きました。
(へやじゅうのひとたちは、はんぶんうしろのほうへたおれるようになりながら)
室中のひとたちは、半分うしろの方へ倒れるようになりながら
(こしかけにしっかりしがみついていました。)
腰かけにしっかりしがみついていました。
(じょばんにはおもわずかむぱねるらとわらいました。)
ジョバンニは思わずカムパネルラとわらいました。
(もうそしてあまのがわはきしゃのすぐよこてを)
もうそして天の川は汽車のすぐ横手を
(いままでよほどはげしくながれてきたらしく、)
いままでよほど激しく流れてきたらしく、
(ときどきちらちらひかってながれているのでした。)
ときどきちらちら光ってながれているのでした。
など
(うすあかいかわらなでしこのはながあちこちさいていました。)
うすあかいカワラナデシコの花があちこち咲いていました。
(きしゃはようやくおちついたように、ゆっくりとはしっていました。)
汽車はようやく落ち着いたように、ゆっくりと走っていました。
(むこうとこっちにきしに、ほしのかたちとつるはしをかいたはたがたっていました。)
向こうとこっちに岸に、星のかたちとつるはしを書いた旗がたっていました。