心理試験9/江戸川乱歩
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順位 | 名前 | スコア | 称号 | 打鍵/秒 | 正誤率 | 時間(秒) | 打鍵数 | ミス | 問題 | 日付 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | ヌオー | 5962 | A+ | 6.3 | 93.9% | 462.7 | 2948 | 189 | 48 | 2024/12/18 |
2 | ヌオー | 5219 | B+ | 5.6 | 92.8% | 523.0 | 2957 | 227 | 48 | 2024/11/28 |
3 | もっちゃん先生 | 5097 | B+ | 5.2 | 96.4% | 561.7 | 2973 | 110 | 48 | 2024/12/19 |
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問題文
(あけちはべつにとくいらしいいろもなく、くわしくかれのかんがえをのべた。)
明智は別に得意らしい色もなく、詳しく彼の考を述べた。
(そして、それがはんじをすっかりかんしんさせてしまった。)
そして、それが判事をすっかり感心させて了った。
(あけちのきぼうがいれられて、ふきやのげしゅくへつかいがはしった。)
明智の希望が容れられて、蕗屋の下宿へ使が走った。
(「ごゆうじんのさいとうしはいよいよゆうざいとけっした。それについておはなししたいことも)
「御友人の斎藤氏は愈々有罪と決した。それについて御話したいことも
(あるから、わたしのしたくまでごそくろうをわずらわしたい」)
あるから、私の私宅まで御足労を煩し度い」
(これがよびだしのこうじょうだった。ふきやはちょうどがっこうからかえったところで、それをきくとさっそく)
これが呼出しの口上だった。蕗屋は丁度学校から帰った所で、それを聞くと早速
(やってきた。さすがのかれもこのきっぽうにはすくなからずこうふんしていた。)
やって来た。流石の彼もこの吉報には少なからず興奮していた。
(うれしさのあまり、そこにおそろしいわなのあることを、まるできづかなかった。)
嬉しさの余り、そこに恐ろしい罠のあることを、まるで気附かなかった。
(かさもりはんじは、ひととおりさいとうをゆうざいとけっていしたりゆうをせつめいしたあとで、)
笠森判事は、一通り斎藤を有罪と決定した理由を説明したあとで、
(こうつけくわえた。)
こう附加えた。
(「きみをうたがったりして、まったくあいすまんとおもっているのです。きょうは、)
「君を疑ったりして、全く相済まんと思っているのです。今日は、
(じつはそのおわびかたがた、じじょうをよくおはなししようとおもって、きていただいたわけですよ」)
実はそのお詫び旁々、事情をよくお話しようと思って、来て頂いた訳ですよ」
(そして、ふきやのためにはこうちゃをめいじたりしてごくうちくつろいだようすで)
そして、蕗屋の為には紅茶を命じたりして極く打ちくつろいだ様子で
(ざつだんをはじめた。あけちもはなしにくわわった。はんじは、かれをしりあいのべんごしで、)
雑談を始めた。明智も話に加わった。判事は、彼を知合の弁護士で、
(しんだろうばのいさんそうぞくしゃから、かしきんのとりたてなどをいらいされているおとこだといって)
死んだ老婆の遺産相続者から、貸金の取立て等を依頼されている男だといって
(しょうかいした。むろんはんぶんはうそだけれどもしんぞくかいぎのけっか、ろうばのおいがいなかから)
紹介した。無論半分は嘘だけれども親族会議の結果、老婆の甥が田舎から
(でてきて、いさんをそうぞくすることになったのはじじつだった。)
出て来て、遺産を相続することになったのは事実だった。
(さんにんのあいだには、さいとうのうわさをはじめとして、いろいろのわだいがはなされた。)
三人の間には、斎藤の噂を始めとして、色々の話題が話された。
(すっかりあんしんしたふきやは、なかでもいちばんゆうべんなはなしてだった。)
すっかり安心した蕗屋は、中でも一番雄弁な話手だった。
(そうしているうちに、いつのまにかじかんがたって、まどのそとにゆうやみがせまってきた。)
そうしている内に、いつの間にか時間が経って、窓の外に夕暗が迫って来た。
(ふきやはふとそれにきづくと、かえりじたくをはじめながらいった。)
蕗屋はふとそれに気附くと、帰り支度を始めながら云った。
(「では、もうしつれいしますが、べつにごようはないでしょうか」)
「では、もう失礼しますが、別に御用はないでしょうか」
(「おお、すっかりわすれてしまうところだった」あけちがかいかつにいった。)
「オオ、すっかり忘れて了うところだった」明智が快活に云った。
(「なあに、どうでもいいようなことですがね。ちょうどついでだから・・・)
「なあに、どうでもいい様なことですがね。丁度序だから・・・
(ごしょうちかどうかですが、あのさつじんのあったへやに、にまいおりのきんびょうぶが)
御承知かどうかですが、あの殺人のあった部屋に、二枚折りの金屏風が
(たててあったのですが、それにちょっときずがついていたといって)
立ててあったのですが、それに一寸傷がついていたと云って
(もんだいになっているのですよ。というのは、そのびょうぶはばあさんのものではなく、)
問題になっているのですよ。というのは、その屏風は婆さんのものではなく、
(かしきんのていとうにあずかってあったしなで、もちぬしのほうでは、さつじんのさいについたきずに)
貸金の抵当に預ってあった品で、持主の方では、殺人の際についた傷に
(そういないからべんしょうしろというし、ばあさんのおいは、これがまたばあさんににた)
相違ないから弁償しろというし、婆さんの甥は、これが又婆さんに似た
(けちんぼでね、もとからあったきずかもしれないといって、なかなかおうじないのです。)
けちん坊でね、元からあった傷かも知れないといって、却々応じないのです。
(じっさいつまらないもんだいで、へいこうしてるんです。もっともそのびょうぶはかなりねうちのある)
実際つまらない問題で、閉口してるんです。尤もその屏風は可也値うちのある
(しなものらしいのですけれど。ところで、あなたはよくあのいえへでいりされたの)
品物らしいのですけれど。ところで、あなたはよくあの家へ出入りされたの
(ですから、そのびょうぶもたぶんごぞんじでしょうが、いぜんにきずがあったかどうか、)
ですから、その屏風も多分御存じでしょうが、以前に傷があったかどうか、
(ひょっとごきおくじゃないでしょうか。どうでしょう。)
ひょっと御記憶じゃないでしょうか。どうでしょう。
(びょうぶなんかべつにちゅういしなかったでしょうね。じつはさいとうにもきいてみたんですが、)
屏風なんか別に注意しなかったでしょうね。実は斎藤にも聞いて見たんですが、
(せんせいこうふんしきっていて、よくわからないのです。それに、じょちゅうはくにへ)
先生亢奮し切っていて、よく分らないのです。それに、女中は国へ
(かえってしまって、てがみでといあわせてもようりょうをえないし、)
帰って了って、手紙で問合せても要領を得ないし、
(ちょっとこまっているのですが・・・」)
一寸困っているのですが・・・」
(びょうぶがていとうぶつだったことはほんとうだが、そのほかのてんはむろんつくりばなしに)
屏風が抵当物だったことはほんとうだが、その外の点は無論作り話に
(すぎなかった。ふきやはびょうぶということばにおもわずひやっとした。)
過ぎなかった。蕗屋は屏風という言葉に思わずヒヤッとした。
(しかしよくきいてみるとなんでもないことなので、すっかりあんしんした。)
併しよく聞いて見ると何でもないことなので、すっかり安心した。
(「なにをびくびくしているのだ。じけんはもうらくちゃくしてしまったのじゃないか」)
「何をビクビクしているのだ。事件はもう落着して了ったのじゃないか」
(かれはどんなふうにこたえてやろうかと、ちょっとしあんしたが、れいによって)
彼はどんな風に答えてやろうかと、一寸思案したが、例によって
(ありのままにやるのがいちばんいいほうほうのようにかんがえられた。)
ありのままにやるのが一番いい方法の様に考えられた。
(「はんじさんはよくごしょうちですが、ぼくはあのへやへはいったのはたったいちどきり)
「判事さんはよく御承知ですが、僕はあの部屋へ入ったのはたった一度切り
(なんです。それも、じけんのふつかまえにね」)
なんです。それも、事件の二日前にね」
(かれはにやにやわらいながらいった。こうしたいいかたをするのがゆかいで)
彼はニヤニヤ笑いながら云った。こうした云い方をするのが愉快で
(たまらないのだ。)
たまらないのだ。