心理試験3/江戸川乱歩

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順位 名前 スコア 称号 打鍵/秒 正誤率 時間(秒) 打鍵数 ミス 問題 日付
1 だだんどん 6592 S+ 7.1 92.7% 430.5 3080 242 45 2024/09/23
2 田虫 5149 B+ 5.2 97.2% 580.3 3074 86 45 2024/09/26
3 もっちゃん先生 4947 B 5.1 95.8% 601.7 3110 133 45 2024/11/19

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問題文

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(だが、それは、けっしてしんぱいするようなことがらではなく、かえってかれのためにはよきしない)

だが、それは、決して心配する様な事柄ではなく、却って彼の為には予期しない

(しあわせだった。というのは、ゆうじんのさいとうがけんぎしゃとしてあげられたのだ。)

仕合わせだった。というのは、友人の齋藤が嫌疑者として挙げられたのだ。

(けんぎをうけたりゆうは、かれがみぶんふそうおうのたいきんをしょじしていたからだと)

嫌疑を受けた理由は、彼が身分不相応の大金を所持していたからだと

(しるしてある。)

記してある。

(「おれはさいとうのもっともしたしいゆうじんなのだから、ここでけいさつへしゅっとうして、いろいろ)

「俺は齋藤の最も親しい友人なのだから、ここで警察へ出頭して、色々

(といただすのがしぜんだな」)

問い訊すのが自然だな」

(ふきやはさっそくきものをきがえると、あわててけいさつしょへでかけた。それはかれがきのうさいふを)

蕗屋は早速着物を着換えると、遽てて警察署へ出掛けた。それは彼が昨日財布を

(とどけたのとおなじやくしょだ。なぜさいふをとどけるのをかんかつのちがうけいさつにしなかったか。)

届けたのと同じ役所だ。何故財布を届けるのを管轄の違う警察にしなかったか。

(いや、それとてもまた、かれいちりゅうのむぎこうしゅぎでわざとしたことなのだ。)

いや、それとても亦、彼一流の無技巧主義で態としたことなのだ。

(かれは、かふそくのないていどにしんぱいそうなかおをして、さいとうにあわせてくれとたのんだ。)

彼は、過不足のない程度に心配相な顔をして、齋藤に逢わせて呉れと頼んだ。

(しかし、それはよきしたとおり、ゆるされなかった。そこで、かれは、さいとうがけんぎを)

併し、それは予期した通り、許されなかった。そこで、彼は、斎藤が嫌疑を

(うけたわけをいろいろとといただして、あるていどまでじじょうをあきらかにすることができた。)

受けた訳を色々と問い訊して、ある程度まで事情を明かにすることが出来た。

(ふきやはつぎのようにそうぞうした。)

蕗屋は次の様に想像した。

(きのう、さいとうはじょちゅうよりもさきにいえにかえった。それはふきやがもくてきをはたしてたちさると)

昨日、斎藤は女中よりも先に家に帰った。それは蕗屋が目的を果して立去ると

(まもなくだった。そして、とうぜんろうばのしがいをはっけんした。しかし、ただちにけいさつに)

間もなくだった。そして、当然老婆の死骸を発見した。併し、直ちに警察に

(とどけるまえに、かれはあることをおもいついたにそういない。というのは、)

届ける前に、彼はあることを思いついたに相違ない。というのは、

(れいのうえきばちだ。もしこれがとうぞくのしわざなれば、あるいはあのなかのかねがなくなっては)

例の植木鉢だ。若しこれが盗賊の仕業なれば、或はあの中の金がなくなっては

(いはしないか。たぶんそれはちょっとしたこうきしんからだったろう。)

いはしないか。多分それは一寸した好奇心からだったろう。

(かれはそこをしらべてみた。ところが、あんがいにもかねのつつみがちゃんとあったのだ。)

彼はそこを検べて見た。ところが、案外にも金の包がちゃんとあったのだ。

(それをみてさいとうがおしんをおこしたのは、じつにあさはかなかんがえではあるが)

それを見て斎藤が悪心を起したのは、実に浅はかな考えではあるが

など

(むりもないことだ。そのかくしばしょはだれれもしらないこと、ろうばをころしたはんにんが)

無理もないことだ。その隠し場所は誰れも知らないこと、老婆を殺した犯人が

(ぬすんだというかいしゃくがくだされるにちがいないこと。こうしたじじょうは、だれにしても)

盗んだという解釈が下されるに違いないこと。こうした事情は、誰にしても

(さけがたいつよいゆうわくにそういない。それからかれはどうしたか、けいかんのはなしでは、)

避け難い強い誘惑に相違ない。それから彼はどうしたか、警官の話では、

(なにくわぬかおをしてひとごろしのあったことをけいさつへとどけでたということだ。)

何食わぬ顔をして人殺しのあったことを警察へ届け出たということだ。

(ところが、なんというむふんべつなおとこだ。かれはぬすんだかねをはらまきのあいだへいれたまま、)

ところが、何という無分別な男だ。彼は盗んだ金を腹巻の間へ入れたまま、

(へいきでいたのだ。まさかそのばでしんたいけんさされようとはそうぞうしなかったとみえて。)

平気でいたのだ。まさか其場で身体検査されようとは想像しなかったと見えて。

(「だがまてよ。さいとうはいったいどういうふうにべんかいするだろう。しだいによっては)

「だが待てよ。斎藤は一体どういう風に弁解するだろう。次第によっては

(きけんなことになりはしないかな」ふきやはそれをいろいろとかんがえてみた。かれはかねを)

危険なことになりはしないかな」蕗屋はそれを色々と考えて見た。彼は金を

(みつけられたとき、「じぶんのだ」とこたえたかもしれない。なるほどろうばのざいさんの)

見つけられた時、「自分のだ」と答えたかも知れない。なる程老婆の財産の

(たかやかくしばしょはだれもしらないのだから、いちおうはそのべんめいもなりたつであろう。)

多寡や隠し場所は誰も知らないのだから、一応はその弁明も成立つであろう。

(しかし、きんがくがあまりおおすぎるではないか。で、けっきょくかれはじじつをもうしたてることに)

併し、金額が余り多すぎるではないか。で、結局彼は事実を申立てることに

(なるだろう。でも、さいばんしょがそれをしょうにんするかな。ほかにけんぎしゃがでればともかく、)

なるだろう。でも、裁判所がそれを承認するかな。外に嫌疑者が出れば兎も角、

(それまではかれをむざいにすることはまずあるまい。うまくいけば、かれがさつじんざいに)

それまでは彼を無罪にすることは先ずあるまい。うまく行けば、彼が殺人罪に

(とわれるかもしれたものではない。そうなればしめたものだが、・・・)

問われるかも知れたものではない。そうなればしめたものだが、・・・

(ところで、さいばんかんがかれをといつめていくうちに、いろいろなじじつがわかって)

ところで、裁判官が彼を問詰めて行く内に、色々な事実が分って

(くるだろうな。たとえば、かれがかねのかくしばしょをはっけんしたときにおれにはなした)

来るだろうな。例えば、彼が金の隠し場所を発見した時に俺に話した

(ことだとか、きょうこうのふつかまえにおれがろうばのへやにはいってはなしこんだことだとか、)

ことだとか、兇行の二日前に俺が老婆の部屋に入って話込んだことだとか、

(さては、おれがびんぼうでがくしにもこまっていることだとか。)

さては、俺が貧乏で学資にも困っていることだとか。

(しかし、これらはみな、ふきやがこのけいかくをたてるまえにあらかじめかんじょうにいれておいた)

併し、これらは皆、蕗屋がこの計画を立てる前に予め勘定に入れて置いた

(ことばかりだった。そして、どんなにかんがえても、さいとうのくちからそれいじょう)

ことばかりだった。そして、どんなに考えても、斎藤の口からそれ以上

(かれにとってふりなじじつがひきだされようとはかんがえられなかった。)

彼にとって不利な事実が引出されようとは考えられなかった。

(ふきやはけいさつからかえると、おくれたちょうしょくをしたためて(そのときしょくじをはこんできたじょちゅうに)

蕗屋は警察から帰ると、遅れた朝食を認めて(その時食事を運んで来た女中に

(じけんについてはなしてきかせたりした)いつものとおりがっこうへでた。がっこうでは)

事件について話して聞かせたりした)いつもの通り学校へ出た。学校では

(さいとうのうわさでもちきりだった。かれはなかばとくいげにそのうわさばなしの)

斎藤の噂で持切りだった。彼はなかば得意気にその噂話の

(ちゅうしんになってしゃべった。)

中心になって喋った。

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