心理試験11/江戸川乱歩
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順位 | 名前 | スコア | 称号 | 打鍵/秒 | 正誤率 | 時間(秒) | 打鍵数 | ミス | 問題 | 日付 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | りく | 6174 | A++ | 6.3 | 97.2% | 512.9 | 3259 | 92 | 50 | 2024/09/25 |
2 | 饅頭餅美 | 5374 | B++ | 5.6 | 95.6% | 572.3 | 3222 | 146 | 50 | 2024/10/26 |
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問題文
(「「うえきばち」にしろ「あぶらがみ」にしろ「はんざい」にしろ、そのほか、もんだいのやっつの)
「『植木鉢』にしろ『油紙』にしろ『犯罪』にしろ、その外、問題の八つの
(たんごは、みな、けっして「あたま」だとか「みどり」だとかいうへいぼんなものよりもれんそう)
単語は、皆、決して『頭』だとか『緑』だとかいう平凡なものよりも聯想
(しやすいとはかんがえられません。それにもかかわらず、あなたは、そのむずかしいれんそうのほうを)
し易いとは考えられません。それにも拘らず、あなたは、その難しい聯想の方を
(かえってはやくこたえているのです。これはどういういみでしょう。ぼくがきづいたてん)
却って早く答えているのです。これはどういう意味でしょう。僕が気づいた点
(というのはここですよ。ひとつ、あなたのこころもちをあててみましょうか、え、)
というのはここですよ。一つ、あなたの心持を当てて見ましょうか、エ、
(どうです。なにもいっきょうですからね。しかしもしまちがっていたらごめんくださいよ」)
どうです。何も一興ですからね。併し若し間違っていたら御免下さいよ」
(ふきやはぶるっとみぶるいした。しかし、なにがそうさせたかはかれじしんにも)
蕗屋はブルッと身震いした。併し、何がそうさせたかは彼自身にも
(わからなかった。)
分らなかった。
(「あなたは、しんりしけんのきけんなことをよくしっていて、あらかじめじゅんびしていた)
「あなたは、心理試験の危険なことをよく知っていて、予め準備していた
(のでしょう。はんざいにかんけいのあることばについて、ああいえばこうと、ちゃんと)
のでしょう。犯罪に関係のある言葉について、ああ云えばこうと、ちゃんと
(ふくあんができていたんでしょう。いや、ぼくはけっして、あなたのやりかたをひなんする)
腹案が出来ていたんでしょう。イヤ、僕は決して、あなたのやり方を非難する
(のではありませんよ。じっさい、しんりしけんというやつは、ばあいによってはひじょうにきけんな)
のではありませんよ。実際、心理試験という奴は、場合によっては非常に危険な
(ものですからね。ゆうざいしゃをいっしてむこのものをつみにおとしいれることがないとはだんげん)
ものですからね。有罪者を逸して無辜のものを罪に陥れることがないとは断言
(できないのですからね。ところが、じゅんびがあまりいきとどきすぎていて、もちろん、)
出来ないのですからね。ところが、準備があまり行届き過ぎていて、勿論、
(べつにはやくこたえるつもりはなかったのでしょうけれど、そのことばだけがはやくなって)
別に早く答える積りはなかったのでしょうけれど、その言葉丈けが早くなって
(しまったのです。これはたしかにたいへんなしっぱいでしたね。あなたは、ただもう)
了ったのです。これは確かに大変な失敗でしたね。あなたは、ただもう
(おくれることばかりしんぱいして、それがはやすぎるのもおなじようにきけんだということを)
遅れることばかり心配して、それが早過ぎるのも同じ様に危険だということを
(すこしもきづかなかったのです。もっとも、そのじかんのさはひじょうにわずかずつですから、)
少しも気づかなかったのです。尤も、その時間の差は非常に僅かずつですから、
(よほどちゅういぶかいかんさつしゃでないとうっかりみのがしてしまいますがね。とにかく、)
余程注意深い観察者でないとうっかり見逃して了いますがね。兎に角、
(こしらえごとというものは、どっかにはたんがあるものですよ」あけちのふきやをうたがった)
拵え事というものは、どっかに破綻があるものですよ」明智の蕗屋を疑った
(ろんきょは、ただこのいってんにあったのだ。「しかし、あなたはなぜ、「かね」だとか)
論拠は、ただこの一点にあったのだ。「併し、あなたはなぜ、『金』だとか
(「ひとごろし」だとか「かくす」だとか、けんぎをうけやすいことばをえらんで)
『人殺し』だとか『隠す』だとか、嫌疑を受け易い言葉を選んで
(こたえたのでしょう。いうまでもない。そこがそれ、あなたのむじゃきなところですよ。)
答えたのでしょう。云うまでもない。そこがそれ、あなたの無邪気な所ですよ。
(もしあなたがはんにんだったら、けっして「あぶらがみ」ととわれて「かくす」などとは)
若しあなたが犯人だったら、決して『油紙』と問われて『隠す』などとは
(こたえませんからね。そんなきけんなことばをへいきでこたえうるのはなんらやましいところの)
答えませんからね。そんな危険な言葉を平気で答え得るのは何等やましい所の
(ないしょうこですよ。ね、そうでしょう。ぼくのいうとおりでしょう」)
ない証拠ですよ。ね、そうでしょう。僕のいう通りでしょう」
(ふきやははなしてのめをじっとみつめていた。どういうわけか、そらすことができない)
蕗屋は話手の目をじっと見詰めていた。どういう訳か、そらすことができない
(のだ。そして、はなからくちのあたりにかけてきんにくがこうちょくして、わらうことも、)
のだ。そして、鼻から口の辺にかけて筋肉が硬直して、笑うことも、
(なくことも、おどろくことも、いっさいのひょうじょうがふかのうになったようなきがした。)
泣くことも、驚くことも、一切の表情が不可能になった様な気がした。
(むろんくちはきけなかった。もしむりにくちをきこうとすれば、それはただちにきょうふの)
無論口は利けなかった。もし無理に口を利こうとすれば、それは直ちに恐怖の
(さけびごえになったにちがいない。)
叫声になったに相違ない。
(「このむじゃきなこと、つまりこざいくをろうしないということが、あなたのいちじるしい)
「この無邪気なこと、つまり小細工を弄しないということが、あなたの著しい
(とくちょうですよ。え、おわかりになりませんか。れいのびょうぶのことです。ぼくは、あなたが)
特徴ですよ。エ、お分りになりませんか。例の屏風のことです。僕は、あなたが
(むろんむじゃきにありのままにおこたえくださることをしんじてうたがわなかったのですよ。)
無論無邪気にありのままにお答え下さることを信じて疑わなかったのですよ。
(じっさいそのとおりでしたがね。ところで、かさもりさんにうかがいますが、もんだいのろっかせんの)
実際その通りでしたがね。ところで、笠森さんに伺いますが、問題の六歌仙の
(びょうぶは、いつあのろうばのいえにもちこまれたのですかしら」)
屏風は、いつあの老婆の家に持込まれたのですかしら」
(あけちはとぼけたかおをして、はんじにきいた。)
明智はとぼけた顔をして、判事に聞いた。
(「はんざいじけんのぜんじつですよ。つまりせんげつのよっかです」)
「犯罪事件の前日ですよ。つまり先月の四日です」
(「え、ぜんじつですって、それはほんとうですか。みょうじゃありませんか、いまふきやくんは、)
「エ、前日ですって、それは本当ですか。妙じゃありませんか、今蕗屋君は、
(じけんのぜんぜんじつすなわちみっかに、それをあのへやでみたと、はっきりいっているじゃ)
事件の前々日即ち三日に、それをあの部屋で見たと、ハッキリ云っているじゃ
(ありませんか。どうもふごうりですね。あなたがたのどちらかがまちがっていないと)
ありませんか。どうも不合理ですね。あなた方のどちらかが間違っていないと
(したら」)
したら」
(「ふきやくんはなにかおもいちがいをしているのでしょう」はんじがにやにや)
「蕗屋くんは何か思違いをしているのでしょう」判事がニヤニヤ
(わらいながらいった。)
笑いながら云った。
(「よっかのゆうがたまではあのびょうぶは、そのほんとうのもちぬしのところにあったことが、)
「四日の夕方まではあの屏風は、そのほんとうの持主の所にあったことが、
(めいはくにわかっているのです」)
明白に判っているのです」
(あけちはふかいきょうみをもって、ふきやのひょうじょうをかんさつした。それはいまにもなきだそうと)
明智は深い興味を以って、蕗屋の表情を観察した。それは今にも泣き出そうと
(するこむすめのかおのようにへんなふうにくずれかけていた。)
する小娘の顔の様に変な風に崩れかけていた。
(これがあけちのさいしょからけいかくしたわなだった。かれはじけんのふつかまえには、ろうばのいえに)
これが明智の最初から計画した罠だった。彼は事件の二日前には、老婆の家に
(びょうぶのなかったことを、はんじからきいてしっていたのだ。)
屏風のなかったことを、判事から聞いて知っていたのだ。