私の個人主義7
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問題文
(わたしはだいがくでえいぶんがくというせんもんを)
私は大学で英文学という専門を
(やりました。)
やりました。
(そのえいぶんがくというものはどんな)
その英文学というものはどんな
(ものかとおたずねになるかもしれませ)
ものかとお尋ねになるかも知れませ
(んが、それをさんねんせんこうしたわたしにも)
んが、それを三年専攻した私にも
(なにがなんだかまあむちゅうだったのです。)
何が何だかまあ夢中だったのです。
(そのころはじくそんというひとがきょうし)
その頃はジクソンという人が教師
(でした。わたしはそのせんせいのまえでしを)
でした。私はその先生の前で詩を
(よませられたりぶんしょうをよませられた)
読ませられたり文章を読ませられた
(り、さくぶんをつくって、)
り、作文を作って、
(かんしがおちているといってしかられ)
冠詞が落ちていると云って叱られ
(たり、はつおんがまちがっているといから)
たり、発音が間違っていると怒ら
(れたりしました。)
れたりしました。
(しけんにはうぉーずうぉーすはなんねんに)
試験にはウォーズウォースは何年に
(うまれてなんねんにしんだとか、しぇくす)
生れて何年に死んだとか、シェクス
(ぴやのふぉりおはいくとおりあるかと)
ピヤのフォリオは幾通りあるかと
(か、)
か、
(あるいはすこっとのかいたさくもつを)
あるいはスコットの書いた作物を
(ねんだいじゅんにならべてみろとかいうもんだい)
年代順に並べてみろとかいう問題
(ばかりでたのです。)
ばかり出たのです。
(としのわかいあなたがたにもほぼそうぞうが)
年の若いあなた方にもほぼ想像が
(できるでしょう、はたしてこれが)
できるでしょう、はたしてこれが
(えいぶんがくかどうだかということが。)
英文学かどうだかという事が。
(えいぶんがくはしばらくおいてだいいちぶんがく)
英文学はしばらく措いて第一文学
(とはどういうものだか、これでは)
とはどういうものだか、これでは
(とうていわかるはずがありません。)
とうてい解るはずがありません。
(それならじりきでそれをきわめえるかと)
それなら自力でそれを窮め得るかと
(いうと、まあもうもくのかきのぞきといった)
云うと、まあ盲目の垣覗きといった
(ようなもので、としょかんにはいって、)
ようなもので、図書館に入って、
(どこをどううろついてもてかけがない)
どこをどううろついても手掛がない
(のです。)
のです。
(これはじりきのたりないばかりでなく)
これは自力の足りないばかりでなく
(そのみちにかんしたしょもつもともしかったの)
その道に関した書物も乏しかったの
(だろうとおもいます。)
だろうと思います。
(とにかくさんねんべんきょうして、ついにぶん)
とにかく三年勉強して、ついに文
(がくはわからずじまいだったのです。)
学は解らずじまいだったのです。
(わたしのはんもんはだいいちここにねざしてい)
私の煩悶は第一ここに根ざしてい
(たともうしあげてもさしつかえないでしょ)
たと申し上げても差支ないでしょ
(う。)
う。
(わたしはそんなあやふやなたいどでよの)
私はそんなあやふやな態度で世の
(なかへでてとうとうきょうしになったとい)
中へ出てとうとう教師になったとい
(うよりきょうしにされてしまったのです。)
うより教師にされてしまったのです。
(こうにごがくのほうはあやしいにせよ、どう)
幸に語学の方は怪しいにせよ、どう
(かこうかおちゃをにごしていかれるか)
かこうかお茶を濁して行かれるか
(ら、そのひそのひはまあぶじにすん)
ら、その日その日はまあ無事に済ん
(でいましたが、)
でいましたが、
(はらのなかはつねにくうきょでした。)
腹の中は常に空虚でした。
(くうきょならいっそおもいきりがよかった)
空虚ならいっそ思い切りがよかった
(かもしれませんが、なんだかふゆかいな)
かも知れませんが、何だか不愉快な
(にえきらないばくぜんたるものが、)
煮え切らない漠然たるものが、
(いたるところにひそんでいるようでこらえまら)
至る所に潜んでいるようで堪まら
(ないのです。)
ないのです。
(しかもいっぽうではじぶんのしょくぎょうとしてい)
しかも一方では自分の職業としてい
(るきょうしというものにすこしのきょうみも)
る教師というものに少しの興味も
(もちえないのです。)
もち得ないのです。
(きょういくしゃであるというそいんのわたしにあくび)
教育者であるという素因の私に欠
(とぼしていることははじめからしっていま)
乏している事は始めから知っていま
(したが、ただきょうじょうでえいごをおしえること)
したが、ただ教場で英語を教える事
(がすでにめんどうなのだからしかたがあり)
がすでに面倒なのだから仕方があり
(ません。)
ません。
(わたしはしじゅうちゅうごしですきがあったら、じぶん)
私は始終中腰で隙があったら、自分
(のほんりょうへとびうつろうとびうつろうとの)
の本領へ飛び移ろう飛び移ろうとの
(みおもっていたのですが、)
み思っていたのですが、
(さてそのほんりょうというのがあるようで、)
さてその本領というのがあるようで、
(ないようで、どこをむいても、おもい)
無いようで、どこを向いても、思い
(きってやっととびうつれないのです。)
切ってやっと飛び移れないのです。
(わたしはこのよにうまれたいじょうなにかしなけ)
私はこの世に生れた以上何かしなけ
(ればならん、といってなにをしてよい)
ればならん、といって何をして好い
(かすこしもけんとうがつかない。)
か少しも見当がつかない。
(わたしはちょうどぎりのなかにとじこめられ)
私はちょうど霧の中に閉じ込められ
(たこどくのにんげんのようにたちすくんでし)
た孤独の人間のように立ち竦んでし
(まったのです。)
まったのです。